さくらさくプラス<7097> 良好な経営環境を背景に東京23区で保育所開設を進める方針

2020/11/05

認可保育所をはじめとした保育所を運営
良好な経営環境を背景に東京23区で保育所開設を進める方針

業種: サービス業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 保育施設の運営とその関連業務を行う
さくらさくプラスグループは、子会社の経営管理を行う「さくらさくプラス(以下、同社)」及び保育所を運営する「さくらさくみらい」、保育所への活用を視野に入れた不動産の仲介・コンサルティング業務を行う「さくらさくパワーズ」の連結子会社2社と不動産の管理・運用を行う「あかるいみらいアセット」及び、ベトナムにおける保育所の運営を行なう「Hana TED., JSC」の持分法適用関連会社2社で構成されている。売上高の9割以上が保育所を運営する「さくらさくみらい」によるものである。

同社は、さくらさくみらいの前身で保育所を運営するブロッサムの親会社として17年8月に設立された。ブロッサムは09年8月の設立で、同社グループとしては10年以上にわたって保育所を運営している。20/7期末時点で認可保育所58施設、小規模認可保育所1施設、東京都認証保育所1施設を運営している(図表1)。

認可保育所は児童福祉法に基づき、保育室の面積や保育士の数等、国が定めた基準に基づいて自治体から認可された施設である。7月末時点で東京23区に53施設、千葉県と埼玉県に各々1施設ずつ、大阪府に3施設を保有している。

小規模認可保育所は子ども・子育て支援法により、市区町村による認可事業で定員6人以上19人以下かつ0歳から2歳までの子どもを対象としている。埼玉県和光市で1施設を運営している。

東京都認証保育所は認可保育所では応じきれない大都市のニーズに対応しようとする東京都独自の制度によるもので、同社グループは中央区月島で1施設を運営している。

◆ 保育事業特有の収益構造
認可保育所・小規模認可保育所では保育サービスを利用者(保護者等)に提供しているが、保育料は利用者から各自治体に支払われ、各自治体は利用者から徴収した保育料に年齢別に決められた額を加えた委託費等を認可保育所に交付している(小規模認可保育所では一部利用者負担が生じる)。東京都認証保育所では事業者が提供した保育サービスに対して自治体からは運営費補助金、利用者からは保育料を受け取っている(図表2)。

自治体から支払われる金額が大きいため、主な販売先は自治体となる。同社グループの場合、東京23区での保育所数が増加してきたため特定の区への依存度は低下してきているが、20/7期においては大田区への売上高は総売上高の12.3%を占めている。

在園児数に応じて受け取る自治体からの委託費や補助金等を売上高として計上する他、保育所を新設する際の内装工事費等の支出の一部に対する自治体からの補助金を営業外収益の「補助金収入」として計上している。一方、新規開設のための支出のうち費用処理したものは営業外費用の「開業準備費」として計上している。また、補助金収入が開業準備費を上回ることが多いため、保育所の新規開設数が増加する局面では、営業外収支が改善する傾向がある。

保育所の新規開設は4月が中心となるが、開設準備費用等は同社グループの第1四半期から第3四半期(8月から4月)に先行的に発生する。一方で、補助金収入は第3四半期(2月から4月)に多額に計上される傾向がある。同社グループの20/7期の補助金収入の約4分の3が第3四半期に計上されている。

保育所の開設後の経過期間によっても損益に与える影響が異なる。開園当初は0歳~5歳までの対象年齢のうち3歳~5歳児が定員に満たないことが多く、児童年齢の持ち上がりとともに定員に近づく傾向がある。このため、開園から数期間は収益性が低く、保育所の新設開園数が増加すると営業損益が悪化する傾向がある。同社グループは積極的に保育所を開設していく方針であることから、年齢別の定員充足状況が営業損益に与えるマイナスの影響は当面は大きくなる可能性が高い。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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