ジェイフロンティア<2934> サービス開始した医療プラットフォーム「SOKUYAKU」の拡大が今後の焦点
「ヘルスケアテックカンパニー」を目指す健食・医薬品の通信販売会社
サービス開始した医療プラットフォーム「SOKUYAKU」の拡大が今後の焦点
業種: 食料品
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 健康食品や医薬品の通信販売が現在の主力事業
ジェイフロンティア(以下、同社)は、ヘルスケア分野を対象にソリューションを提供している。08年6月にヘルスケア分野におけるインターネット広告代理業として創業し、販売促進支援を行ってきたが、蓄積した販売促進のノウハウをもとに、12年8月に健康食品の自社ブランドの企画、開発、販売を開始した。その結果、現在は健康食品と医薬品の通信販売が主力事業となっている。
また、医療機関の検索、医師によるオンライン診療の予約及び受診、薬剤師によるオンライン服薬指導、処方薬の宅配サービスをワンストップで提供する医療プラットフォームサービス「SOKUYAKU」を21年2月に開始し、これから育成を本格化させる段階に入った。
同社の事業は、ヘルスケアセールス事業、メディカルケアセールス事業、ヘルスケアマーケティング事業の3つの報告セグメントに分類されている(図表1)。健康食品の通信販売を担うヘルスケアセールス事業が全売上高の約7割を占めているが、医薬品の通信販売はメディカルケアセールス事業に含まれているため、その分を合わせると、通信販売は全売上高の約9割を占めている。
◆ ヘルスケアセールス事業
21/5期の売上高の69.6%を占めるヘルスケアサービス事業では、自社ブランドの健康食品の通信販売を行っている。複数の大学教授と連携して開発した「酵水素328選」を主力ブランドとして、生サプリメントや生スムージー等を販売している。
商品の製造は東洋新薬(佐賀県鳥栖市)をはじめとするOEM調達先に、商品の保管・発送は物流倉庫事業者に、消費者からの受注のうち電話注文は外部のコールセンター運営会社にそれぞれ委託し、同社は商品企画、品質管理、販売、電話以外での受注を行っている。
ヘルスケア分野での販売促進支援が創業事業であるため、販売のプロセスでは同社は強みを発揮している。一番の特徴は、インターネット経由のオンラインの通信販売にも、インターネット経由以外のオフラインの通信販売にも強いという点にある。その結果、相対的に若い世代向けにはオンライン中心に、中・高齢層向けにはオフライン中心に販売するという展開が可能である。
その結果、21/5期末の同社の顧客会員基盤注1は166万人となっている。また、同社では、利益率が高い定期購入会員数を重視しており、21/5期末時点での定期顧客数注2は30.1万人となっている。
◆ メディカルケアセールス事業(1)
21/5期の売上高の21.5%を占めるメディカルケアセールス事業は、医薬品の販売を担っており、医薬品通販事業、調剤薬局事業、医療プラットフォームサービス「SOKUYAKU」事業で構成されている。21/5 期においては、メデ ィカルケアセールス事業の売上高の大半は医薬品通販事業によるものであ る。
◆ メディカルケアセールス事業(2):医薬品通販事業
医薬品通販事業は、ヘルスケアセールス事業と同じビジネスモデルで展開しており、違いは、販売する商品が健康食品ではなく医薬品であるという点だけである。
16 年12 月に開設した通販サイト「くすりの健康日本堂」にて、しみやそばかすに効く「ホワイピュア」シリーズや、肘や膝等の関節痛に効く「トンデケア」のブランドで医薬品、医薬部外品を販売しているほか、アインホールディングス(9627 東証一部)傘下のアインファーマシーズから譲受したオンラインショップ事業をリニューアルして19 年11 月に開設した「JFD オンラインショップ」にて「生漢煎Ⓡ防風通聖散」や「生漢煎Ⓡ八味地黄丸」といった漢方薬を販売している。
◆ メディカルケアセールス事業(3):調剤薬局事業
通信販売以外の販売チャネルとして19 年5 月に開設した「健康日本堂調剤薬局」がベースとなっている。近隣病院が発行する処方箋に基づいて調剤を行うほか、患者が薬局で待たずに薬を受け取ることができるよう処方箋を薬局に事前送信する「速薬」アプリの提供を行っている。
なお、20 年4 月から、新型コロナウイルス感染症の拡大抑制の目的で、時限措置ではあるものの、電話やウェブ面談を通じた服薬指導や医療用医薬品の宅配が可能となっている。同社の調剤薬局でも、この特別措置に準拠したサービスを行っている。
◆ メディカルケアセールス事業(4):「SOKUYAKU」事業
調剤薬局事業での、電話やウェブ面談を通じた服薬指導と処方箋医薬品の宅配の仕組みをさらに進化させたのが医療プラットフォームサービス「SOKUYAKU」である。
「SOKUYAKU」を通じてサービスを提供するのは、病院やクリニック、調剤薬局、宅配業者である。「SOKUYAKU」を利用することで患者ができることは、(1)同社が提携する病院やクリニックの検索、(2)オンライン診療の予約、(3)ビデオチャットによるオンライン診療の受診、(4)提携先調剤薬局の薬剤師によるオンライン服薬指導、(5)処方薬の宅配サービスである。これらすべてをワンストップで、オンラインで完結することができるのが、「SOKUYAKU」の最大の特徴である。
同社の収益源は、(1)患者からのオンライン診断1 回当たり150 円の利用料、(2)オンライン服薬指導1 回当たり150 円の利用料、(3)病院・クリニック 及び調剤薬局からの初期導入手数料200,000 円である。(1)と(2)は患者 が同社に支払うことになる。(3)は21 年8 月までは無料で、9 月から徴収が 始まる。ただし、「SOKUYAKU」はIT 補助金適用対象となっているため、病 院・クリニック及び調剤薬局は実質無料で導入することができる。なお、導入 後は、病院・クリニック及び調剤薬局に対する月額利用料はかからない。
21 年7 月末時点で、提携した病院・クリニックは709 件、調剤薬局は681 件、登録会員数は34,166 人である。また、処方薬の宅配サービスの展開エリアは、21 年8 月の時点で東京23 区、横浜市、大阪市となっている。
◆ ヘルスケアマーケティング事業
21/5 期の売上高の8.9%を占めるヘルスケアマーケティング事業では、創業時の事業がインターネット広告事業という経緯から、ヘルスケア分野に特化したマーケティング支援を行っている。売上高の多くを占めるのは、商品のイメージに合う著名人を起用して広告宣伝を行う「キャスティング」と、自社ブランド商品及び他社商品の卸である。