アリババ・グループのIPOとソフトバンク

2014/09/26

飛び石の祝日を挟んだ今週の国内株市場ですが、日経平均は結果的に年初来高値を更新した先週末(9月19日)の水準を維持しているものの、やや値動きの荒い展開となっています。その中でも、週初の下落局面において、日経平均への寄与度が大きいソフトバンク株の下げが目立ちました。

そのソフトバンク株は、米国株市場への大型IPOで注目された阿里巴巴(アリババ)グループに絡んで先週末まで急上昇していました。昨年末のザラ場高値(9,320円)には届かなかったものの、アリババの公開価格がほぼ固まった辺りから上昇のピッチが速まり、19日の終値は8,740円となりました。2012年3月末の株価が2,447円でしたので、先週末までに株価は約3.6倍になったわけです。

ただ、ソフトバンクの業績面をざっくり見てみると、2012年3月末時点と2015年3月末予想との比較では、売上げが約2.6倍、純利益が1.7倍になるため、業績の伸びよりも株価の上昇の方が大きいことが分かります。株価は理論上、その企業の「稼ぐ力」と「保有する資産価値」で計られますので、ここ直近のソフトバンク株の上昇は、保有するアリババ株の資産価値に拠る所が大きいと思われます。

アリババの初日の取引は、公開価格68ドルに対して、初値は92.70ドル、高値は99.70ドル、終値は93.89ドルで、「市場最大のIPO」は幸先の良いスタートだったと言えますが、ソフトバンクはアリババ株を多く(32.4%)保有しています。また、ソフトバンクの孫社長は「アリババ株を売却するつもりはない」と述べており、ソフトバンクの株価は今後、アリババの株価や業績動向の影響も受けることになりそうです。

アリババの2015年予想PERは、初日終値(93.89ドル)時点で約32倍です。中国のネット企業でライバルでもある騰訊控股(テンセントHD) の約30倍よりもやや高く、米フェイスブックの約35倍よりもやや低い水準で、特に割安感や割高感はない状況と言えます。となると、アリババの株価は今後の成長次第になります。

電子商取引の分野において、中国国内で圧倒的なシェア(約80%)を誇るアリババの足元の業績は好調で、今後も高い利益率による成長が続くという見方が多数派ですが、とはいえ、今のところ業績にあまり影響の出ていない中国景気の減速傾向が長期化することで、今後影響が出ないとも限りませんし、テンセントHDなどのライバルの台頭による価格競争、海外の事業拡大を急ぐことによる初期費用などが利益圧迫要因となりかねないことには留意しておく必要はありそうです。

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