中国の利下げについて
直近1週間の日経平均は、17,500円になかなか乗せきれず、上値の重たさが目立つ一方、消費増税先送り・衆院解散総選挙への観測が高まった11月11日以降は下値も切り上がっており、「三角保ち合い」を形成しつつあります。全体としては相場の堅調地合いは続いていると言えます。
また、緩和的な金融政策の「出口」を向き始めた米国の一方、他の地域は金融緩和的な動きが相次いでいます。先月末の日銀の追加金融緩和をはじめ、先週末に中国人民銀行が発表した基準金利の引き下げ、また、来週(12月4日)開催予定のECB理事会でも緩和的な政策が発表されるのではとの観測が高まっています。
中国人民銀行が11月21日に発表した利下げの詳細を整理してみますと、まず利下げの対象となったのは、貸出金利と預金金利の基準金利(1年)です。貸出金利は6.0%から5.6%に、預金金利は3.0%から2.75%に引き下げられました。基準金利の引き下げは2012年7月以来となります。また、併せて銀行が自由に設定できる預金金利の範囲も拡大し、現行の基準金利1.1倍から1.2倍となりました。
ここでのポイントは、引き下げ幅が貸出金利(40bp)と預金金利(25bp)とで差があることと、預金金利は、「3.0%の1.1倍=3.3%」から、「2.75%の1.2倍=3.3」%と実質的に変動がなかったことです。銀行にとっては貸出と預金の「利ざや」が縮小することになるため、利下げを受けた後の中国株市場では銀行株が軒並み下落で反応しました。
今回の利下げについて、中国人民銀行は「今回の措置は中立的な操作であり、穏健な金融政策の方針転換を示すものではない」ことを強調していますが、利下げを発表した週(11月17日~21日)に公表された中国の経済指標を見てみますと、主要70都市の新築住宅価格の10月分が前年比で2.6%下落し、前月(1.3%の下落)に続いて価格の下落傾向が続いているほか、下落した都市の数は70都市中、67都市と全国的に拡大していることが判ります。
また、11月の製造業PMI(HSBC版速報値)でも、景況判断の節目ラインちょうどの50.0となり、6カ月ぶりの低水準だったことを踏まえると、貸出金利の引き下げによる融資の拡大で景気を下支えしようとする中国当局(人民銀行)の意図が透けて見えます。
今回の中国の利下げは、タイミング的にちょっとしたサプライズだったこともあり、世界の株式市場で概ね好感される格好となりましたが、今後は当局から公表される様々な経済指標を通じて、利下げの効果が現れるかが注目されます。効果が芳しくなく、さらなる緩和策が市場から催促されるようになると、中国経済への警戒が高まりかねません。11月27日付の日本経済新聞朝刊でも中国の成長目標を引き下げ方向と大きく報じられています。そのため、先手を打つ格好で、次の対応策が思ったよりも早く打ち出される可能性もありそうです。
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