東海ソフト<4430> 得意とする車載関連の組込みソフトウェアと製造業向け開発での拡大に期待

2019/03/06

名古屋を本拠地とする独立系ソフトウェア受託開発企業
得意とする車載関連の組込みソフトウェアと製造業向け開発での拡大に期待

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 業界では珍しい事業構成を持つ独立系ソフトウェア受託開発企業
東海ソフト(以下、同社)は、愛知県名古屋市を本拠地とする、独立系のソフトウェア受託開発企業である。

同社は日立製作所(6501 東証一部)グループ向けの製造・流通業関連のシステム開発からスタートし、01 年にトヨタ自動車(7203 東証一部)グループ向けの車載関連開発に参入し、実績を積んできた。ソフトウェアの受託開発を行う企業は多いが、同社のように組込み関連、製造・流通業向け、金融・公共向けの3 分野を併せ持つ企業は多くなく、珍しい事業ポートフォリオを構築していると言えよう。その分、好景気・不景気の波への耐性は強い。また、人命やライフラインに係る案件の実績が多いため、リピート案件が多く、価格競争に陥りにくいという特徴を持つ。

同社の事業は、ソフトウェア開発事業の単一セグメントだが、事業戦略上の事業区分により、3 つの事業に分類される。大まかには、組込み関連が約40%、製造・流通向けが約40%、金融・公共向けが約20%という構成となっている(図表1)。

◆ 組込み関連事業
18/5 期の売上高の38.4%を占める組込み関連事業では、自動車や産業機器等に内蔵され、特定の機能を実現するためのコンピューターシステム(組込みシステム)に関係するソフトウェアを開発している。同事業はさらに、(1) 主に自動車向けの車載関連開発、(2)民生・産業機器関連開発に分類される。

車載関連開発は、動力系や車体関連機器を制御するECU 注のソフトウェア開発を行う。組込み関連事業の約57%を占め、このうちの過半がトヨタ自動車グループ向けである。

なお、車載関連開発は技術の進歩が速い分野であり、技術動向へのキャッチアップが欠かせない。15 年11 月から、欧州発車載ECU 開発の標準プラットフォームの「AUTOSAR(オートザー)」をベースとした開発を推進している。そのため、同プラットフォームの開発を担うAPTJ(愛知県名古屋市)に資本参加している。また、18 年6 月には、車載ソフトウェアでトップシェアのネクスティエレクトロニクス(東京都港区)と資本業務提携を行い、プラットフォーム、ミドルウェア、組込みソフトまでを一手にカバーできる体制の構築を目指している。

民生・産業機器関連開発では、デジタル家電等の民生機器や、自動販売機やATM(現金自動預け払い機)等の産業機器に組み込まれる制御ソフトウェア開発を行っている。組込み関連事業の約43%を占め、富士電機(6504 東証一部)や日立製作所の産業機器に用いられている。

◆ 製造・流通及び業務システム関連事業
18/5 期の売上高の43.1%を占める製造・流通及び業務システム関連事業は、ファクトリーオートメーション(FA)やロジスティクスオートメーション(LA)を取り扱う製造・流通システム関連開発と、企業の業務支援システムを取り扱う業務システム関連開発に分類される。

従来はオーダーメイド型で開発を受託してきたが、案件完了までの時間がかかり過ぎていた。そのため、数年前より、東洋ビジネスエンジニアリング(4828 東証一部)との協業で、パッケージ化を進めてきた。

製造・流通システム関連開発では、フランスのダッソー・システムズ社のパッケージで製造現場の状況をリアルタイムで見える化する「DELMIA Apriso」(東洋ビジネスエンジニアリングが代理店)を、業務システム関連開発では東洋ビジネスエンジニアリングの製造業向け生産管理パッケージ「mcframe」を使用している。

また、この分野はIoT との親和性が高く、同社もIoT を活用したソリューション提供を得意としている。その代表例として、設備稼働管理システム「Flex Signal(フレックスシグナル)」といった自社パッケージが挙げられる。

◆ 金融・公共関連事業
18/5 期の売上高の18.5%を占める金融・公共関連事業は、大手SIer の協力会社として、金融機関向け及び自治体等の公共機関向けのソフトウェア開発を受託している。金融関連開発と公共関連開発に分類されるが、日立製作所グループを通じた案件がほとんどである。

◆ 全体として日立製作所グループ向けが多い
元々日立製作所グループ向けのシステム開発からスタートしたこともあり、日立製作所グループ向けの売上が多い。18/5 期の全売上高の25.1%が日立製作所グループ向けとなっている(図表2)。

◆ 東海ソフトの強み
同社の特色及び強みとして、(1)プロジェクト遂行能力(品質、納期、赤字案件比率の低さ等)及びソフトウェア開発能力、(2)人命やライフライン関連分野のシステムの案件に集中することによるリピート案件比率の高さ、(3)分散された事業ポートフォリオによる多様な技術の集積の3 点が挙げられよう。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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