ストレージ王<2997> トランクルーム開発分譲が業績の鍵を握る展開が続く

2022/05/06

関東と岡山でトランクルームの運営管理と開発分譲の二本柱で事業展開
トランクルーム開発分譲が業績の鍵を握る展開が続く

業種: 不動産業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ トランクルームの運営管理と開発分譲の二本柱の事業構成
ストレージ王(以下、同社)は、トランクルームの運営管理と開発分譲を行う企業である。コンテナ建築を創業事業とするデベロップの子会社として、トランクルームの運営管理を行う目的で設立された。19年に、デベロップからトランクルームの企画開発の事業が移管され、トランクルームの自社開発から運営管理までをワンストップで行える企業となった。

同社の事業セグメントはトランクルーム事業の単一セグメントだが、売上高は、トランクルームを管理することで収益を得るトランクルーム運営管理事業と、同社が開発したトランクルームを投資家に売却することで収益を得るトランクルーム開発分譲事業に区分されている(図表1)。

トランクルーム運営管理事業はストック型の事業であるため、売上高は管理する物件の部屋数に応じて、安定的に拡大してきている。一方、トランクルーム開発分譲事業は、売却する案件の件数や規模により売上高が大きく増減するフロー型の事業である。そのため、トランクルーム開発分譲事業の増減収により、全体の売上高の変動幅が大きくなる特徴がある。

◆ トランクルームとは
トランクルームとは、広義には、自宅または自社外のスペースで荷物を収納、保管しておくことができるサービスのことである。利用者としては、普段頻繁に使用しない物をトランクルームに収納することで、物を捨てることなく、自宅または自社スペースを有効活用することができるといった利点がある。

また、トランクルームは投資先のひとつとなりうる。トランクルームは、アパートや賃貸マンション等の居住用不動産やオフィス用不動産と比べて、施設や設備の劣化が少なく、修繕費や追加投資も少なくて済む。また、後述するコンテナ型を中心に、公共交通機関で見た利便性が悪い土地の活用にも向いている。一方で、面積当たりの区画数が多く、また、必要とされる契約手続きが多いことから、物件の管理は煩雑と言われている。

トランクルームは、建物の建築様式により、以下の2 つのタイプに分類されるが、同社は両方を取り扱っている。

(1) コンテナ型(屋外型)。道路沿いの敷地に建築用コンテナを設置するタイプで、コンテナの連結またはコンテナ内を仕切ることで部屋サイズを調整し、トランクルーム利用者が荷物を収納する。空調設備は備わっていない。

(2) ビルイン型(屋内型)。在来建築による建物内に間仕切りをして部屋をつくり、利用者に貸し出しするタイプのものである。屋内のため、空調設備が備わっていることと、建物への入退場の管理が容易のため、コンテナ型に比べて防犯性は高い。

◆ トランクルーム運営管理事業
トランクルーム運営管理事業は、トランクルームを利用者に貸し出すストック型の事業である。利用者から受領するトランクルーム利用料が売上高、トランクルームの所有・賃借及び運営にかかる費用が原価となる。

事業主体の違いにより、トランクルーム運営管理事業はさらに以下の2 つのタイプに分類される。なお、後述するトランクルーム開発分譲事業において同社が開発・売却した物件も、原則として、同社の運営管理事業のもとで管理されることになる。

(1) 固定家賃型。同社が所有する物件、または賃借する物件で、固定的な不動産費用が発生するタイプで、トランクルームの稼働率の変動リスクを同社が負う。

(2) 変動家賃型。オーナーからビルを賃借して同社がトランクルームを運営する、または管理を受託するタイプで、同社が徴収するトランクルーム利用料を売上高として認識し、同社取り分の手数料を差し引いた額を原価としてオーナーに支払う。稼働率の変動に伴う事業リスクを同社は直接負わない。

固定家賃型か変動家賃型かによる利益率の差や変動はあるものの、トランクルーム運営管理事業では、店舗数及び管理する部屋数をいかに増やしていくかが重要である。22/1期末時点で同社は137店舗、7,710室を運営管理しており、1店舗当たり部屋数は56.3室である(図表2)。これは、後述するトランクルーム開発分譲事業で売却した後に管理を受託する物件も含まれる。また、出店してから2年超経過したトランクルームの22/1期末の稼働率は 84.0%に達している。

展開エリアは関東と岡山が中心である。岡山で展開しているのは、15年に岡山にあった同業のアイトランク山陽と合併したためである(図表3)。

◆ トランクルーム開発分譲事業
トランクルーム開発分譲事業は、トランクルームを自社開発し、収益不動産物件として投資家に売却することで収益を上げるフロー型の事業である。開発物件の種類により以下の2つのタイプに分類される。

(1) 用地購入、ビルイン型建築。同社が用地を購入し、ビルイン型建物を建築し、土地と建物を合わせて売却する。

(2) 土地賃借、コンテナ型建築。同社が借地した用地の上にコンテナ型の建物を建設する。建物は投資家に売却し、用地の賃借人を同社から投資家に変更する。

なお、原則として、売却したトランクルームは改めて同社が借り上げ、その運営管理は同社が行っていくことになり、トランクルーム運営管理事業の収益につながっていく。

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