今年の「 Sell in May and Go away 」はあるのか?

2013/05/02

連休の谷間で3営業日のみとなった今週の日経平均は下落が続き、週末(2日)の終値は13,694円と前週末比で190円(1.3%)安でした。昨年11月の衆院解散表明後の上昇相場で初の4日続落となりました。お休みモードに加え、1ドル=100円が目前に迫った為替市場が円高傾向となったこと、米FOMCや米雇用統計、ECB理事会などのイベントが控えていたこともあり、動きづらい地合いを反映していたと言えます。

本格化する企業決算に対する主力株市場の反応は、個別では大きく動くものの、全体への波及はあまり見られず方向感に乏しい展開でしたが、低位の中小型材料株や出遅れ銘柄への物色は旺盛で、東証2部指数や東証マザーズ指数、日経JQ平均などは前週末から上昇しています。今のところ、株式市場のムードは悪化しておらず、連休明け相場の先高感が続いている格好ですが、その一方で警戒感も燻っています。

最近の株式関連のニュースやコラムなどで、米国の相場格言である「Sell in May and Go away (5月に売り逃げろ)」というフレーズを多く見かけるようになりました。確かに過去の動きを見ると、米国株市場は5月に天井をつけることが多いです。米国の経験則がそのまま日本株市場にも当てはまるとは限らないのですが、米国よりも一足先に日本株市場が下落に転じるというケースが多いのも事実で、あながち無視できないものがあります。ただし、日銀の「異次元」金融緩和策などアベノミクスへの期待を背景に、「今年は例年とは違う」という見方が増えています。

 

事実、足元の中小型株の物色対象となっているのは、不動産や金融といった金融緩和関連株、建設や橋梁などの財政出動関連株、バイオや人材など成長戦略関連株等、いわゆる「3本の矢」の政策テーマに合わせて、これらが循環している格好です。来月(6月17~18日)に開催されるG8首脳会合をメドに策定される成長戦略の議論がどこまで深まるかがポイントとなり、今後もこの傾向が続く可能性はあります。とはいえ、株価の上昇スピードと業績との乖離が大きくなっている銘柄も多く、期待とムードが株価を左右する状況になりつつあり、積極的な上値追いは気を付けなければなりません。

また、これまでの日本株上昇の背景には、国内要因の他に、米中をはじめとする世界経済の回復基調も前提にあります。今週発表された中国4月製造業PMI(物流購入連合会版)が前月比で低下し、中国の景気回復ペースの鈍化が懸念される結果となりました。さらに、米国FOMCでは、その声明文が前回の内容をほぼ踏襲したものでしたが、「(場合によっては)資産購入のペースを増額、もしくは減額する準備ができている」という文言が付け加えられました。足元の景気認識や今後の見通しについては変更がない一方で、金融緩和政策の拡大も縮小も両方有り得るとわざわざ追記したわけですから、米FRBは米国経済の先行きについて、「不安まで行かないが、警戒はしている」ことを示したと考えられます。引き続き米国経済指標をにらみながら、給与減税失効や財政歳出強制削減などの景気への影響、議会での債務上限引き上げ議論を見極めていく展開となります。

「 Sell in May and Go away 」にかかわらず、日米の株式市場はともに高値圏にあるため、調整局面がいつ訪れてもおかしくない状況です。確かに今年の相場環境は例年とは異なり、短期的な調整を迎えた後に再び株価が上昇する展開も想定されます。となると、調整局面は絶好の押し目買いのタイミングとなりますが、注意したいのは、「どの銘柄に押し目買いを入れるか」です。直近では出遅れ銘柄への物色が活発ですが、出遅れるだけの理由があるからこそ、株価が上がらなかったと考えられるため、素直に業績など中身の良い銘柄を選別していくのが良さそうです。

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