どんな会社で働きたいか~いい会社を探す

2013/12/25

・直近の数値をみると、従業員数の多い会社は、トヨタ自動車33.3万人、日立製作所33.1万人、パナソニック29.2万人などが挙げられる。営業利益の多い会社では、三菱UFJフィナンシャルグループ1.5兆円、トヨタ自動車1.3兆円、NTT 1.2兆円などがある。そして、時価総額の大きい会社は、トヨタ自動車21.8兆円、ソフトバンク9.8兆円、三菱UFJフィナンシャルグループ9.3兆円などである。

・では、ROEはどうであろうか。ガンホー・オンライン・エンターテイメント68.7%、リニカル46.2%、ひらまつ40.4%、コシダカホールディングス33.0%、ユナイテッドアローズ32.7%。ジェイアイエヌ32.4%。エスクリ32.3%。エムスリー28.8%などをみると、景色は全く異なる。問題はどれだけ長続きするかである。長続きするにはトップマネジメントの経営力と社員の人材力が一番であり、投資家はそれを示す“長持ちする情報”を知りたいと思っている。

・一方、若者はどんな会社で働きたいのだろうか。彼らにとって「よい会社」とは何なのだろうか。投資家から見ていい会社という評価と違っているのだろうか。株主になる前の投資家と社員になる前の就職希望者を対比してみる。当り前であるが、企業が持続的に発展するには、人材が不可欠である。投資資金がなければ必要な準備もできない。その意味で人材と資金はどちらも必須なものである。

・投資家は投資する会社を選ぶ。長く株主になる人もいれば、短期で次に移ってしまう人もいる。長期的な株主になってもらうには、会社をよく理解して、持続的発展の可能性と株主価値の成長に確信を持ってもらう必要があり、それを納得してもらえるような双方向のコミュニケーションが必要である。

・就職希望者は、働き先をいろいろ探しても、なかなか希望通りの会社に入ることはできない。働くならよい会社に長期的に勤めたいと誰でも思う。よい会社とは、持続的に価値を創造していく企業と定義できるので、そこで働きたいと願うのは当然である。

・問題は、持続的に価値創造をしていける会社が少ないことである。大企業なら大丈夫、有名会社なら安全というわけではない。今輝いている企業もしばらくたつと、霞んでくるかもしれない。そのくらい栄枯盛衰は激しいのである。よほどの努力をしても、なかなか思うような価値創造を維持することは難しい。

・会社は価値創造の一翼を担うような人材を求めている。会社にぶら下がるのではなく、自ら仕事を切り開いて、常に一定の役割を果たしつつ成長していく人材を求めている。課題は、そうした人材を育てる仕組みを企業が持っているかどうかである。人材は大事だといいながら、人材育成の仕組みを明示的に示し、成果をアピールできる企業は少ない。オンザジョブトレーニングや、何らかの集合研修程度に留まっている。

・人材育成を組織能力に高めている企業は、他社が真似のできない営業力、企画力、生産システム、R&D体制、バリューチェーンなどを作り上げている。その組織内容、人材力は投資家からは見えにくい。しかし、そこに競争力の源泉、価値創造の仕組みが内在している。それを知りたい、と投資家は思っている。

・就職希望者は、会社全体のことはよくわからない。自らが接した情報をベースにイメージを作り上げていく。やりたい仕事も先入観で見ていく。理解がきちんと進めばよいが、そこにギャップが生まれると、いずれ意欲が失われることに成りかねない。そうならないように、絶えず叱咤激励する対応が仕組みとして求められる。

・離職率の高い会社は、一般にいい会社とはいえない。雇用が増えて、生産性の上がっている会社が経済的には一番いい会社である。企業価値創造には、経済的価値と社会的価値の双方を含むので、社会的に大事な役割を果たしているという存在感を高めて、認知度を上げていくことが大切である。

・出来上がった会社で頑張るのか、まだ無名の会社に入って持続的成長を目指して奮闘するのか、どちらの道もありうる。奮闘するには、それだけの気概と研鑚が必要である。小さい企業ではオーナーの志とマネジメントの能力が最大の決め手である。ソフトバンクやファーストリテイリングは20年前小さな会社であった。私が入社した会社はその時200人、私自身はとっくに卒業したが、現在は8000人近い規模に成長した。小さな会社に入って仕事を面白くしていく方が人は育つ。苦労も多いが遣り甲斐もあろう。

・就職というのは自らの働く力を、どこに託するかという選択である。株式投資は大事な資金をどの会社に託するかという選択である。価値を生み出すのは第一義的に企業であるから、人材投資が最も大切である。いい会社を探すのではなく、いい会社を作っていくことにいかに貢献できるか、という姿勢が就職希望者にとって最も求められるものである。ここをアピールできれば、対象企業からも一目おかれよう。投資家はそういう人材の入る会社を応援したいと思うのである。

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