ELEMENTS(5246) モノ・サービスを個人に最適化する AIクラウド基盤を提供
個人認証と個人最適化の2つのソリューションによる事業を展開
モノ・サービスを個人に最適化するAIクラウド基盤を提供
業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行
◆ 個人認証ソリューションと個人最適化ソリューションを提供
ELEMENTS(以下、同社)グループは、同社、連結子会社3社(Liquid、MYCITY、IDEAL)、持分法適用関連会社であるSYMBOL、持分法非適用関連会社であるPT. Indoliquid Technology Suksesにより構成されている。同社グループはIoP Cloud事業を行っているが、同事業は「個人認証」と「個人最適化」の二つのソリューションに区分されている(図表1)。
親会社の同社は子会社を含めた管理を主として担っている。ただし、高いレベルでのマネジメントが必要な事業は同社が行うことがあり、現時点では、食品小売りの個人最適化サービスの開発を行う購買解析事業(プロジェクト名FANTRY)を行っている。
個人認証ソリューションの生体認証事業はLiquid、個人最適化ソリューションの行動解析事業はMYCITY、体型解析事業の中の婦人靴の最適化はIDEAL、衣服の個人最適化はSYMBOLの各子会社が行っている。
IoP Cloud事業のIoP(Internet of Persons)とは、ヒトがネットワークに直接つながるという同社グループの世界観を表すものである。同社グループは、IoP実現のため「IoTセンサー」、「人に関するビッグデータ」、そして「AI」を組み合わせて、個人を自動で認証し、個人の特徴を解析し、モノ・サービスを個人に最適化するためのシステムであるAIクラウド基盤(IoP Cloud)をBtoBtoC形態で提供している。
◆ 個人認証ソリューション
子会社のLiquidが生体情報を利用したサービスを提供している。サービスとしては、19年7月から提供を開始した本人確認サービス「LIQUID eKYC (リキッド・イー・ケー・ワイ・シー)」と22年1月から提供を開始した当人認証サービス「LIQUID Auth(リキッドオース)」がある。
1)LIQUID eKYC
LIQUID eKYC注は金融機関での口座開設や通信事業者との通信回線利用契約時に必要な「申込者が実在する本人であるかどうか」の確認をオンライン・非対面で完結できるサービスである(図表2)。LIQUID eKYC は個人認証ソリューションの売上高の9割以上、グループ全体の売上高の約7割を占めている。
従来の本人確認に比べて、LIQUID eKYC を利用することにより、事業者は本人確認作業を自動化・効率化できる。また、本人確認書類の受領、確認、保管の一連の作業で発生する費用を削減できるとともに、人的ミスを防止することが可能になる。生活者にとっては窓口に出向いたり、本人確認書類をコピーして郵送するといった手間が省ける。
料金体系は法的義務のない本人確認や学割、シニア割、成人判定などを行いたい事業者向けベーシックプランで初期費用5万円、月額基本料3万円、利用料金は書類撮影のみ50円/件、書類+容貌撮影は150円/件である。また、法令対応が必要、あるいは規模が大きい事業者向けにはカスタムプランが設けられており、初期費用は50万円から、月額基本料は5万円から、1件当たりの利用料金は件数によってボリュームディスカウントがあり数十円から数百円という設定である。
利用場面としては、金融機関での口座開設や通信回線利用契約時の他には、レンタカーなどのシェアリングサービスの利用申込時、中古品買取サービス利用時、インターネットでのチケット販売など様々である。同社のLIQUID eKYCは銀行、証券、暗号資産、クレジットカード、通信などの業界で導入されており、22年10月末時点で140を超える事業者に利用されている。
認証回数の増加が同社グループの保有データ数の増加となり、データ量の多さが機械学習を強化し、サービス品質の差につながることになる。19年7月のサービス提供開始以来、認証回数は増加しており、22年8月時点の累計認証回数は1,700万回を超えている(図表3)
2)LIQUID Auth
LIQUID Authは22年1月から提供を開始したオンライン当人認証サービスで、現在は商用化フェーズにある。事業者が運営するサービスのユーザーが本人であるかを認証するサービスである。金融機関での利用を例にとると、LIQUID eKYCで口座開設した際に登録された本人確認データと撮影した自分の顔画像とを照合することで、当人認証を行い、なりすまし不正を防止することができる。
LIQUID eKYCは初回登録時に利用されるが、LIQUID eKYC導入以降は都度認証であるLIQUID Authへ利用を広げてゆくことを考えている。
◆ 個人最適化ソリューション
個人最適化ソリューションでは、個人のデータを取得し、保管・解析し、モノ・サービスを個人に最適化するサービスを提供している。行動解析事業、体型解析事業、購買解析事業を行っているが、いずれも実証実験または商用化フェーズにある。個人最適化ソリューションの売上高の9割程度は行動解析事業によるものである。
1)行動解析事業
17年に設立された子会社MYCITYが行動解析事業を行っている。オフィスや住宅環境の個人最適化サービスを行っており、現在は商用化フェーズにあり、初期費用、サービス利用料や保守に関する月額費用を売上高として計上している。
オフィス向けサービスは空間環境センシングにより、働く人の在席状況、フリーアドレスにおける座席の混雑状況や会議室の利用状況などをリアルタイムで一元管理できる。この12月1日にMYCITYとパナソニックホールディングス(6752 東証プライム)傘下のパナソニックの社内分社でライティング事業やエナジーシステム事業を行うエレクトリックワークス社との共同でX PLACE(クロスプレイス)を設立し(出資比率は、MYCITY80%、パナソニックホールディングス20%)、働く人にとって最適な環境を提供する事業を一歩先に進めた。
2)体型解析事業
子会社であるIDEALが婦人靴の最適化サービスを提供しており、実証実験フェーズにある。足型や履き慣れたパンプスの3Dデータを元に最適なパンプスを提案する。衣服についても同様の試みを持分法適用関連会社のSYMBOLが取り組んでいる。
3)購買解析事業
ELEMENTS内の社内プロジェクト(FANTRY)として食品小売り業者が提供する購買データを解析して、最適な商品を生活者に向けて推奨するサービスを提供している。現在は実証実験フェーズにある。