Sapeet(269A)AIソリューションの適用領域拡大、AIプロダクトの開発強化で成長を目指す

2024/11/01

AI技術で専門家の技術・ノウハウを可視化・再現して顧客の業績拡大を支援
AIソリューションの適用領域拡大、AIプロダクトの開発強化で成長を目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田 良彦

◆ AI技術で専門家の技術・ノウハウを再現して顧客の業績拡大を支援
Sapeet(以下、同社)は、AI技術を用いて、各業界の専門家が蓄積した技術やノウハウを分析して可視化し、他の人がそれらの技術やノウハウを再現できるようにし、顧客の売上高と利益の拡大に貢献するExpert AI事業を展開している。

AI技術としては、主に画像認識、自然言語処理、機械学習/深層学習を用い、足元ではLLM注1や生成AIも活用している。サービス提供領域は、同社のAIと3D技術を活用し、身体画像から体のゆがみを推計する等のAI身体分析アルゴリズム注2を用いた、接骨院や整体師、フィットネスジム等のウェルネス業界向けサービスと、LLMと生成AIを用いて、好成績の営業人員の営業・接客ノウハウを再現するコミュニケーションアルゴリズムを活用したコミュニケーション関連サービスが主力となっている。

同社は、Expert AI事業の単一セグメントであるが、顧客向けにコンサルティングからシステムの開発・運用までを一気通貫で提供するAIソリューションと、主にSaaS形態でサービスを提供するAIプロダクトに分けて売上高を開示している。23/9期の売上高構成比は、AIソリューションが34.0%、AIプロダクトが65.8%であった(図表1)。

 

◆ AIソリューション
AIソリューションでは、身体分析アルゴリズムやコミュニケーションアルゴリズムを組合せ、顧客へのコンサルティングや提案、システムの開発・運営といった形で、顧客の業務に沿った最適AIソリューションの提供を行っている。

AIソリューションの売上高は、コンサルティングやシステムの開発等のフロー売上とライセンス収入や保守運用収入等のストック売上からなるが、足元では大部分がフロー売上となっている。同社は主要販売先を開示しているが、これらの販売先は、AIソリューションの主要顧客である(図表2)。

ファッション・小物雑貨・家具の企画・製造・販売を行うデイトナ・インターナショナル(東京都渋谷区)向けには、OMO型店舗注3の導入に際して、店舗に設置したインタラクティブミラーに内蔵されたカメラで顧客を撮影し、顔立ちやパーソナルカラーにあった商品提案を行うシステムを開発し、納入した。その後も、新たなサービスについてのシステム開発が継続している。

睡眠環境を改善する商品・サービスを開発・販売しているネムール(山形県山形市)向けには、顧客への性別・身長・体重・入眠時の姿勢等のアンケートと、姿勢の撮影により、寝姿の特徴を分析し、お勧めの枕やマットレス商品を提案するシステムを開発・納入している。

同社を持分法適用会社とする筆頭株主のPKSHA Technology(3993東証プライム)向け売上高は、PKSHA Technologyが手掛けるプロジェクトへの参画によるものである。

この他、宝飾品を取り扱うセレクトショップを展開するハピネス・アンド・ディ(3174東証スタンダード)向けには、高い営業成績を収めている販売員のトーク内容をAIにインプットし、AIが疑似顧客となり、販売スタッフとの疑似商談を行うAIロールプレイングにより、営業・商談トレーニングを行うシステムを開発・納入している。

◆ AIプロダクト
AIプロダクトは、カルティクラウドとして、主にSaaS形態でサービスを提供している。カルティクラウドは、Expert AIを活用して接客や商談のばらつきをなくして業績を拡大し、顧客業務のAI化、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するサービスである。

AIプロダクトの売上高は、初期費用や追加開発費用等のフロー売上と、月額利用料のストック売上からなるが、ストック売上の比率が高い。

カルティクラウドには以下の4つのサービスがある。4つのサービスの総アカウント数は、23年9月末で2,714アカウント、24年8月末で3,240アカウントであった。

1) カルティ シセイカルテ
カルティ シセイカルテ(以下、シセイカルテ)は、同社のAI、3D技術を用い、理学療法士や、整形外科医、柔道整復師等の姿勢分析の専門家ノウハウを再現したExpert AI基づき、利用者の身体画像から姿勢のゆがみ等をAIにより分析し、タブレット端末やスマートフォンで可視化するツールである。診断結果や改善メニューを文章で表示することができる。

主要顧客は整体院、接骨院、鍼灸院、フィットネスジム、矯正歯科治療を行う歯科医院等のウェルネス業界の事業者である。シセイカルテの売上高は、23/9期でAIプロダクトの80%程度となっており、主要サービスとなっている。

2) カルティ マルチカルテ
カルティ マルチカルテ(以下、マルチカルテ)は、ウェルネス業界の事業者が、顧客情報や施術記録、トレーニング記録、接客情報、ヒアリング内容等の項目を、タブレット端末で入力しカルテを作成できるツールである。入力項目は顧客の業務に合わせ、ノーコードでカスタマイズが可能である。シセイカルテとの併用が多いが、単独での利用も可能である。

3) カルティセールス
カルティセールスは、顧客に説明・ヒアリングすべき情報や、ベテランセールスの知識やノウハウが表示されるナビを設定することで、新人セールスの即戦力化を支援する商談ナビゲーションツールである。

4) カルティチャット
カルティチャットは、LINEやInstagram等のメッセージアプリ上で、チャットBOT注4と有人チャット接客を組み合わせて、新規顧客開拓や売上高拡大を目指す接客支援システムである。同社ではチャットの設計や改善支援、有人チャットサービスのサポートも行っている。

 

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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