メタバースを楽しむには~イマーシブとの共存

2022/07/25 <>

・まだ確証は十分でないが、宇宙は1つではないらしい。かつて太陽は1つと思われていたが、太陽系以外に恒星は数千億個もある。それが集まっている銀河も1つではなく、数千億個はある。

・この宇宙は光より早い速さで膨張しているように見える。宇宙がuniverse(ユニバース)、つまり1つの宇宙でなく、多様で無数のmultiverse (マルチバース)であると考えると、宇宙の謎がさらに解けるらしい(野村泰紀著「なぜ宇宙は存在するのか」)。

・インターネットの世界でも、VR、ARからmetaverse(メタバース:超空間)の世界へ大きく広がろう。仮想空間が全く新しい存在になろうとしている。自分の分身であるアバターを使って、メタバースの世界を自在に動き回るのは楽しそうである。が、何か不安も尽きない。

・「デジタルサミット2022」から、いくつかの論点を取り上げてみよう。NTTの澤田社長は、現代社会における社会関係性の低下に懸念を示す。人と人との付き合いが必ずしもうまくいかない。誤った情報が感染症のごとく広く流行するインフォデミックがいたる所で起きている。嘘やデマに誘導される誤情報の氾濫である。

・デジタル技術がそれに加担しているなら、是正していく必要がある。限られたフレーム内の情報に誘導し、その中での心地良さを追求することは、バイアスを増長してしまうかもしれない。

・個人の幸せ(well-being)の実現には、利他(self as we)も考える必要がある。つまり、社会や公共の幸せと両立することが、デジタルトラストの根幹であるという。

・NTTは「IOWN」(アイオン: Innovative Optical and Wireless Network)を通して、新しい情報基盤を作ろうとしている。そこでは、1)利他をサポートする環境、2)真贋を見分け保証する情報基盤を構築していく。

・そのために、1つは、コミュニケーションの高度化を図る。例えば、①公的な音と私的な音を同時実現させる(パラコンシステント)技術、②言葉だけに頼らないノンバーバルな振動デバイスの活用、③見るだけに頼らない、対象が出す音や振動の共感(スポーツの場面など)がありうる。

・もう1つは、4Dデジタル基盤の構築である。空間(3次元)+時間で4次元となるので、これを過去、現在、未来へと繋げていく。①道路交通の整流化、②都市アセットの安心・快適化、③社会インフラの協調保全などに活かしていく。

・確かに、2025年の大阪万博で道路が混まないようにうまくコントロールする。個々のビルではなく、街全体の資産をジャストインタイムで快適にコントロールする。多様なセンサーを活用して、地下や地上の地図をきちんと作っていく。こうした情報基盤は、リアルな生活を向上させるだけでなく、メタベースとも深く繋がっていく。

・IBMの山口社長は、進化するシステムの活用を強調する。日本IBMは、メタバース入社式を実施した。本人や親族もアバターで参加した。順天堂のバーチャルホスピタルでは、アバターでお見舞いができる。患者もコミュニティ広場へ外出できる。いろいろ会えるのは確かに嬉しい。リアルとバーチャルの融合に、メタバースを活用する動きはますます本格化しよう。

・データの高速処理で、リアルな場面を瞬時にバーチャルに変換して、そこを拡大して、臨場感を演出して、スペシャルに楽しむことができる。「ドラマテックベースボール」は1つの事例である。

・これを支えるテクノロジーとして、①Bit(CPU)に加えて、②AI Chip(ニューロン型)や③量子ビット(Qubit)の開発が進んでいる。QPU(量子コンピューティング)では、昨年27量子ビットを実現したが、もうすぐ127量子ビットが達成できよう。

・これでスパコンを超えてくる。さらに2025年には4000量子ビットを目指している。凄まじい変化であり、これを活用して新しい発見が次々と生まれてこよう。

・すでに耐量子暗号の研究も進んでいる。今までの暗号が量子コンピュータで破られてしまうので、そうならないためのセキュリティの確保である。省電力も必須である。コバルトを使わない機器も、希少資源に依存しないためには、突破する必要がある。

・量子コンピュータ人材、サイバーセキュリティ人材、AI人材の育成も急がれる。さらに、これらを支える倫理こそ競争における差異化を図る根幹であると、山口社長は強調した。

・メタバースの世界が広がってくると、リアルではできない体験ができるようになる。メタバースの中での価値を担保する上で、NFT(ノンファンジブルトークン)が大いに利用されよう。デジタルデータがしっかり守られる。これをシンボライズするクリプト神社も登場しているという。

・メタバースでは、ヒト、場所、モノ、プロセスがリアルとバーチャルで融合してくる。コンテンツの価値が活きてくる。自らの表現力、プレゼン力を高めることができる。“新しい没入感”を創り出すことができる。シミュレーションを通して予測能力を高めることもできる。

・Web2がSNSの世界であったとすれば、Web3はメタバースの世界の広がりである。FacebookはWeb2の巨人となったが、メタバースではゲームチェンジが起きることになろう。

・デスクトップPCからモバイルのスマホへシフトしてきたが、次は「没入(イマーシブ:immersive)感 )」の実現が勝負となろう。その世界に完全に入り込んで浸っている感覚をいう。メタバース(超空間)とはこのイマーシブを、リアルとバーチャルで行き来して両者を共有することにある。

・ゲーム、エンタメ、フィットネス、遊び、仕事、教育、商業(コマース)などに大きく広がってこよう。今はまだ中途半端なものが多いかもしれない。没入感が楽しめなければ、リアルな方が良いとなる。直接会った方が新しいアイデアが生まれる。飲み会もリアルの方が楽しい。使い分けであるとしても、没入感を追求するテクノロジーが大きく発展しよう。

・その時、コンテンツの信頼性、プラットフォームの安全性、オペレーションの透明性を確保してほしい。そうなれば、メタバースを大いに楽しむことができよう。新しいメタバースの世界を楽しみたいが、ついていけるだろうか。日本の産業界が遅れないことを願っている。ここに投資機会を見出したい。

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