COP21-地球温暖化対策に途上国を含めた196ヵ国・地域が合意
- 地球温暖化阻止に向け、史上初めて米中含めた先進国と途上国双方が責務を負う協定が成立。
- 京都議定書以上の目標を掲げ、定期的な見直しを義務付ける一方、離脱させない仕組みを盛り込む。
- 温暖化阻止を事業展開のコストととらえず、新たなビジネスチャンスとしてとらえる企業が増加。
- 日本も省エネ化、エコカー普及、再生エネルギーの活用など低炭素社会への取り組みを強化。
COP21とは?
COPとは、Conference of Partiesの略で、日本では締約国会議と訳されます。その会議とは、地球温暖化阻止のため92年に国連総会で採択され94年に発効した、地球温暖化防止条約に実効性をもたせるため毎年開催されているものです。会議は95年ドイツのベルリンを皮切りに、粘り強く続けられ、今年は12月に開催された会議は21回目となるため、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議、略してCOP21と呼ばれています。
温暖化ガス削減へ向けて、「全員参加型」の合意が成立
COP21の特徴は、京都議定書を超える成果を収めたことです。京都議定書は08年から12年の間に、先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量を90年比で最低5%削減することを目標とする意欲的なものでしたが、各国の事情、国益、損得勘定が絡んで議論は紛糾を極め、97年のCOP3で採択されて以降、05年のCOP11まで発効に時間を要しました。加えて大量に温室効果ガスを大量に排出する米国(図1参照)が途中で離脱し、最大排出国の中国が議論に加わっていないなど、実効性が問われるものでした。
18年ぶりにまとまった今回の枠組みは、議論の地パリの名を冠して「パリ協定(Paris Agreement)」と称され、先進国から途上国まで規則、運営方法などの取り決めに加わった初めてのケースです。京都議定書では当時世界全体の温室効果ガス排出量の6割を占めた先進国だけが削減義務を負ったことに比べて、画期的なことです。途上国からの排出量は経済発展によって、今や先進国を上回っている状況です。20年に議定書で規定された枠組みが終わることを見据えた、途上国を取り込んで合意を成立させることは喫緊の課題でした。
産業革命前から気温上昇を1.5度以内に抑えるよう努力
パリ協定の要諦は、産業革命前から気温上昇を2度未満に抑制、更に1.5度以内に抑えるよう努力し、今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収を均衡させるという目標を掲げたことです。気温が2度以上上昇すると異常気象が頻発し、自然災害増加、生態系の破壊、食料・資源不足、感染症拡大のリスクが高まるといわれているためです。このため途上国を含む196カ国・地域すべてが、温室効果ガスの削減目標などを国連に提出し、5年ごとに見直していくことが義務付けられました。更新を義務化した意義は大きいといえます。世界の排出量の9割を超える180以上の国・地域から、すでに対策が提出されていますが、これだけでは上記の目標達成は困難などころか、気温が3度近く上昇してしまうといわれており、削減計画の上積みが不可欠です。 また新興国や途上国に対して、先進国が資金を拠出する義務を負い、ともすれば経済成長を優先したり、削減努力は高いが資金制約に直面している彼らを枠組みから離脱させないようにしたことも評価できます。パリ協定発効へ向けて、16年4月から一年以内に各国は署名する必要があります。各国は合意内容を持ち帰り、国内で批准手続きを進めます。こうして55ヵ国以上かつ排出量で世界の55%以上を占める国々が批准すれば発効条件が整い、30日以内に発効します。
気候変動問題に真摯に向き合う産業界
世界的にどの経済主体がCO2を排出しているか図2で見ると、圧倒的に第二次産業からです。日本は30年時点で温暖化ガスの排出量を13年比で26%削減する目標を掲げています。ちなみに米国とEUの削減目標を、13年を基準に再計算すると、それぞれ18~21%、24%となり、日本の目標の高さがうかがわれます。これらの目標の達成には第二次産業からの温暖化ガス排出を削減することが不可欠です。さらに取り組みを輸送や家計にも広げていく必要があります。
この状況下、まず取り組むべきは、次ページの図3で確認できるようなCO2排出量の多い化石燃料の使用を削減し、液化天然ガスや再生可能エネルギーへの代替です。政府が示した30年度の望ましい電源構成の中で、石油を13年度の15%から3%に、石炭を30%から26%に引き下げる方針を打ち出しています。反対に、11%を占めるに過ぎない再生エネルギーを22~24%へ、また原子力にも20~22%依存する見通しを立てています。
こうした代替エネルギーへのシフトは石油危機以降の技術革新によってやり尽くしたとの見方もあり、閉塞感があるのも事実です。しかし、企業側にも規制をクリアするという消極的な取り組みではなく、環境保全・低炭素社会の実現を社会的な責任としてとらえ、積極的に貢献する意識が高まってきています。COP21が開催されたパリでは、マイクロソフトなどのIT企業やテスラ・モーターズなど自動車関連企業が行事に積極的に参加したり、自らの事業方針や投資計画を表明する機会が多く見られました。
電力供給、交通、流通のネットワークや建設の施工管理、製造工程、医療・介護などあらゆる領域に情報処理技術を活用するIoT(インターネット・オブ・シングス)の普及とともに、エネルギー効率の向上や再利用・共有を進めていくことへの取り組みが進展しています。
今年から本格化したコーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化の流れもこの潮流を後押ししていると考えられます。温暖化防止に向けて技術・製品・サービスを開発・発展させたり、防止対策への資金援助や活動を広げることがSRI(企業としての社会的責任を評価する投資手法)やESG投資(環境・社会・企業統治に着目した投資手法)によって重視され、それにより企業が一層意識を高めるといった好循環が期待されます。
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