ブリーチ(9162) マーケターの採用・育成と新規領域の商材開拓で成長を目指す
新規顧客獲得成果に基づくシェアリング型統合マーケティング事業を展開
マーケターの採用・育成と新規領域の商材開拓で成長を目指す
業種:サービス業
アナリスト:鎌田良彦
◆ 顧客獲得成果に基づくシェアリング型統合マーケティング事業を展開
ブリーチ(以下、同社)は、化粧品、日用品、健康食品等のインターネット通販会社や、美容サロン、クレジットカード等の金融サービス会社等を対象に、新規顧客の獲得等のマーケティング支援の成果に基づき収入を得るシェアリング型統合マーケティング事業を展開している。
◆ 事業モデル
従来の新規顧客開拓のマーケティング支援は、顧客企業がまず広告予算を用意し、その予算に基づきマーケティング支援会社が広告出稿等を行う予算手数料型であった。この方法では、マーケティング活動で期待した効果が出ない場合には、顧客企業のユーザー獲得コストは上昇することになる。
これに対して同社のマーケティング支援では、顧客企業から初期費用やコンサルティング料を受け取らず、同社の判断と費用負担で広告出稿等のマーケティング活動を行い、その成果としての新規顧客の獲得数等に、顧客企業との間で予め決めた1顧客獲得当たりの単価(以下、レベニューシェア単価)を乗じた金額を受け取るレベニューシェア型の報酬体系を採用している。レベニューシェア単価は、同社と顧客企業の間で、商材のLTV注1を参考に決められることが多く、LTVの30~50%が目安になっていると同社では推定している。
このような報酬体系により、マーケティング予算が限られた中堅・中小企業を含む幅広い顧客企業の支援が可能になっている。また、新規顧客の獲得数が増えるほど同社の売上高も増えるため、同社の判断で効果のある施策を実施するインセンティブが働く。顧客企業にとっては事前に顧客獲得コストを確定でき、収益の見通しが立てやすくなるというメリットがある。
同社では、マーケティング戦略の構築、広告制作、広告運用等のマーケティング支援機能のほぼ全てを内製化している。この結果、大量のA/Bテスト注2の実施や、仮説構築・実行・検証・改善を高速で行うことができ、マーケティング効果を高めている。また、大量のデータやノウハウを社内に蓄積することで、マーケティング力の継続的な強化を図っている。
販売は広告代理店経由の取引が主であり、一部、広告主の顧客企業との直接取引を行っている。主要取引先のアール(東京都千代田区)は、健康食品、化粧品、医薬部外品の定期商品のマーケティングに特化した広告代理店で、22/6期には同社売上高の71.4%を占めた(図表1)。
◆ シェアリング型統合マーケティング事業の具体的な流れ
同社のシェアリング型統合マーケティング事業の具体的な業務の流れは以下の通りである。
1)マーケティング支援を行う商材の選定
広告代理店や顧客企業からの依頼による多くの商材パイプラインの中から、同社が過去のマーケティング関連データ等に基づき、売上拡大余地が大きいと判断した商材をマーケティング支援商材として選定する。商材選定には、数十万円から100万円程度の広告宣伝費を先行的に投じるテストマーケティングのプロセスがあり、この段階で売上拡大余地やマーケティング戦略の仮説検証を行う。
2) マーケティング戦略の構築
過去に蓄積したマーケティング関連データや最新の消費トレンド、市場調査等を踏まえ、商材の消費者への訴求ポイント、広告媒体の選択等の広告戦略の検討を行う。合わせて顧客企業のランディングページ注3についての改善提案等も行う。
3) 広告の出稿
商材の特性に応じ、LINE、Yahoo!、Pangle、Google、Facebook等のウェブメディアの中から適切な配信面と顧客ターゲットを選択し、同社の費用で広告を配信する。同社はディスプレイ広告の活用に強みを持っている。ディスプレイ広告は、リスティング広告(検索連動型広告)に比べてコンバージョン率注4は低いものの、広告が表示される回数が多く、広告単価が低いため、潜在的な顧客のニーズを掘り起こすのに適した広告手法であるためである。
同社は、ウェブメディアを通じてディスプレイ広告を配信し、同社制作の広告ページを経て顧客企業のランディングページに誘導し、購買や申し込みに繋げることで新規顧客を獲得している。顧客企業は、従来型の予算手数料型のマーケティングと同社のレベニューシェア型のマーケティングを併用していることが多いが、レベニューシェア型の方が顧客獲得コストが低く、新規顧客獲得数が多いため、顧客企業が更なる顧客拡大を狙う手段として同社サービスを利用していることが多いようである。
◆ 収益管理指標に基づく事業運営
同社は事業の収益管理指標として、広告出稿額(広告宣伝費)に対する、顧客企業からのレベニューシェア額(売上高)の比率であるROAS注5と売上高から広告宣伝費を控除した広告利益を重視し、これらの指標に基づく事業運営を行っている(図表2)。
広告出稿額を増やすとターゲット顧客以外への広告配信等により、コンバージョン率が低下し、ROASは低下する。この局面では同社の判断により広告出稿額を減らしてROASの更なる低下を防ぐ。一方、高いROASを維持できる局面では、顧客獲得の機会損失回避の観点から広告出稿額を増やし、より多くの顧客獲得による広告利益の拡大を図る。こうした事業運営により、機会損失を回避しつつ、広告利益の極大化を図る運営を行っている。
同社では、四半期の平均月次売上高が10百万円以上の商材をコア商材とし、100百万円以上の商材をAランク商材、同50百万円以上100百万円未満の商材をBランク商材、同25百万円以上50百万円未満の商材をCランク商材、同10百万円以上25百万円未満の商材をDランク商材として、各ランク別の商材数と平均売上高も経営指標として重視している。