東和ハイシステム<4172> 今後関東エリアでのシェア拡大が進むかどうかが焦点
西日本を中心に歯科医院向けシステムを提供
今後関東エリアでのシェア拡大が進むかどうかが焦点
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 電子カルテをベースとした歯科医院向け統合システムが主力商品
東和ハイシステム(以下、同社)は、歯科医院向けシステムを提供する企業である。歯科医院向けシステムは、従来、機能ごとにシステムが分立し、各システムが個別に運用されてきた。同社はこれらの機能をひとつのシステムに融合し、一元的に管理、運営できる統合システムを独自開発した。それが、主力商品の「歯科電子カルテ統合システム Hi Dental Spirit XR-10i」である。
◆ 「歯科電子カルテ統合システム」の特徴
歯科医院が必要とするシステムの機能には、(1)保険診療報酬の請求に必要なレセプト機能、(2)診療カルテを記録する電子カルテ機能、(3)患者に対するインフォームドコンセントに関連する機能、(4)歯科医院の運営管理を効率化する機能がある。世間で歯科医院向けシステムと言った場合、レセプト機能を提供するシステムであるレセプトコンピュータ(以下、レセコン)のことを指すことが多い。また、それぞれの機能を提供するシステムごとに個別で運用されることがほとんどである。
同社の「Hi Dental Spirit XR-10i」の最大の特徴は、電子カルテ機能を主に置き、レセプト機能を統合して基幹システムと位置づけている点にある。その上で、インフォームドコンセント機能を提供する「i-DS」シリーズや、歯科医院の運営管理を効率化する機能を提供する「CTIシステム」等を基幹システムと連携させることで、統合パッケージとして一元管理できるようにしている。
歯科のカルテは、32本の歯の1本ずつの状態を図で記録するため、他の医科のカルテとは異なり、その記録量は膨大になる。同社では膨大なデータ処理のため、日立製作所(6501 東証一部)のデータベースソフトウェア 「HiRDB」を用い、手書きカルテと同等の利便性を実現している。そのシステ ムボリュームは、地方銀行の勘定系システムと同水準と言われている。一方、 そのボリュームの大きさのために、現在のところクラウド型システムでは提供 できず、サーバーやコンピュータにソフトウェアをインストールするオンプレミ ス型システムとしての提供に限られている。
◆ 顧客密着型の営業サポート体制
同社の特徴のひとつは、顧客密着型の営業サポート体制である。新規顧客への営業活動から既存顧客に対する保守サービス等のサポートまでを、営業サポート社員が行っている。「顔の見える」営業サポートにこだわり、営業拠点がない地域の歯科医院にはシステムを販売しないという徹底ぶりである。そのため、同社の商品の販売はすべて直販となっている。
20 年10 月末時点で、西日本を中心に営業拠点を23 拠点置き、約100 名の営業サポート社員を配置している(図表1)。その結果、緩やかながら、顧客数は増加を続けている(図表2)。
◆ 収益構造
同社の売上高は、システム売上高、プログラム改定売上高、機器修理売上高・その他に分類される(図表3)。システム売上高が約8割を占めている。
システム売上高はシステム販売時に計上される。既存顧客による買替更新と、新規顧客に対する新規販売から構成されるが、買替更新が多い模様である。なお、顧客の歯科医院のほとんどがリース契約を活用している。
同社は、ソフトウェア保守、システムサポート、(同社の意思または事情に基づいて実行される)バージョンアップに関する料金を徴収しない「ソフトウェア三無主義」を謳っており、これも同社の大きな特徴となっている。しかし、同社の意思が反映されない制度変更等に伴うプログラム修正については顧客負担としている。このプログラム修正にかかる料金が、プログラム改定売上高となる。2 年に1 度の診療報酬の変更、貴金属価格の変更、年号変更 といった時に必要となるが、規模の大小はともかく、年に数回発生する模様 である。
歯科医院にとって、ハードウェアが故障すると業務に支障を来すことになる。ハードウェアの修理・保守は同社の保守サービスのカバー範囲ではなく、顧客の実費負担となる。歯科医院は、ハードウェアの修理・保守に備えて、任意の互助会組織HMG(ハイデンタルハードメンテナンス互助会)を組織している。同社の顧客のほとんどが加入しており、月額1,500 円以上の会費で修理・保守が受けられる。HMG は同社とは独立した組織だが、実際に加入者のハードウェアの修理・保守が発生すると、HMG が同社に対して修理を依頼することとなる。その際のHMG に対する売上高は機器修理売上高として計上される。