アリババが上場申請書に明記した「リスク要因」について

2014/05/09

新規株式公開(IPO)に絡んでかねてより注目されていた、中国のEC(電子商取引)大手企業のアリババ集団が今週の6日に米国の証券取引委員会にIPO申請書類を提出しました。

現時点において、上場自体の詳細は未定な部分が多いのですが、今回のIPOで資金調達額がフェイスブックの160億ドルを抜き、ネット企業で最大となる見込みとなっています。また、申請書の内容からアリババという企業の状況も垣間見えてきました。ネット事業の分野で中国での圧倒的な強みを持っていることなどについては既に多くの報道がなされていますが、今回は申請書類に記載されていたリスク要因に注目してみたいと思います。

書類に明記されていたのは、「支付宝(アリペイ)に対する当局からの規制」という文言です。アリペイとはアリババのネット決済サービス事業のことですが、まずはこのアリペイの位置付けを整理する必要があります。アリババが有するECサイトは、C2Cの「淘宝網(タオバオ)」、B2Cの「天猫商城(Tモール)」、そしてB2Bの「アリババ.com」の3つですが、これらのサイトで行われる商取引の決済を支えているのがアリペイです。

例えば、ネット上で商品を購入した際の決済には、クレジットカードや振込み、代金引換などがありますが、アリペイでは、商品の購入者がアリペイ内に口座を作り、商品を購入した時点でアリペイが口座内にある代金を拘束します。そして、商品が購入者に届いた時点でアリペイが商品の販売業者へ代金を振り込みます。つまり、アリペイが購入者と販売者の間に位置することで、安心して商取引ができる仕組みを提供しています。この独自の仕組みがアリババ急成長の原動力といっても過言ではありません。昨年の中国国内でアリババが扱った決済取引の約8割がアリペイ経由です。

アリペイの仕組みはネット通販の分野にとどまらず、金融商品の分野にも活かすことができます。実際に、アリババはアリペイを通じて「余額宝」という金融商品の取次ぎサービスを展開し、いわゆる理財商品も販売しています。最近は理財商品というと聞こえが悪いのですが、主にMMFを取扱っています。1元から始められる手軽さと高利回りが受け入れられ、2014年2月時点の余額宝の運用残高は4,000億元を超え、金融業界でもアリババの存在感が高まっています。

余額宝の急増の背景には商業銀行からの預金流出があります。これに危機感を持った銀行側からの不満が高まっていることや、また、余額宝の成功を受けて、これを模倣するネット関連会社が次々と生まれています。中には健全とは言えない金融商品を販売する業者も登場し始めており、問題視され始めていることから、ネット金融への規制を強化するよう働きかける動きも出てきています。こうしたことが、「アリババの成長を支えたアリペイが思わぬ格好で規制を受けてしまうのでは?」という危惧につながっているようです。

 

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