AIを活かすAX企業とは

2025/02/03

・私の書いているアナリストレポートを、AIが自ら書き上げてくれるだろうか。この10年書いてきたレポートがある。コラムやブログもある。その論理構成、思考プロセスを学んで、新しい企業データに出会った時、企業の将来を予測するアナリストレポートを書いてくれるだろうか。

・企業評価に当たって、その分析は十分な妥当性を有するだろうか。経験と勘に頼るところを、ニューロモデルとして、コツを掴んでもらえば、できるような気がする。できてきたレポートを2回くらい口頭で修正すれば、ほぼ満足するものになるならば、まさに私の分身となろう。

・それが、私でなくても同じようにできるとすれば、アナリストとしての私はいらなくなる。そうなるかもしれない。あるいは、私のアバターとして、個性を発揮してくれるのなら、ますますおもしろくなる。

・ゲーム用のGPUがAIに応用され、生成AIのコア半導体となった。エヌビディアが世界をリードし、AMDが追いかける。CPUでトップであったインテルは遅れをとった。AIがあらゆる場面で使われるようになる。AIPC、AIoT、データセンター型からエッジコンピューティングに、利用はますます多面的になり高度化する。

・それぞれの現場で、自分の手元でAIを使う。エッジにAIが組み込まれて、パーソナル化が進む。社会システム、企業システム、生活システムのサポート役として有効に役立つだけでなく、自分の分身として、身代わりとなって、自らの活動を助けてくれる。そうなると、ありがたい。

・生成AIは、文字を生成し、画像を生成していく。それをデジタルデータとして蓄積していく。RAG(Retrieval Augmented Generation)は、LLM(大規模言語モデル)によるテキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせて精度を向上させる。

・丸覚えで応用力が出るのか。パラメータを増やして、どんどん拡張していくと、次第に賢くなってくる。そうすると物事の直感的な理解(Grokking)ができるようになる。内容を把握して、腑に落ちるようになる。

・そうなれば、より複雑なことができるようになる。AIをアシスタントとして使うだけでなく、エージェント(代理人)として、自分の替わりをやってくれる。

・生成AIが高速化する。ヒトの脳のように自律的に判断してくれれば、プロンプト(質問方式)によるやりとりが減っていく。入力が必要なくなるかもしれない。五感がわかるAIがレベルを上げてきそうである。それがヒトに適応できれば、五感の機能を失ったヒトに、それぞれのサポートができるようになろう。そうなれば素晴らしい。

・生成AIは、クラウドAIとエッジAIがそれぞれ使われる、ハイブリッドAIの局面に入っている。これまでは「検索」が便利であったが、生成AIではプロンプトによって、知りたいことが構造化されていく。データがバラバラにあるのを、まとまりのある形にしていく。

・これまでデータ化されていない領域については、センサーをつけてデータ化していく。そのデータが何らかの意味を持つように構造化していく。それをヒトがモデル化するのではなく、AIが自ら作業を進める。進化していくともいえよう。

・クラウドとエッジを使い分けて、デジタル パーソナル アシスタントとして活用する。仕事では、一般知識のサポート役、業務知識のサポート役、専門知識のサポート役として、仕事をアシストしてくれれば、効率は上がってくる。既存の作業のスピードアップだけでなく、新規の付加価値を生み出して、サービスや商品の高度化に結び付くなら、ますます有望である。

・そのヒトに合ったAI、その会社に合ったAI、その国に合ったAIなど、AIの適合性が問われる。知能であるから、どこかに個性を発揮する。その個性を良さとして活用し、個性をさらに磨いていく。これがAIのうまい分身化であろう。

・その国に合ったAI、ソブリンAIも注目されている。その国に言語や文化を取り入れたAIモデルがあってよい。そのソブリンAIが力を発揮すれば、AI領域で特定のグローバルガリバーがすべてをとってしまうことにはならない。うまくいけば、プラットフォームのところでも存在感を出すことができよう。

・日本の強い産業機器システムのデジタルツイン、独自のノウハウを有する匠の技のAI化、サービスにおけるおもてなしの心を学んだAIなどは、日本に独自のマーケットがあり、そこで磨きをかければ、世界に打って出ることもできよう。

・AIが学ぶデータは、汎用から個別に移りつつある。外部にある一般的データの利用は当たり前になり、各々の企業の中にある独自データを活かす局面に入っている。必要なデータは自ら作っていくという動きも活発である。オープンデータからクローズドデータへのシフトが進もう。

・日本はヒト型ロボットが好きである。アニメを通して、どの世代にもなじみがある。ヒトに歯向かうAIロボットではなく、ヒトと共存しパートナーとなるAIロボットを追求したい。

・2024年10月のソフトバンクワールドは、生成AIのお祭りであった。DXの次はAX(AIトランスフォーメーション)というわけである。生成AIはまず使ってみることである。そして、AIをエージェントすることである。エージェントとは、何らかの「代理人」であるから、<使う、作る、広がる>という活動を通して、集合知を広めていく。

・AIをパートナーにして、自律型エージェントに仕上げていく。AIが理解できるように、分かり易い言語で業務を設計していく。エージェントとして、各業務プロセスをきちんと捉えられるようにする。そうするとAIロボットが活きてくる。SBの調査によると、日本法人でのAI活用企業はまだ17%であった。これから一気に利用度が上がってこよう。

・孫会長は、AIがAGIへ、それがASIになると強調した。Gはジェネラル、Sはスーパーである。2023年の講演では、AIとヒトが同じレベルになる〈1:1〉が10年以内にくると語ったが、今回は、それが2~3年後には実現しそうであると予測する。

・そのくらいスピードが早い。このAGIを超えるのがASI(Artificial Super Intelligence)である。10年以内にASIは、ヒトの知の1万倍に達する「超知性」になると宣言した。孫さんの強い思いをこめた予言である。

・ヒトの脳のニューロンは1000億個、これに対してニューロンをつなぐシナプス(信号の出入力を担う神経細胞)は100兆個に達する。このキャパシティは、人類20万年の歴史で変わっていない。一方、生成AIのパラメータは数兆個まできている。これが数100兆個になれば、ヒトを越えて賢くなっていく。

・問題は、知識を有するといっても、本当に内容を理解しているのか。言葉を関係づけて、ベクトルを操作して、理解しているようにみえるが、本当に理解しているのだろうか。理解するAIから自ら考えるAIへ、今そのレベルを目指して進みつつある。

・調べる(検索)から考えるAIへ、考えをつないで、リーズニングをベースに3段論法的に深さを求めていく。エージェントがリワード(報酬)に基づき強化学習を続ける。行動価値を評価して、自らモデルを拡張していく。これが強化学習として、考えることに結び付く。ここから未知の解決策が生まれるかもしれない。そうなると、発明、発見の領域に入っていく。

・AIはパーソナル エージェントになっていく。この数年でそれが目に見えてくると、孫さんは予測する。エッジで推論し、実行できるようになる。BtoB、BtoCではなく、AtoA(Agent to Agent)、つまりエージェント(Agent)同士が互いに会話をして、次の行動に進んでいく。

・ASIでは、ライフログ(これまでの人生の記録)に、感情も入ってくる。感情エンジンが感情インデックスを形成していく。そうなると、個性、思いやり、倫理観、達成感などの自己意識を、AIが持つようになる。本物のパーソナルメンターとなろう。

・これはもう知能ではなく、知性であると、孫さんは表現する。この知性を超知性と名付け、人々の幸せ(well-being)の最大化に結び付くと語った。

・AIに対する夢は大きい。AIの勃興期である。イノベーターが続々と出てこよう。エヌビディアに続く企業、AIを取り込んでAXを実現する企業が、日本でも続々と登場しよう。そういう企業を見極めていきたい。

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