トルコの金融政策(8月)~当面のリラ相場展望
- 政策金利は8.25%に据え置きでした。景況感回復やインフレ率高止まりを受け、様子見姿勢継続です。
- リラの資金調達環境が厳しく、市中金利は高めに推移しています。外貨繰りも引き続き厳しい状況です。
- 当面は経済の正常化による金融市場の安定を待つしかない状況で、リラの上昇余地は限られそうです。
金融市場が一時混乱
トルコ中央銀行(以下、中銀)は20日、金融政策委員会を開き、政策金利(1週間物レポ金利)を8.25%に据え置きました(3ヵ月連続)。リラ安に対する防衛をめぐって金融市場が一時混乱、地政学面ではEU(欧州連合)との緊張激化、米中対立激化など、経済外的なリスクを無視できない状況です。一方、景気回復の兆し、高止まりするインフレ率など、利下げをする環境とは言いにくく、様子見姿勢が継続された形です。
7月の製造業PMI(購買担当者景気指数)が前月比+3.0の56.9に上昇、小売、生産、貿易など、多くの面でトルコ経済は正常化に向かっています。一方、キプロス沖でのガス田探査でEEZ(排他的経済水域)をめぐるキプロスとの対立が激化しており、EU(欧州連合)が外交縮小などの対抗措置に出ています。EUとの対立はトルコ経済の正常化に対する不安材料です。金融市場ではこうした事態を背景にリラ安が進行し、中銀はリラの買い支えを続けましたが、外貨繰り不安に加え、銀行のリラ調達にも支障を来し、沈静化した現在でも、市中金利が政策金利を上回った状態です。
八方ふさがりに利上げの見方も
トルコリラ(以下、リラ)相場は、7月下旬以降、EUとの対立激化をきっかけに下落傾向となっています。足元は1ドル7.2~7.3リラと最安値近辺にあり、若干落ち着いた感はあるものの、不安定な状況が続いています。
市場では、リラ安不安を落ち着かせるために利上げを実施するとの見方も出ています。いずれにしても、経済正常化による金融市場の安定を待つほかにない状況であり、リラの上昇余地は限定的と言わざるを得ません。リラの下落不安の主な原因となっている外貨準備高は8月14日時点で454億ドルと、前年末比-44%となっています。新興国の中では突出して減少しており、リラ安防衛に利用できる外貨も限界に近くなっています。地政学面のリスクが軽減すれば、安心感も出てくると思われますが、当面は予断を許さない状況と見られます。
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