HYUGA PRIMARY CARE<7133> 蓄積してきた運営ノウハウを提供するきらりプライム事業の本格成長に期待
門前型薬局とは似て非なる在宅訪問薬局「きらり薬局」運営が主力
蓄積してきた運営ノウハウを提供するきらりプライム事業の本格成長に期待
業種: 小売業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 在宅訪問薬局の運営が主力事業
HYUGA PRIMARY CARE(以下、同社)は、在宅訪問薬局「きらり薬局」の運営を中心に事業を展開している。調剤薬局には、医療機関の近隣に店舗を構えて通院可能な患者を対象にする門前型薬局と、通院困難な在宅患者のもとに薬剤師が訪問する在宅訪問薬局がある。医師の処方箋をもとに薬を提供する点は共通しているものの、サービスの対象やビジネスに必要な要件に大きな違いがあり、似て非なる業態である。
在宅医療にシフトしていく社会の流れから、在宅訪問薬局に対する需要が高まる公算が大きいものの、様々な参入障壁が存在し、在宅訪問薬局を主体に展開してきた企業がほとんどないのが実情である。同社は08年に訪問調剤サービスを開始して以降、在宅訪問薬局を主体に成長してきた稀有な存在である。その過程で、15年にはエムスリー(2413東証一部)及びその子会社と資本業務提携を締結した。
同社は直営店の「きらり薬局」の出店で成長してきたが、蓄積してきた在宅訪問薬局の運営ノウハウを提供することで他の調剤薬局を支援するきらりプライム事業を19年に開始し、在宅訪問薬局市場での面展開を加速している。
同社の事業は、在宅訪問薬局事業、きらりプライム事業、ケアプラン事業、タイサポ事業の4つの報告セグメントに分類されている(図表1)。売上高の9割近くを在宅訪問薬局事業が占めるが、上述の通り、きらりプライム事業の成長が高く、元々高利益率の事業であることとも相まって、同社の第二の収益源になりつつある。
◆ 在宅訪問薬局事業
全体の売上高の約9割を占める在宅訪問薬局事業は、「きらり薬局」を運営する事業である。「きらり薬局」は、一般的な門前型薬局の機能を残しつつも、在宅訪問型薬局として機能する薬局であり、21年9月末時点で、九州(福岡県、佐賀県)と首都圏(東京都、神奈川県、千葉県)の5都県に35店舗出店している。進出地域ではドミナント出店を図っている。
在宅訪問型薬局とは、通院が困難な在宅療養の患者と契約を締結し、薬剤師が患者のもとを定期訪問するタイプの薬局である。定期訪問した際の状況は処方医やケアマネージャーへ報告されるなどの情報共有がなされるほか、24時間365日対応できるということもあって、地域包括ケアシステムの一翼を担う存在である。
「きらり薬局」の在宅訪問サービスの利用者は通院困難者が多く、利用者の87%が高齢者施設入居者、97%が要介護認定者となっている。また、通常の薬局と比べて業務負担はあるものの、調剤報酬点数は2倍近くあるため、収益性が高くなる傾向にある。
高齢者施設の入居者との契約が中心のため、入居期間中はサービスが継続することが多く、ストック型ビジネスと捉えることができる。従って在宅患者数が重要なKPIとなる。期末在宅患者数は21/3期末7,282人、22/3期第2四半期末7,515人まで増加してきた(図表2)。
◆ きらりプライム事業
きらりプライム事業は、在宅薬局業務の本格導入を進める調剤薬局を対象に、運営ノウハウや業務効率化システムを提供して支援する事業である。在宅訪問薬局を運営するには、患者獲得、人材育成、患者対応、店舗運営の各面で門前型薬局とは全く異なるノウハウが必要である。それらを提供することで、面的拡大を加速していく。
また、同社では、在宅訪問に特有の業務を支援する在宅訪問支援情報システム「ファムケア」を自社開発しており、業務遂行にあたってのコスト増加の抑制、業務効率化を付加価値として提供している。
加盟店が支払うサービス利用料は、月12,000円の基本料金という定額料金と、従量制料金で構成される。従量制料金は、医薬品仕入交渉代行、報告書システム貸与、夜間祝日電話対応等の追加サービスから成る。加盟店がケアする在宅患者が増え、加盟店の経営が成り立つことが同社の安定的な収益につながる料金体系となっている。
加盟店は急速に増加しており、21/3期末533店舗、22/3期第2四半期末803店舗となっている(図表3)。
◆ ケアプラン事業
10年9月開始のケアプラン事業は、ケアマネージャー(居宅介護支援員)としての介護サービスのコーディネートを行っている。「ケアプランサービスひゅうが」として展開している。1件約1.8万円でケアプラン作成をし、21/3期は6,373件のケアプラン作成実績があった。
◆ タイサポ事業
19年3月開始のタイサポ事業は、病院から退院した後の高齢者に、入居する介護施設を紹介するサービスである。「タイサポ」とは「退院サポート」の意味である。在宅訪問薬局事業の運営で構築してきた介護施設とのネットワークを活用したサービスとなっている。
1件当たり約1.5万円の入居施設からの紹介料が収益源となり、高齢者は費用負担なしでサービスを利用できる。19年の事業開始後、21/3期までに223施設への紹介があり、21/3期の入居実績数は320件であった。