サイエンスアーツ<4412> コミュニケーションプラットフォーム Buddycomの開発販売を行う
机の前に座らないで仕事をするデスクレスワーカーのコミュニケーションを支援
コミュニケーションプラットフォーム Buddycomの開発販売を行う
業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行
◆ デスクレスワーカーをつなげるプラットフォームを開発・販売
サイエンスアーツ(以下、同社)は「デスクレスワーカー」あるいは「ノンデスクワ ーカー」と呼ばれる机の前に座らないで仕事をする人達をつなげるライブコミ ュニケーションプラットフォーム「Buddycom(バディコム)」の開発・販売を行っ ている。
Buddycom はスマートフォンやタブレットに専用アプリを入れて利用される。無 線機やトランシーバーのように一斉通話ができる IP 無線注 1 に加えて、映像や 来店情報など現場に必要な情報の取得・共有を可能にするプラットフォーム である。
音声がクリアで、グループ内のユーザーへの一斉配信やユーザー同士の通 話、映像を配信しながらプッシュトゥートーク注 2 ができる、ユーザーの位置情 報が分かるなど、音声の他、画像や動画などのコンテンツのやり取りを可能に するなど、Buddycom には様々な機能や特長がある。
21/8 期の売上高の 97.5%が Buddycom 事業によるものである(図表 1)。 Buddycom 事業以外の売上高(図表 1 の「その他」に該当)はハイブリッド型デ ータベースのライセンス販売並びにサポートによるものであるが、新規顧客へ のライセンス販売は終了しており、現在は Buddycom 事業に経営資源を集中 している。
21/8 期末の契約社数は 400 社に達している。Buddycom は総合スーパー、工 場、交通機関、介護現場、農業、建設など、特定の業界や業種に関係なく、 最前線で従事するデスクレスワーカーに利用されている。
Buddycom の利用例が多いのが小売業で、ホームセンターの島忠、総合スー パーのイオンリテールやユニーなどに利用されている。館内放送や内線用の PHS とインカム注 3 の 2 端末をスマートフォン 1 台に置き換えるなどして、店舗 オペレーションや管理面で利用されている。レジの混雑時に個別に応援指示 を出したり、複数名への業務連絡に利用されたり、顧客の問い合わせに対し て情報応援が簡単にできるようになるなどのメリットが評価されている。
なお、主要販売先としてイオンリテールへの売上高が開示されているが(図表 1)、サブスクリプションモデルにもかかわらず、期ごとの変動が大きいのは、 Buddycom 利用料はセールスパートナー(販売代理店)経由で受け取ってい るのに対して、直販によるアクセサリー売上高のみが開示されているためであ る。
公共交通機関では新幹線列車に乗務する運転士、車掌、パーサーなどの情 報共有用のスマートフォンに Buddycom のアプリを搭載することで迅速且つリ アルタイムでの情報共有が可能になることや、駅構内や空港内での情報共有 ツールとして音声の質の高さや一つの端末で済むという便利さから利用され ている。
◆ ビジネスモデル
1)主にセールスパートナー経由で販売
同社は Buddycom をソフトバンク、リコー(7752 東証一部)、ティーガイア(3738 東証一部)などのセールスパートナー経由でエンドユーザーに販売している。 従来は自社での販売も行っていたが、今はセールスパートナー経由での販 売を主としている。
2)サブスクリプション型課金モデル
利用者数(ID 数)に応じて定額の利用料を受け取っている。一月ごとの契約 と一年ごとの契約がある。料金は基本的な機能(Talk Lite プラン)だけで月契 約で 1 ユーザー当たり税込み 1,100 円、年契約で同 7,920 円(月当たり 660 円)となり、セキュリティの度合いや機能に応じて料金が設定されている(図表 2)。
年契約の料金が低く設定されていることから、割合は開示されていないが、契 約の大半が年契約によるものとなっている。また、年契約では利用料を原則と して利用開始時に一括で受け取るため、同社にとってはキャッシュ・フローが 先行するという資金繰り面でのメリットがある。
顧客ベースの拡大とともに、サブスクリプション売上高比率は 19/8 期 37.2%、 20/8 期 60.4%、21/8 期 61.4%と上昇傾向にある。21/8 期のサブスクリプション 売上高比率の上昇ペースが緩やかに見えるのは、オリンピック関連の特需に よりアクセサリー売上高が前期比で大幅増となったためで、その影響を除け ば着実にサブスクリプション売上高比率は上昇している。
3)SaaS 形式での提供
ユーザーの通信した会話、画像などのデータはすべてクラウドを通して配信さ れ、同時にクラウドに保存される SaaS 注 4 形式で提供されている。
4)パートナーエコシステム
他社サービスとのAPI 注5連携を行った上でBuddycom を提供することがある。 サービスの提供先をエコパートナーと呼び、連携して商品開発や事業活動に 取り組んでいる。エコパートナーが提供するソリューションやアプリケーションと Buddycom とを組み合わせて利用してもらうことにより、利便性が高まり、 Buddycom の導入が進む、あるいは解約率の低下につながるという効果があ る。
Web 会議システムやビジネスチャットとの連携では相互に発話や入力した内 容がやり取りできる、AI や見守りシステムが解析または検知した内容を Buddycom が必要な先に一斉に通知することが可能になるというのがパートナ ーシステムとの連携の一例である。
5)ラージアカウントに強く、あらゆる業種・業界に展開可能
Buddycom は大規模な運用に耐えられる設計・品質やセキュリティに優れた 点が評価され、ラージアカウントに利用されている。また、特定の業界・業種に 限らず、多様な業種・業界の現場で、インターネットに接続できる環境であれ ば利用可能である。
6)安定的な顧客基盤
Buddycom は一旦導入されると現場を支えるインフラとして継続的に利用され、 解約率が低い。