ジャパンワランティサポート<7386> ストック型、高利益率のビジネスモデルを確立している

2022/06/29

住宅設備機器の延長保証事業をBtoBtoC形態で展開
ストック型、高利益率のビジネスモデルを確立している

業種: その他金融業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 住宅設備機器の延長保証事業をBtoBtoC形態で展開
ジャパンワランティサポート(以下、同社)は、ハウスメーカー、家電量販店、ホームセンター等の住宅設備機器の供給事業者(以下、事業者)と提携し、住宅設備機器の延長保証事業をBtoBtoC形態で展開している。

延長保証事業では、住宅設備機器の故障による修理対応や不具合の解決をサポートする「あんしん修理サポート」等を中心に運営している。「あんしん修理サポート」は、給湯器、キッチン、バス、洗面化粧台、トイレ、エアコン等を中心とする住宅設備機器を対象に、故障や不具合が発生した際に修理業務に関わる一連の作業を事業者に代わって行うサービスである。

住宅設備機器のメーカー保証期間は通常1~2年であるが、同社はメーカー保証期間を含む最長10年(5年以上、中心は10年)に亘ってサービスを提供している。対象機器に関して修理が必要になった場合でも、保証期間内であれば、延長保証サービスの加入者には自己負担が一切生じない仕組みとなっている。

同社は予め、住宅設備機器の修理サービスに係る業務委託契約を提携する事業者と締結している。住宅設備機器の延長保証サービスは、事業者が機器の購入者に対して、標準付帯する場合と、オプションサービスとして斡旋・仲介する場合がある。どちらの場合も事業者が保証主体となって購入者と保証契約を結ぶと共に、購入者に会員証を発行し、会員は保証料を事業者に一括で支払うことでサービスが開始される。その後、同社は、業務委託契約に基づき、事業者から業務受託料を受領している。

サービス提供期間が最長10年と長期であるため、その間の社会情勢、環境の変化等に伴う修理料金の上昇に対するリスクヘッジとして、一部の事業者と機器においては、保証期間と同一の保険期間の保険契約を損害保険会社と締結している。同社は、保険契約の締結時に保険料を一括で損害保険会社に支払う一方、対象となる事業者の機器の修理が実施された際は、同社に保険金が支払われる仕組みとなっている。

同社は、当サービスに加入した住宅設備機器の購入者である会員からの故障、不具合の連絡(問合せ)を、自社運営のコールセンターにおいて24時間365日体制で受付けている。問合せから派生する修理依頼に関しては、対象機器を製造した住宅設備機器メーカー(以下、メーカー)に修理を依頼し、会員宅での修理完了後、同社がメーカーに修理費を支払っている。

◆ 周辺サービスへの取組みを進めている
同社は、「あんしん修理サポート」を中心に事業を展開しているが、周辺サービスとして位置付けられる「あんしん住宅サポート24h」と「リユース修理サポート」の運営も行っている。「あんしん住宅サポート24h」は19年1月に、「リユース修理サポート」は20年7月にサービスを開始しており、会員数や売上高に占める両サービスの比率は小さい模様である。

「あんしん住宅サポート24h」は、「あんしん修理サポート」に、同社の親会社であるジャパンベストレスキューシステム(2453東証プライム、以下、JBR)が運営する緊急駆け付けサービス(鍵の紛失や水回りのトラブル等への対応)、及び暮らしの相談サポートを付加したサービスである。「リユース修理サポート」は、「あんしん修理サポート」のような新品を対象としたものではなく、中古の住宅設備機器を対象とした修理保証サービスである。

◆ 提携事業者数の拡大により、有効会員数は着実に増加している
同社は、提携事業者を通じて会員にサービスを提供しており、提携事業者の業態と事業者数の拡大が営業戦略の柱となっている。10年3月の設立からしばらくはエコキュート訪問販売業者等が提携事業者の中心となっていたが、14年5月にハウスメーカー向けサービスを開始すると提携事業者数が急増し、15年には1,000社を突破した。17年12月に量販店向けサービスを開始すると提携事業者数は更に増加し、20年には2,000社を突破した。

同社は、事業拡大を図るKPIとして「有効会員数」を重視している。有効会員数は、過去に同社サービスに登録された全会員から、保証期間が終了した会員を除いた、同社サービスの会員として有効な登録数である。同一会員で複数の機器が登録されている場合もある。提携事業者数の拡大を背景に、有効会員数は、18/9期に50万件を突破した後、着実に増加を続け、21/9期末には約113万件となった(図表1)。

21/9期末時点における経過年数毎の有効会員数の割合は図表2の通りである。各年度の新規会員数は年々増加傾向にあるため、経過年数が短い期間の有効会員数の割合が高い傾向にある。

◆ ストック型、高利益率のビジネスモデルを確立している
同社は、事業者と購入者の間で延長保証契約が締結された際、事業者から一括で収受する業務受託料をベースに事業を展開している。業務受託料から事務手数料を控除した残高(保証料)は、前受収益(1年内に売上計上される部分)及び長期前受収益(1年を超えてから売上計上される部分)に計上され、保証期間に亘って、毎月、売上計上されている。事務手数料は、会員登録、会員証発行等、サービス加入月に発生する事務工数に対する手数料売上であるため、契約月に一括計上されている。

同社は、売上高を、前期末の前受収益に計上された業務受託料によって形成される「過去加入会員に対応するストック売上(以下、ストック売上)」と、当期の新規加入会員に対応する売上高(事務手数料と加入月から期末月までの保証料売上)に分類しているが、21/9期のストック売上比率は約7割に達しており、ストック型のビジネスモデルとなっている。

業務受託料は、対象機器と保証期間によって異なるが、1件当たりの平均単価は約10,000円である一方、事務手数料は1件当たり900円に設定されている。例えば、期間10年の保証契約が締結され、業務受託料が12,900円であった場合、契約初月の売上高は、事務手数料900円と月額保証料100円の合計1,000円となり、その後は119カ月に亘り、月額保証料100円が売上計上される。

一方、同社の売上原価は、会員からの問合せに対し、同社がメーカーに修理依頼を行った際に発生する修理費用である外注費、修理費用の支出に備えて保険会社へ支払う保険料(支払保険料)、保険契約の対象機器を修理した際、保険会社から受領する保険金収入によって構成されている。

売上原価の中で大きな割合を占める外注費は、グロスの外注費から保険金収入を控除したネットの金額を修理発生時に一括で売上原価として計上されている。延長保証サービスに基づく修理依頼は、保証開始後おおよそ7年目以降の契約からの件数が顕著に増加する傾向があるため、同社においては、20/9期から外注費(ネット)が急増し、売上高外注費率(ネット)の水準も大幅に上昇した(図表3)。

同社は、取扱実績に乏しい機器に対する保証サービスや、中古機器に対する保証サービス、特定の業務委託元から受注した保証サービスに関し、修理単価の上昇や修理件数の急増に備えるため、保証期間と同一の保険期間の保険契約を損害保険会社と締結している。

18/9期以降、同社は、新規会員における保険契約の締結割合である付保率(各年度における新規付与会員数÷各年度における新規会員数)を50%前後に高めている(図表4)。結果として、支払保険料は増加し、売上高支払保険料率も上昇傾向となっている。

同社は、保険契約締結時に保険料を一括で損害保険会社に支払っている。一方、支払時の会計処理においては、保険料は、前払費用(1年内に費用化される部分)及び長期前払費用(1年を超えてから費用化される部分)として資産計上され、保険期間に亘って、毎月、費用化されているため、保証期間におけるコスト負担の平準化に繋がっている。

同社の21/9期の売上総利益率は69.5%と高水準である。一方、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料及び手当や役員報酬、支払手数料、支払報酬等が中心を占めており、販管費率は30.7%である。売上総利率が高いため、営業利益率は38.8%と、極めて高い水準にある。これは、21/9期末の従業員数が23名にとどまり、従業員1人当たりの売上高、営業利益が高いことや、安定収益であるストック売上の構成比が高いことが要因である。以上のことから、同社は、ストック型、高利益率のビジネスモデルを確立していると言えよう。

同社の21/9期末の自己資本比率は13.5%と低いが、これは、将来、売上高に振替えられる前受収益及び長期前受収益が負債純資産合計の82.8%を占めているためである。会員から受領した前受収益及び長期前受収益の大部分は現金及び預金として保有されており、キャッシュリッチの状態にある。低い自己資本比率と高い営業利益率の組合せにより、同社の21/9期の自己資本利益率は35.1%と極めて高い水準となっている。

業務委託契約時に業務受託料を一括で受領するビジネスモデルは、潤沢なキャッシュ・フローの創出にも繋がっている。同社の当期純利益は、20/9期293百万円、21/9期321百万円であったが、営業キャッシュ・フローは、各々1,011百万円、1,158百万円と当期純利益の水準を大幅に上回っている。延長保証事業は、大きな設備投資が不要なビジネスであるため、定期預金の預入や投資有価証券の取得等がなければ、投資キャッシュ・フローによる資金流出は営業キャッシュ・フローによる資金流入を大幅に下回ると見込まれる。

◆ ヤマダホールディングスへの依存度が高い
同社の主要顧客としては、ヤマダホールディングス(9831東証プライム)、関西電力(9503東証プライム)の連結子会社であるかんでんEハウス、住宅販売を主力とする不動産会社の大英産業(2974福証)、住宅設備機器のEC販売を展開する交換できるくん(7695東証グロース)等が挙げられる。

同社は、ヤマダホールディングスの家電量販店事業の中核子会社であるヤマダデンキと、住宅事業の中核子会社であるヒノキヤグループと取引しており、21/9期において、売上高の27%、新規会員登録による業務受託料の41%をヤマダホールディングスに依存している。取引開始が比較的最近であり、ストック売上が積み上がる局面にあるため、ヤマダデンキ向け売上高は増加傾向が顕著である(図表5)。

◆ 設立からJBRグループ入りまでの経緯とJBRとの関係について
同社は、庄司武史氏(現代表取締役社長)と小田則彦氏(現取締役営業部長)によって設立された(当初の商号はトラスト・グロー・パートナーズ)。当初は、JBRの保証事業の販売代理から事業を開始した。

有効会員数の拡大に伴い、上場を視野に入れた信用補完を目的として、同社は16年5月にJBRの完全子会社となり、商号をJBRあんしん保証に変更した(21年7月にはジャパンワランティサポートに商号が変更された)。16年7月にはJBRから、家電及び住宅設備機器の延長保証事業に関する権利義務(資産負債)を承継した。

22年5月20日時点では、JBRは発行済株式総数の100.0%を保有していたが、公募増資や売出しを実施した上場後も同社株式の69.5%(オーバーアロットメントによる売出しに伴うグリーンシューオプションが全て行使された場合は64.9%)を保有する親会社にとどまる見通しである。

同社は、JBRのグループとしての中核事業である会員事業(21/9期の売上高構成比51.8%)に属しているが、同事業の中心は住宅入居者に対して入会金や年会費等を事前に受領することで生活トラブルが発生した際、当該トラブルを解決するサービスである「安心入居サポート」である。JBRの売上高に占める同社の割合は9.3%に過ぎない。一方、同社は営業利益率が高いため、JBRの営業利益に占める同社の割合は34.5%に達しており、利益面ではグループの中核子会社の1社と位置付けられる。

同社の取締役は6名で、このうち社外取締役は2名である。残り4名のうち、非常勤取締役である若月光博氏はJBRの取締役執行役員や、JBRの子会社であるジャパン少額短期保険やアクトコールの取締役を兼務している。

また、同社とJBRとの間には同社からの外注取引として、「あんしん住宅サポート24h」での緊急駆け付け、生活相談等の業務のJBRへの委託があるが、取引額は僅少であり、開示の対象とはなっていない。

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