マックの経営改革

2012/08/28

・日本マクドナルドホールディングス(コード2702)の原田泳幸CEO(会長権社長)の話を聞いた。マックの経営改革をどのように進めてきたか、というテーマであった。会社を見抜く時のポイントが指摘されており、大いに参考になる。

・マックは日本で1号店を出してから、2011年で40年を迎えた。現在、FC(フランチャイズ)店も含めた全店の売上高は5400億円、アルバイトのクルーが17万人、1年間の来店客数は16億人にのぼる。

・1人当たりのクルーの生産性を年平均10%上げると、全社で年間100億円の利益増になる。そのくらいスピードと1円のコスト管理が重要である。また、大型店と小型店の売上規模の差は10倍以上もあり、店舗効率のばらつきも著しく大きい。そうした中で、どのように経営効率を高めていくか。

・改革には痛みを伴う。結果を出さなければ、誰も理解してくれない。成功の秘訣は何かという問いに対して、原田社長は結果を出すこと、業績を上げなければ誰も認めてくれないという。

・過去40年を5つの時期に分けて説明する。創成期(1971~)、成長期(1977~)、低迷期(1992~)、回復期(2004~)、再生期(2008~)である。最初の20年(創成期、成長期)で1000店の出店を果たし、この時期は順調であった。

・次の10年で3000店の出店を行い、店舗数は約4000店となった。しかし7年連続で、既存店はマイナスになり、経営は低迷した。なぜか。それは商品も人もアナログなのに、人よりも店舗を優先したからであると、原田社長は指摘する。

・2004年にアップルからマックのCEOになった原田社長は、改革に着手した。何をやったか。回復期は基礎のみを徹底した。基礎とは、QSC(Quality品質、Serviceサービス、Cleanliness清潔)の実践である。外食の基本である。会社がおかしくなった時は、大体基本を忘れている。それの戻ることだ。

・マックの場合は、QSCが追いつかないのに、店舗を急拡大した。そこで、改革の1年目はQSCを徹底し、それで業績を上向かせた。2年目は、value for moneyを追求した。すべての価格帯で、顧客の納得感を得られるようにした。

・社長になって9年目であるが、昨年度までの8年間、連続増益を達成してきた。2003年の店舗数は3773店であったが、2011年には3298店まで減らした。しかし、来店客数は11億人から16億人に増やしたのである。

・戦略を立てるのは簡単だが、実行するのは難しい。価格についての円高還元セールや、材料費高騰に対する対策として1個当たりの量を減らす作戦では、長期的なシェアは取ることはできない、と原田社長はいう。価格競争には地域別価格を取り入れ、9年で6回も値上げを実施した。デフレの時代に、価値に見合った価格付け(プライシング)で、顧客の納得感を得てきたのである。

・店舗開発では、2010年に433店を戦略的に閉店した。目先の売上を500億円ほど失っても、次なる投資に踏み切ったのである。FCの比率も2004年の30%から2011年には62%に引き上げた。今後の目標は70%である。FCの比率は上がったが、FCのオーナーの数は半減した。つまり、1人のオーナーが10店を持つようになったのである。できるオーナーが経営し、キャッシュフローを使って、店舗拡大の投資をしてきた。

・人事では、ES(働く人の満足度)を徹底して上げるようにしてきた。17万人のクルーの満足度を上げる。そうすると離職率が下がる。それがCS(顧客満足度)の向上に結びつき、ひいては既存店の売上増に効いてくる、という循環である。

・もう1つは、女性の管理職を増やすことに力を入れている。04年にゼロであった女性店長の比率が今や17%まで上がった。女性の雇用は、会社の競争力に結びつく。ポテンシャルのある女性には、成功するようにサポートしている。執行役員に2名が昇進した。女性店長50%、新卒採用の女性比率60%を目標にしている。

・経営改革の究極は、強さと‘らしさ’の追求である、と原田社長は強調する。当社は、2011年度に史上最高の業績を上げた。この2012年12月期も経常利益で284億円と、ピーク利益の更新を目指しているが、上期は経常利益で前年同期比-14.7%となった。さてどうなるか。目先の業績にとらわれることなく、次なる経営改革の実践に挑戦する原田マネジメントに注目したい。

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