eWeLL<5038> 電子カルテサービス導入顧客数の拡大及び顧客単価向上による成長を目指す

2022/09/21

訪問看護専用の電子カルテサービスの企画・開発・販売を主として展開
電子カルテサービス導入顧客数の拡大及び顧客単価向上による成長を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ 訪問看護専用の電子カルテサービスの開発・販売を主として展開
eWeLL(以下、同社)は、訪問看護注1ステーション向けに「訪問看護専用電子カルテ注2サービスiBow」を主な提供サービスとした訪問看護ステーション向けサービス事業を展開している。

同社は訪問看護ステーション向けサービス事業の単一セグメントだが、サービスの内容により「クラウドサービス」と「BPO注3サービス」、「その他」の3つに区分されている。22/12期第2四半期累計期間(以下、上期)における売上構成比は、「クラウドサービス」が93.8%、「BPOサービス」が5.2%、「その他」が1.0%である(図表1)。

◆ クラウドサービス
同社は主に訪問看護ステーションに対して、訪問看護専用電子カルテサービスである「iBow」や保険請求を行う機能を有する訪問看護専用レセプト注4システム「iBow レセプト」、訪問看護専用勤怠管理システム「iBow KINTAI」を提供している。22/12期上期における売上構成比は、「iBow」が93.8%、「iBow レセプト」が6.2%、「iBow KINTAI」が0.0%である。

(1) 訪問看護専用電子カルテサービス「iBow」
訪問看護ステーションで働く看護師等(看護師等に含まれるのは、看護師、保健士、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)は、在宅療養中の患者宅に訪問しケアを実施する度に記録書類(カルテ)を作成する義務がある。同社が聖路加国際大学(東京都中央区)と共同で21年4月に実施したアンケート調査によると、45.7%の訪問看護ステーションは紙のカルテを使用しており、35.3%が患者宅等において手書きで記録した内容に基づきパソコンでカルテを作成している。患者宅等でタブレットやスマートフォンでカルテを作成しているのは訪問看護ステーションの19.0%に留まる。

「iBow」は看護師等が患者宅で記録書類の作成、過去のカルテ等の確認が簡単にできる訪問看護ステーションに特化した電子カルテサービスである。訪問看護ステーションは「iBow」を利用することで、訪問看護業務を効率化し、看護師等が安心・安全に在宅看護ケアに集中できるようにし、看護師等1人当たりの利用者宅への訪問件数を増やす事ができる。同社によると「iBow」を導入することで、看護師等1人当たりの訪問看護可能件数を3件/日から6件/日へ増やす事ができるとしている。

料金は基本料金と従量料金で構成される。基本料金は18,000円/月である。従量課金は看護師等の訪問件数1件当たり100円である。契約期間は原則として2年以上である。

「iBow」の契約ステーション数は、19年3月末の769件から22年6月末には1,977件へ増加している。同社によると、「iBow」の契約ステーションの規模別の構成比は、国内の看護ステーションの規模別の構成比と同様の傾向があり、利用者数50人未満の小規模ステーションの割合が高いようである。地域については、日本全国の看護ステーションで利用されている。

顧客獲得の経路は、顧客からの問い合わせがほとんどである。同社の顧客のほとんどが電子カルテを初めて導入する看護ステーションである。ほとんどの看護ステーションではレセプトシステムが導入されており、数年に一度入替が行われる。そのレセプトシステムの入替の際に、一部の看護ステーションが業務効率化やガバナンス向上等の観点からカルテの電子化を検討する。

訪問看護ステーションが電子カルテの導入を検討する際は、数社の電子カルテ事業者に問合せ、提案を受け、比較検討する。同社は看護ステーションカルテとしての実績の多さなどから選択肢の一つに入る事が多い様である。同社では、顧客からの問合せを受けたあと、同社のインサイドセールスが顧客に提案を行い、契約締結に繋げている。

(2) 訪問看護専用レセプトシステム「iBow レセプト」
「iBow レセプト」は「iBow」と連携されており、患者宅に訪問し看護を実施した記録を看護師等が「iBow」で作成することで、レセプトの作成が自動的に行われる。

レセプト請求の諸元となる訪問看護記録から請求が自動で作成されることで、不正請求や誤った請求等を抑制することができ、訪問介護ステーションのガバナンス強化に繋がる。また、訪問看護ステーションは看護師等の医療従事者が管理運営しているため、事務手続きのレセプト作成に自信が無い管理者も多く、そういった人でも「iBow」に正しく情報を入力しておくことで、レセプト請求が容易にできる。

課金形態は、基本料金は無く、従量課金のみである。従量課金の最低利用料金は7,000円/月である。契約期間は単月または年間契約である。

同社は21年4月に「iBow レセプト」をリリースし、22年6月末時点で「iBow」を契約しているステーションの約8割が「iBow レセプト」を導入している。

(3) 訪問看護専用勤怠管理システム「iBow KINTAI」
訪問看護ステーションで働く看護師等の就業環境は、一般的な企業とは異なり、就業時間中の中抜けやシフト制の勤務、夜間や休日に患者や患家、主治医からの緊急連絡が入る体制を取るためのオンコール当番注5と言った特殊なものがある。また常勤換算注6と言われる訪問看護ステーション特有の計算、管理、定められたフォーマットでの書類の作成が必要である。

「iBow KINTAI」は、スマートフォン、タブレット、パソコンのどのような機器でも、また、出先や自宅等、どこからでも打刻ができ、GPSで位置情報も取得する事が可能なため、直行直帰やテレワークにも有効である。

同社は「iBow KINTAI」を原則、無償で提供している。同社は「iBow」の契約ステーション数の拡大に向けて、同社の顧客で無い訪問看護ステーションへも「iBow KINTAI」を無償で提供している。

◆ BPOサービス
同社は、BPOサービスとして、「iBow 事務管理代行サービス」を提供している。「iBow 事務管理代行サービス」では、訪問看護ステーションにおけるレセプト業務(保健医療機関や利用者への請求データの作成業務)を同社が代行して対応する。医療・介護保険情報の登録や、医師からの指示書情報の登録を代行すること、また請求諸元となる電子カルテ情報の確認等を同社が行う事で、顧客は人的リソースを訪問看護業務に振り向けることが可能になる。

BPOサービスの対価としては、顧客の総売上(保険、自己負担分、自費)の一定割合(顧客の総売上の5%程度、最低利用料金100,000円/月)を顧客より受け取っている。契約期間は原則1年である。

同社は21年1月より「iBow 事務管理代行サービス」を本格的に提供開始し、21年12月末時点における契約ステーション数は34である。同社によると、介護保険や医療保険に精通した事務員が退職した際に後任者がなかなか見つからないステーション、保険制度等の知識が少ない看護師がレセプト業務に対応しており、負荷が大きいステーションが「iBow 事務管理代行サービス」を利用する場合が多い様である。

◆ その他
その他には、「iBow」導入時の研修に関連する収入や顧客が「iBow」導入に合わせてタブレット端末を導入する際に通信キャリアから受け取る代理店インセンティブが含まれている。

◆ サービスの組織体制
22年6月末時点で64名の同社の従業員の配置は、営業・Webマーケティング・カスタマーサクセスが約3割、カスタマーサポートが約2割、事務代行が約2割、プロダクトの企画・開発が約1割、その他管理部門が約1割である。同社はシステム開発の大部分を外部に委託している。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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