Globee(5575) 利益拡大のフェーズに入り、今後はユーザー数増加と利益率改善の度合いに注目
AI英語学習プラットフォーム「abceed」を運営
利益拡大のフェーズに入り、今後はユーザー数増加と利益率改善の度合いに注目
業種:情報・通信業
アナリスト:藤野敬太
◆ AI英語学習プラットフォーム「abceed」を運営
Globee(以下、同社)は、AI英語学習プラットフォーム「abceed(エービーシード)」を運営している。英語学習者が抱える学習上の様々な悩みを、英語学習インフラのデジタル化、AI化を通じて解決していくというのがサービスコンセプトである。一方、英語教材の出版社もまた、「英語教材をデジタル化してもなかなか売れない」という課題を抱えている。同社は、英語教材の拡販支援という形で出版社が抱える課題の解決にも貢献している。このように、「Abceed」は英語学習の需要と供給の両サイドの課題解決に資するサービスとして仕上がっており、同社はユーザー数の増加を背景に事業規模を拡大してきた。
英語学習に特化していることもあって、同社は教育サービス事業の単一セグメントである。売上高の詳細の開示はないが、現在、主だったところでは、個人向けの「abceed」、法人向けの「abceed for school」、「ABCEED ENGLISH」の3つのサービスがある(図表1)。
◆ サービス(1): 個人向けの「abceed」
「abceed」は、教育主要4分野と呼ばれる「学習ツール」、「教材」、「テスト」、「スクール」をデジタル化して融合させた、英語学習におけるAI学習プラットフォームとしてサービスが提供されている。成果を出すための学習量を極力抑え、学習効率を最大化することをコンセプトとしており、TOEIC®のスコアを上げたい個人の英語学習者を中心にユーザーを増やしてきた。
「学習ツール」に関しては、英語学習に特化した30種類以上の学習機能を搭載している。その中でも特徴的なのは、蓄積された学習データに基づいて、解くべき問題を選んで提供するAIレコメンド機能である。18年にこの機能が搭載されたことにより、成果を出すために解くべき問題数を少なくすることができるようになった。一方、幅広い選択肢の中から問題を提供できれば、レコメンド機能の精度がより上がるため、同じく18年に始まった教材の使い放題のサービスとの親和性が非常に高い。
「教材」に関しては、英語教材の出版社との関係を構築してきた経緯から、出版社から英語教材のライセンスを得て、「abceed」に対応していく形で提供しているものが多い。この中には知名度の高い書籍の英語教材も含まれ、その教材のデジタル版が展開されていること自体が集客力につながっている。また、書籍形式の英語教材の音声データを「abceed」経由で提供する展開方法もあり、「abceed」のユーザー増の要因のひとつとなっている。
◆ サービス(2): 法人向けの「abceed for school」
「abceed for school」は、「abceed」のサービスを、学校や一般企業といった法人向けに提供するものである。コンテンツは「abceed」と基本的には同じだが、契約先の法人の英語講師や研修担当者には、ユーザーの学習データを一元的に管理するツールが提供される。
◆ サービス(3): コーチのサポートがつく「ABCEED ENGLISH」
「ABCEED ENGLISH」は、「abceed」を活用して、個別最適化されたカリキュラムに沿って行われるサービスだが、最大の特徴は、プロのコーチによるオンラインのサポートがつくことである。3カ月という一定期間内に目に見える成果を出す場合に有効とされ、TOEIC®対策に使われている。
◆ ユーザーの流入
同社では、コンテンツとユーザビリティの強化自体がユーザー数及び有料会員数の増加のための最大の施策と認識している。上述の通り、コンテンツに関しては出版社が持つ英語教材の知名度やブランドが、ユーザビリティに関しては学習ツールの機能強化が、それぞれユーザーの流入につながる要因として機能している。
その結果、23年2月末時点で、無料会員を含むユーザー数は316.4万人で、うち有料会員は6.5万人となっている(図表2)。
23年2月末時点で、提供できる英語教材は676タイトルとなっている。なお、タイトル数が増えても1タイトル当たりユーザー数はわずかに減る程度であるため、英語教材の品揃えを増やすことが、「abceed」のユーザーの流入促進につながる構図となっている(図表3)。
「abceed for school」の導入法人数の増加もまた、ユーザー数及び有料会員数の増加につながる。23年2月末時点の累計導入法人数は265件に達している(図表4)。
◆ 収益構造
同社の売上高は、「abceed」の有料プランである「Proプラン」からの収益が中心である。「Proプラン」は月額課金によるサブスクリプション型のサービスで、売上高全体に占めるサブスクリプション売上比率は、個人向け、法人向け合わせて22/5期で約90%となっている。残りは、一部コンテンツの単品販売や、「ABCEED ENGLISH」によるものである。
費用面では、「abceed」のために使用するコンテンツのライセンス料と決済手数料が仕入高とされ、ほかに、「ABCEED ENGLISH」を提供するプロに支払う労務費が原価計上される。原価のうち約9割を仕入高が占めている。
一方、エンジニアの人件費を中心とした開発やサービス機能強化にかかる費用や広告宣伝費等のマーケティング費用は、販売費及び一般管理費(以下、販管費)に計上される。なお、同社は、マーケティングコストをかけずに流入してくるユーザーの割合を示すオーガニックユーザー獲得率が約96%と非常に高いため、広告宣伝費や営業コストを抑えて集客ができる状況となっている。