SBIリーシングサービス<5834> 航空機に加えて船舶を対象としたファンドの組成・販売による成長を目指す

2022/10/21

日本型オペレーティング・リース事業向け投資ファンドを組成・販売
航空機に加えて船舶を対象としたファンドの組成・販売による成長を目指す

業種: 証券、商品先物取引業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ オペレーティング・リース事業に投資するファンドの組成・販売
SBIリーシングサービス(以下、同社)グループは、同社及び連結子会社1社で構成されている。主に航空機、船舶等を対象としたオペレーティング・リース事業に投資するファンドの組成・販売を行っている。

同社グループの事業セグメントはオペレーティング・リース事業の単一セグメントであるが、売上高はファンド事業、ゼネラルアビエーション注1事業に区分され、ファンド事業の売上高はさらに商品別にJOL注2商品、JOLCO注3商品に区分される。22/3期における売上構成比は、JOL商品が86.3%、JOLCO商品が11.5%、ゼネラルアビエーション事業が2.2%である。

◆ ファンド事業
ファンド事業では、同社子会社(SPC注4)が業務執行組合員となる任意組合注5契約における投資家からの出資金、もしくは匿名組合注6契約を通じた投資家からの出資金及び金融機関からの借入金にて、航空機・船舶等の大型の償却資産を購入し、航空会社や海運会社等の借り手(レッシー)にオペレーティング・リース形式で賃貸する事業を行っている。

同社は、リース事業案件の組成及び管理、任意組合へのリース物件売却、投資家への匿名組合出資持分の販売を行うことで、手数料や売却の収益を得る。

オペレーティング・リースを活用したリース事業の損益は、リース期間前半には、定率法を採用することによる減価償却費等の費用が、収益よりも先行して発生するため赤字となる傾向がある。一方、リース期間後半には減価償却費等が減少するため、黒字となる傾向がある。リース終了時には、リース物件を売却すること等により、投資回収及びキャピタルゲインが期待できる。投資家はリース開始前半の赤字を取り込む事で、税の負担を繰り延べる事ができる。

現時点で、同社は、JOL には任意組合方式、JOLCO には匿名組合方式を組み合わせる事でファンド組成を行っている。

1JOL 商品
任意組合形式の場合、同社は、組合員(投資家)による出資金により調達した資金でリース物件を購入し、オペレーティング・リース形式で貸し付ける事業を行う。同社はリース物件を航空会社等から購入し、同社子会社(SPC) が業務執行組合員となる任意組合へ譲渡する(図表1)。任意組合のため、リース事業の損益等は投資家に帰属する。

22/3 期における同社のJOL 商品の組成金額は18,490 百万円であり、すべて航空機である。また、商品出資金等販売金額は25,056 百万円(売却機体数は6 機、平均販売単価は4,156 百万円)である。同社によると、欧米の大手エアラインが保有する航空機を同社が購入し、オペレーティング・リースとして提供する場合が多いようである。リース期間は案件によって異なるが10 年程度のことが多い。

投資金額は1 口3~5 億円程度のことが多い。通常は1 案件につき、投資家は複数の場合が多いが、1 案件の投資家が1 社のみということもある。

リース事業の組成、運営・管理、リース物件の売却に関する手数料、当該リース事業に係る航空機の任意組合への販売代金及び航空機を任意組合に売却する前にレッシーから受け取るリース料が同社の収益となる。22/3期におけるJOL商品の売上高構成比は、手数料収入4.8%、航空機の機体販売93.1%、受取リース料2.0%である。なお、手数料率は案件ごとに異なり、主に航空会社の信用力によって決まる。22/3期におけるJOL商品の商品出資等販売金額に対する手数料収入の割合は4.9%である。

2JOLCO商品
匿名組合方式の場合、SPCがリース物件を取得し、オペレーティング・リース事業を行う(図表2)。同社は当該リース物件に係る匿名組合出資持分の私募の取扱を行うほか、リース開始時点で、同社が一時的に立替取得し、貸借対照表の商品出資金に計上するとともに、当該匿名組合出資持分を投資家に譲渡する。同社が、投資家に、匿名組合出資持分を譲渡することで、リース事業の損益などが投資家に帰属する。

22/3期のJOLCO商品の組成金額は138,644百万円であり、内訳は航空機が76,162百万円、船舶・コンテナが62,482百万円である。また、22/3期の商品出資金等販売金額は30,946百万円であり、内訳は航空機が20,235百万円、船舶・コンテナが10,711百万円である。ファンド毎の平均出資金額は、航空機が2,248百万円、船舶・コンテナが1,904百万円である。リース期間は案件によって異なるが10年程度のことが多いようである。

主な収益は、ファンド組成、ファンド販売、ファンド運営・管理およびリース物件の売却に係る手数料である。組成手数料や販売手数料は案件ごとによって異なり、主にレッシーの信用度によって決まる。この他、投資家からJOLCO商品の譲渡代金の入金があるまでの間にSPCがレッシーから受け取るリース料を売上計上している。

22/3期における売上構成比は手数料が94.5%、受取リース料が5.4%である。同社によると、投資家から得る手数料の大半は、ファンド組成手数料及び販売手数料である。22/3期における同社のJOLCO商品に関する商品出資金等販売金額に対する手数料収入の割合は10.4%である。

◆ ゼネラルアビエーション事業
同社は、ゼネラルアビエーション業界の運航会社等をレッシーとしたリース事業案件の組成や管理、投資家への販売までの一連の業務、及び需要家である運航会社へ、ヘリコプターを含む小型航空機等の機材の販売及びリースを行っている。具体的なリース案件としては、米国におけるドクターヘリやモルディブ共和国における離島間移動用の小型航空機などが挙げられる。

22/3期における売上構成比は、手数料3.5%、航空機等の機材販売58.1%、受取リース料38.4%である。

リース事業案件については、運航会社等のレッシーにオペレーティング・リース形式で償却資産であるヘリコプターを含む小型航空機を賃貸するスキームを組成し、投資家に対して、譲渡している。リース期間中のリース料収入によるインカムゲイン、リース満了時のリース物件売却等によるキャピタルゲインが投資家に帰属する仕組みである。

ゼネラルアビエーション事業のリース事業案件の特徴としては、一機当たりの機体価格が数億円程度と航空機投資としては金額が小さくリース期間が5年程度であることから、投資家は、比較的少額かつ短い投資期間で、インカムゲイン及びキャピタルゲインを得る事が可能となる。

◆ 投資家の構成・ニーズ
同社が組成・販売するJOL商品やJOLCO商品の投資家は、非上場の大手・中堅企業や資産管理会社が大半を占める。

JOLCO商品への投資理由は税負担の繰り延べが中心である。非上場の大手・中堅企業において、想定を超える利益の計上が予想される際等に、税負担を繰り延べる手段としてJOLCO商品が活用される。JOLCO商品と比較検討される手段としては、保険商品や太陽光発電所、不動産等が挙げられる。JOLCO商品の特徴としては、希望する繰り延べ金額に応じて投資金額を調整できる事である。JOLCO 商品は1 口1,000 万円程度のことが多く、1 件当たりの出資金販売金額は平均5,000 万円程度のようである。投資家の 決算が3 月、9 月の場合が多いため、JOLCO 商品の販売はこれらの時期に 集中する傾向がある。

JOL 商品は、税負担の繰り延べというよりは、実物資産投資の一環で投資されることが多いようである。株式や債券等の伝統的な金融資産以外の投資先を検討する際、不動産や太陽光発電所などの実物資産と比較検討されることが多いようである。

◆ 投資家の獲得経路
同社は投資家の大半は、ビジネスマッチングパートナーからの紹介によるものがほとんどである。22 年3 月末時点におけるビジネスマッチングパートナー数は179 社であり、構成比は金融機関(銀行、信用金庫、証券会社等)が58.1%、税理士・会計士事務所が41.9%を占める。同社によると、22/3 期における商品出資金等販売金額ベースでは、金融機関が約8 割を占めるようである。税理士・会計士事務所と比較して、金融機関から紹介される投資家の方が、規模が大きい事などから、1 件当たりの販売金額が大きくなる傾向がある。

同社はビジネスマッチングパートナーに対して、投資家と投資契約が締結された際に紹介手数料を支払っている。販売金額に対する手数料率は、案件の収益性や投資家の需要等に応じて設定されている。

◆ 組織体制
22 年8 月末時点で34 名の同社の従業員の配置は、リース事業組成が8 名、営業が20 数名、コーポレートが数名である。リース事業組成は航空機と船舶・コンテナで分かれており、それぞれ4 名である。22 年8 月末時点で29 名の同社の臨時従業員の配置は、大半が営業である。

22 年8 月末時点における同社の拠点は、本社(東京都港区)、大阪支店(大阪市北区)、福岡支店(福岡市博多区)、名古屋オフィス(名古屋市中村区)、高松オフィス(香川県高松市)の5 拠点である。各拠点の主な役割は営業であり、同社の営業員は地方銀行等の金融機関における商品説明会や投資家への同伴外交などを行っている。

航空機及び船舶・コンテナそれぞれのリース案件の開拓及びリース管理については、国内外における複数のパートナーと協業している。航空機に関しては、18 年11 月にアイルランドのABL Aviation との間で業務提携契約を締結している。同社によると、ABL Aviation はブティックタイプの航空機アセットマネージャーで、同社のニーズに対して素早く、きめ細かく対応できる点を評価しているようである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。