米国の金融緩和継続観測と経済指標の「イイトコ取り」は続くのか?

2013/11/08

今週の日経平均ですが、木曜日までの動きを見ると、25日移動平均線が上値の目処、75日移動平均線が下値の目処として意識されているようです。

マクロ環境的にはECB理事会をはじめ、米国のGDPや雇用統計、中国の3中全会などのイベントを控えているほか、ミクロでは8日に国内企業決算発表の第二のピークを迎えます。また、今週末はオプションSQということもあり、なんとなく動きづらいムードが漂っている印象です。相場を見る際には、よく「森を見るか、木を見るか」と言われますが、現在は二者択一ではなく、森と木の両方をそれぞれ見ていく二本立ての展開と割り切った方が今の相場状況を整理しやすいのかもしれません。

これまでの決算発表に対する市場の反応は、「良好な内容を好感して買われる」、「冴えない内容を嫌気して売られる」、そして「良好な内容なんだけど売られる」の3つにざっくり分けられます。特に3番目については、業績見通しを上方修正したものの、市場の予想に届かなかったり、予想通りで材料出尽くしというパターンが多く見られます。確かに、決算を受けた当初の反応は売り優勢ではありますが、業績自体は悪化しておらず、下値では買いも入ってくるため、トータルでは今回の決算発表シーズンは上値を追う材料にはならないまでも、現在の株価水準での値固めの材料にはなっていると思われます。

一方、話をマクロに戻すと、欧米株市場は引き続き米国の金融緩和策の継続観測の動向が相場のテーマとなっています。ECBも利下げ観測が出ています。米NYダウは先週に過去最高値をつけた後、伸び悩んでいましたが、今週に入って再び6日に最高値を更新しました。その背景になったのは、FRBのシニアエコノミストが出したレポートで、FRBがフォワードガイダンスをハト派に修正する可能性を指摘し、金融緩和政策の長期化観測が広がったことにあります。

現在は一部の米政府機関の閉鎖が解除されて以降、経済指標の発表が正常化しつつありますが、直近までは堅調な指標結果が出ると、金融緩和縮小開始の早期化が懸念される場面がありました。ただ、ハト派色の強い金融政策スタンスが規定路線となれば、金融緩和継続期待と景況感の復調を示す指標結果の「イイトコ取り」の展開がしばらく続く可能性が出てきます。その見極め材料として木曜日夜発表の米7-9月期GDP速報値や金曜日夜発表の米雇用統計が注目されます。ただし、NYダウが最高値を更新した6日の米債市場を見ると、10年債利回りは低下しつつも、2.6%台にとどまっており、株式市場に比べるとやや冷静な反応となっています。株式市場の反応が少し行き過ぎているかもしれません。

現在の国内株市場は、米金融緩和の継続観測による株価上昇に乗り切れていない状況です。欧米の金融緩和姿勢へのシフトが意識される中、日本も日銀が追加で金融緩和を行うシナリオがあるのかということですが、黒田日銀総裁は7日の参議院財政金融委員会において、現時点での出口戦略は時期尚早としながらも、いずれ議論したいという趣旨の発言をしており、更なる金融緩和を匂わす雰囲気が今ところ感じられません。次回の日銀金融政策決定会合は11月20日~21日にかけて開かれますが、それまでの間に、外部環境の変化で雰囲気が変わっていくかどうかも注目したいところです。

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