ガバナンスと国際紛争の行方
・ウクライナとロシアの戦争はいかに決着するのか。勝利するまで戦うとなれば、かなり泥沼化する。かつて、ベトナム戦争の時、米国は勝てなかった。べトコンは最後まで戦う姿勢を見せた。反戦運動は世界に広がった。資本主義と共産主義の戦いであった。今はどうか。ベトナムはアセアンの有力国として発展している。
・戦争は紛争解決の最後の手段である。100年前まで欧米の強国は帝国主義のもとで、領土の拡大を図った。武器で脅して戦争を仕掛け、その勝利のもとで植民地化を進めていった。領土の取り合いは、今でも地域紛争として多くの国境で起きている。
・戦争を防ぐには、外交と武力による抑止が不可欠である。戦争当事国には、どちらにも言い分がある。一方からみれば他方が理不尽で、折り合うことが難しい。理屈に合わないことを主張する故、自己都合の本性がぶつかり合う。
・そこで、武力で相手を倒そうとする。苦しくなれば勝つために何でもする。人々の犠牲など何とも思わないようだ。多くの死者と負傷者が出る。親族の悲しみは、どちら側でも途方に暮れるほど大きい。
・当事国間で優劣がはっきりすれば、一方が降伏して戦争は終結する。第三国が間に入って、両者の停戦や休戦を取り持つこともある。ここでも武力と経済力のパワーが必要である。
・独裁国家は、独裁者一人が全てを牛耳っているようにみえるが、その周りを支える為政者も同類であり、堅固な仕組みを作っている。そう簡単には崩れない。
・戦争にプロパガンダ、フェイクニュースはつきものである。バイアス情報はどちらサイドからも出てくるので、騙されないようにする必要がある。
・ロシアを一歩引かせて、停戦にもっていく方策はあるのだろうか。ウクライナを支援する勢力の経済制裁が、一定の効力をもって、戦争が継続できないような状況にもっていければよい。数年は要するだろうか。その間、ウクライナが負けないで、持久戦を持ちこたえることができようか。
・この戦争は、投資の世界に3つの変化をもたらそう。第1に、資本主義対共産主義、民主主義対独裁主義の軍事的紛争が、間接的でもあっても、大国間で実際に起きるということをみせた。今後、ロシアや中国とどのようにビジネスをしていくのか。世界の経済領土の新たな取り合いが始まろう。
・第2に、戦争の対価は、どの国にも経済的負担を課す。エネルギー価格、食料価格、資源価格の上昇を通して、経済が落ち込もう。長引けば、不況に陥ることも不可避であろう。
・第3に、平和を確保するあり方が問われ、人命を蔑ろにする戦争を通して、SDGsやサステナビリティの再定義が必要になろう。何がよいこと(善)なのか。結局、中世から続く武力によるパワーバランスが決め手であるならば、紛争を止めることはできない。
・人々の生活と企業経営はそれでも続く。世界中で国の数はこれからも増えていこう。地域ごとに独立してまとまりたい、という意識がますます強まるからである。一方で、独立を許さないという勢力との争いは激化しよう。
・株式市場のパフォーマンスは、世界経済、日本経済、主要産業の行方に左右される。そして、最後は個別企業のサステナビリティが問われる。個別企業のESGの耐性を再評価すると共に、日本のガバナンスのあり方と、世界のパワーバランスの行方を引き続き注視したい。
・紛争の激化、経済制裁の影響、資源不足による生活レベルの低下、そして企業業績の悪化を、株式市場は一喜一憂しながら逐次織り込んでいく。戦争はいずれ終わる。新しい秩序はすぐにはみえないとしても、回復期待は高まろう。
・人道支援に参加するとともに、苦しい気持ちを腹に入れて、次への発展に貢献する投資を継続したいものである。