LA ホールディングス(2986) 5期連続で過去最高を更新
![]() 脇田 栄一 社長 |
株式会社LAホールディングス(2986) |
![]() |
企業情報
市場 |
東京証券取引所 グロース市場、福岡証券取引所 本則市場 |
業種 |
不動産業 |
代表取締役社長 |
脇田 栄一 |
所在地 |
東京都港区海岸1丁目9番18号 国際浜松町ビル9階 |
決算月 |
12月 |
HP |
https://lahd.co.jp/ |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
6,760円 |
6,308,875株 |
42,647百万円 |
28.6% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
330.00円 |
4.9% |
828.09円 |
8.2倍 |
2,915.56円 |
2.3倍 |
*株価は4/3終値。各数値は2024年12月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
21年12月(実) |
14,677 |
3,216 |
2,847 |
1,959 |
410.83 |
132.00 |
22年12月(実) |
18,253 |
4,226 |
3,730 |
3,381 |
638.25 |
200.00 |
23年12月(実) |
31,499 |
5,552 |
4,941 |
3,293 |
549.10 |
211.00 |
24年12月(実) |
44,707 |
7,700 |
6,848 |
4,713 |
759.38 |
292.00 |
25年12月(予) |
51,000 |
8,200 |
7,400 |
5,100 |
828.09 |
330.00 |
26年12月(計画) |
61,000 |
17,500 |
16,700 |
11,600 |
– |
– |
*単位:百万円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。26年12月(計画)は、「中期経営計画」より。
株式会社LAホールディングスの2024年12月期決算概要、中期経営計画、脇田社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2024年12月期決算概要
4.2025年12月期業績予想
5.脇田社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 24年12月期は大幅な増収増益、売上高・営業利益・経常利益は5期連続で過去最高を更新した。売上高は前期比41.9%増の447億円。新築不動産販売は、収益不動産のオフィスビル・商業ビル、新築分譲マンションの販売が好調だった。また、土地企画販売は都心部含めて6件を売却した。再生不動産販売は、高価格帯物件が好調だった。営業利益は同38.7%増の77億円。前期に続き、高付加価値戦略が奏功した。売上高営業利益率は同0.4ポイント低下したものの、売上・利益とも2度目の上方修正後の業績予想値を上回った。
- 25年12月期も増収増益を予想している。売上高は前期比14.1%増の510億円、営業利益は同6.5%増の82億円を予想。引き続き3事業部門とも中期経営計画の方針に基づいて事業を展開する。配当は前期比38円/株増配の330.00円/株の予定。予想配当性向は39.9%。
- 2023年2月14日に公表した「2023年~2025年中期経営計画」の各段階利益について、24年12月期に1年前倒しで計画を達成したため、新たに2026年までの計画を策定・発表した。「最終2026年12月期 売上高610億円、営業利益175億円」の計画についても確実に達成し、2027年以降は既存事業のさらなる成長に加え、24年8月より開始した「M&A支援事業」及び「企業投資事業」を含む新規事業をより積極的に展開し、新たな収益機会を創出する考えだ。
- 脇田社長に、24年12月期決算概要、中期経営計画などを伺った。「まずは、現在の市場環境や当社の競争優位性を最大限に活かし、2026年末までによりしっかりとした事業基盤の強化に取り組みます。その上で、2027年以降は、既存事業の成長を土台とし、不動産をコアとする新規事業への果敢な挑戦により、様々な収益機会を創出してまいります。中期経営計画の最終年度2026年12 月期は、「売上高610億円、営業利益175億円」を計画していますが、その先では、売上高1,000億円も見えてきたと考えています。」とのことだ。
- 前回のレポート(24年8月)で、「金融機関からのクレジットの上限が大きく引き上げられ、件数の拡大による業績拡大を追求することができるようになり、既にその効果は表れ始めている」との脇田社長のコメントであったが、結果的には2回の上方修正後の予想値を大きく上回る決算となった。この流れは足元も変わりはないということで、25年12月期の「売上高前期比14.1%増の510億円、営業利益同6.5%増の82億円」という予想は、かなり堅目の数値と見ていいようだ。同社ならではの事業展開を目指す「M&A支援事業」及び「企業投資事業」も開始したばかりではあるが、着実に実績を生みつつある。「売上高1,000億円」も視野に入ってきた同社の今後の動向を一段と注目していきたい。
1.会社概要
新築不動産販売、再生不動産販売、不動産賃貸の3つのビジネスを中核事業として展開。再生不動産販売の主力シリーズ「ラ・アトレ Premium-Renovation ®」は、富裕層のニーズにマッチした「上質」を提供する企画・デザインを特徴としており、価格も1億円~9億円台と、高価格・高付加価値を追求。他社が手掛けていない独自のポジションを確立している。九州・沖縄での事業展開にも注力中。
【1-1沿革】
同社の前身は、1990年12月に不動産の売買、販売代理、賃貸管理及びゴルフ会員権の売買を目的として設立された株式会社ラ・アトレにじゅういち(現 株式会社ラ・アトレ)。業容拡大に伴い2006年6月に大阪証券取引所「ヘラクレス市場」に上場した。
リーマンショックによる業績低迷に伴い、経営再建を託され、2012年2月、脇田栄一氏(現 株式会社LAホールディングス 代表取締役社長)が招聘される(2013年3月、株式会社ラ・アトレ代表取締役社長就任)。
20代より建築設計や不動産開発で実績を積み上げていた脇田氏のリーダーシップの下、資本増強、経営戦略の転換を進め、経営再建は順調に進捗。
2020年7月、株式会社ラ・アトレが単独株式移転により株式会社LAホールディングスを設立し、東京証券取引所JASDAQ(グロース)に株式を上場(株式会社ラ・アトレは2020年6月に上場廃止)、同時に、脇田氏が株式会社LAホールディングス 代表取締役社長に就任。
2022年4月、東証の市場再編により、JASDAQ(グロース)からグロース市場に移行した。

【1-2 企業理念】
以下のようなグループ企業理念、グループ経営理念を掲げている。
グループ企業理念 | “魅力ある商品・サービス”を創作し、多くの人々の“豊かな魅力ある社会”の実現に貢献します。 |
グループ経営理念
1 | 既成のビジネスモデルにとらわれず、新しい時代の新しい経済環境に即応し斬新で革新的な経営を考えることにより社員の叡智と創造力を高めもって自由闊達な社風作りと安定した成長を図るとともに社会との共存共栄を目指す。 |
2 | “住まいは人の心を創り人の生活を創る”ことを常に認識し、住まい本来の機能性や居住性の追求はもちろんのこと、地域社会や環境と調和し、時代や流行の変化を先取りする洗練された魅力的な商品を提供することにより、お客様のご要望に的確にお応えする経営を目指す。 |
3 | 地域社会の生活を尊重したクリーンでフェアーな企業活動を通じて、“心豊かになるような住まい”を提供することにより、地域の住環境創りに寄与する経営を目指す。 |
4 | 共に働く人々が、努力と研鑽を重ねることによって自分の能力を最大限に発揮することができ、生き生きと輝き夢のある楽しい人生を送れるような職場環境作りを目指す。 |
5 | “お客様の満足度と社員の意欲が企業を支えるものである”ことを念頭に、利益の適切な還元を図ることによって社会との調和のある経営を目指す。 |
【1-3 事業環境】
同社を取り巻く主要な事業環境は以下のとおりである。
◎不動産投資市場
2024年のJ-REITの物件取得額は、前年比で21.8%増加し、1兆3,446億円となり、2年連続で1兆円を上回った。

(同社資料より)
◎首都圏中古マンション市場
2024年首都圏における中古マンションの成約件数は、前年比3.4%増、2年連続で前年を上回った。成約価格は、平均4,890万円で前年比2.6%増、4年連続上昇し、好調に推移した。

(同社資料より)
◎高齢化の推移と将来推計
2010年をピークに総人口は減少に転じる一方、65歳以上の人口比率は2043年まで上昇傾向にあり、同社が積極的に投資しているヘルスケア施設の社会的ニーズはますます高まるものと思われる。

(同社資料より)
【1-4 事業内容】
報告セグメントは「新築不動産販売部門」「再生不動産販売部門」「不動産賃貸事業部門」の3セグメント。報告セグメントに含まれない事業セグメント「その他」には不動産売買仲介業務、他の事業から派生する事業等が含まれる。

また、「新築不動産販売部門」における「新築不動産販売」及び「土地企画販売」の、「再生不動産販売部門」における「リノベーションマンション」「インベストメント事業」のそれぞれ売上高、売上総利益を、決算説明資料等で開示している。
※セグメント利益は、各セグメントの売上総利益から販売費用及び営業外費用を差し引いたもの。

(1)新築不動産販売事業
①デベロップメント業務 | <概要>
◎収益不動産開発(株式会社ラ・アトレ) 居住用マンションなどの賃貸レジデンス及び店舗ビル、オフィスビルなどの都市型商業ビルの開発業務を行い、投資法人及び一般法人等へ販売する。
◎新築分譲マンション開発(株式会社ラ・アトレ、株式会社ファンスタイル) 新築分譲マンションの開発業務を行い、一般顧客等へ販売する。
<特徴> 土地の仕入れ及び商品開発に関与することにより、建物のトータルデザインからディテールに至るまでの意匠にこだわり、また、構造、耐震、耐火、省エネ、エコ、空気環境、遮音などの面にも配慮することができる。 仕入れ及び企画の立案を含めた商品開発から販売までの業務を行うことで、社会のニーズを先取りした”魅力ある商品・サービス”を創作している。
・賃貸レジデンス 既存と異なる価値観や非日常のエモーショナルな体験価値を提供する高級賃貸レジデンス「THE DOORS」などのブランド創出・確立を行っている。
・都市型商業ビル 未来の1等地というポテンシャルの高いエリアに注力し”小粒ながらキラリと輝く”をコンセプトにした「A*G(エ-ジ-)」シリーズ及び、コアな層の潜在的なニーズを掘り起こしたオフィスブランドとして”一般的なオフィスとは異なる住宅のようなオフィス”をコンセプトにした「THE EDGE」シリーズの継続的なブランド力の向上を図っている。
・新築分譲マンション 株式会社ラ・アトレの「ラ・アトレレジデンス」及び株式会社ファンスタイルの「レーヴ」シリーズを、ライフスタイル重視のターゲットに対し、”先鋭的なデザイン”、”独自の世界観”、”エッジのきいた”をキーワードに新しい価値を提供している。
これらの商品開発で土地情報を有効に活用して仕入れ機会を増大できるという点が強みである。 |
②土地企画販売業務
|
株式会社ラ・アトレがデベロップメント業務において用地として検討している土地の中で、最終的に商品開発の基準に達しなかったものの、比較的優良なものについて、同業他社に開発企画プランや一定の手続きを行ったうえで、土地と事業企画とをセットとして売却する。
買手にとっては、開発に要する時間を短縮することができるというメリットがある。 |
③新築マンション買取再販業務 | 株式会社ラ・アトレが他のデベロッパーが開発した物件について、立地、開発コンセプト、安全性、デザイン性、居住性、収益性などを検討したうえで、新築のまま買い取り販売する。
これまで培ってきたノウハウを生かして、物件に合わせたライフグッズ、ファニチャー、インテリア等をコーディネートし、住宅ローンのアドバイス及び紹介等も行うことによって付加価値をつけて販売する。 |
(2)再生不動産販売事業
①戸別リノベーションマンション販売業務 | <概要>
株式会社ラ・アトレ及び株式会社ラ・アトレレジデンシャルが中古マンションを戸別に仕入れ、リニューアル(戸別リノベーション※1)内容の企画・立案などにより洗練された住居として再生を図り、株式会社ラ・アトレレジデンシャルが一般顧客等へ販売する。
物件の仕入れは、立地、価格、規模等を吟味・厳選して、仲介・流通不動産業者、サービサー、金融機関を通じた債権処理の情報等を活用して戸別に買い取る。
<特徴> 中古マンションに対して新築同様の内装・設備等を施した機能性の高い戸別リノベーションマンションを、顧客に対して同じ条件の新築物件よりもリーズナブルな価格で販売することが可能。 高価格帯のプレミアム領域に注力し、1戸当たり1億円以上の「ラ・アトレ Premium-Renovation®」、10億円以上のハイグレードな邸宅「BILLION RESIDENCE®」、1戸当たり7,000万円以上1億5,000万円未満の「Hi▶La▶Re(ひらり)」と、コンセプトの異なる3つのマンションをシリーズ化し、他にはない立地の希少性と洗練された居住空間に仕上げ、魅力的な商品を提供している。
|
②1棟リノベーション分譲業務 | <概要>
株式会社ラ・アトレが企業所有の社員寮・社宅、首都圏の賃貸マンション等を対象として、建物1棟を取得後、全面的にリノベーションし、株式会社ラ・アトレレジデンシャルが一般顧客等へ戸別に販売する。
<特徴> 株式会社ラ・アトレの再生ノウハウを活用して建物全体に対してデューデリジェンスを実施。それに基づき専有部分だけでなく共用部分も含めて全面的に改装(1棟リノベーション※2、コンバージョン※3)することによって、建物の機能を大幅に刷新し、魅力的な分譲物件に仕立てている。 建物の管理計画、修繕計画、資金予算等を作成し、管理組合の組成、管理専門業者の選定など、入居後も安心して暮らせるように住環境の整備にも注力している。 |
③インベストメント事業
|
<概要>
株式会社ラ・アトレが、首都圏のオフィスビル、企業所有の社宅、賃貸レジデンス等を対象として、建物1棟を購入し、その後同社の再生ノウハウを活用して、建物全体に対して、より収益性を高めるための詳細なデューデリジェンスを実施する。
このデューデリジェンスに基づき建物管理等に関するコストマネジメントを行い、同時にコンバージョンや建物をリノベーションすることによって建物を刷新し、テナント・入居者の誘致能力を高めて収益力のアップ及びキャッシュ・フローの改善を図り、その後に売却(法人・個人投資家等)する。 |
(3)不動産賃貸事業
株式会社LAアセット及び株式会社ラ・アトレが固定資産として保有する不動産の賃貸管理、販売用不動産として所有する物件のテナント等の賃貸管理を行う。
自社で保有する不動産の賃貸については、ヘルスケア施設、レジデンシャルホテル、商業施設等を建設又は取得し、運用事業者等へ1棟ごと賃貸するものと、オフィスビル、賃貸レジデンスを建設又は取得し、個別に賃貸をするものなどがある。
※1:戸別リノベーション
建築後一定の時間が経過した中古マンションに対して、内装・間取り・住設機器等を見直すことによって機能性を高め、また新築同様の洗練された住居として再生すること。
※2:1棟リノベーション
価値の低下した建物を、建物の修繕履歴(トラックレコード)を含めて全面的に精査し、老朽化した設備を刷新したり建物に新たな機能を追加したりすることによって建物全体の価値を向上(バリューアップ)させること。
※3:コンバージョン
オフィスビルをマンションに変更したり、寮や社宅を商業系施設に変更したりするなどの、建物の用途変更を伴う改修を行うこと。
【1-5 特長・強み・競争優位性】
同社最大の競争優位性は、新築不動産販売および再生不動産販売それぞれにおいて、独自のポジショニングを確立している点である。
(1)新築不動産販売
開発規模に関しては、10-50億円の中規模開発に絞っている。
開発エリアについても、「未来の一等地」となるポテンシャルの高いエリアを発掘することに注力しており、それを可能にする情報収集力や目利き力に大きなアドバンテージを有している。
また、開発期間に関しては長期間ではなく、2-3年程度のプロジェクトに絞り、効率を重視している。
このように、特定のマーケットと特定のエリアに絞ることで、競争優位性を見いだしており、他社が手掛けにくいホワイトスペースを見つけ出すことで、独自のポジションを確立している。
これにより、「強固かつ安定した収益基盤の確立」と「事業リスクの抑制・分散」の両立を実現している。

(同社資料より)
また、近年はパートナー企業との共同事業を通じて、従来の事業規模を大きく上回る大規模開発プロジェクトへと事業領域を拡大している。

(同社資料より)
(2)再生不動産販売
主力シリーズの「ラ・アトレ Premium-Renovation®」は、富裕層のニーズにマッチした「上質」を提供する企画・デザインを特徴としてプレミアム感を向上させている。価格も1億円~9億円台と、高価格・高付加価値を追求している。
また、広さに関しては「100㎡以上」、エリアに関しては「都心3区」をターゲットとしており、他社が手掛けていない独自のポジションを確立している。加えて、新たな販売ネットワークの構築や人材採用および積極的な登用による販売力の強化により更なる優位性の確立を図っている。

(同社資料より)
【1-6 同業他社比較】
再生不動産販売を行っている主な上場企業との主要指標を比較した。
LAホールディングスは、売上高営業利益率は2位、ROEはトップと、脇田社長が目標としている収益性の高さが際立っている。
コード |
企業名 |
売上高 |
増収率 |
営業利益 |
増益率 |
営業利益率 |
ROE |
時価総額 |
PER |
PBR |
2975 |
スター・マイカ・ホールディングス |
64,061 |
+14.7% |
6,298 |
+14.0% |
9.8% |
12.8% |
30,056 |
8.5 |
1.2 |
2986 |
LAホールディングス |
51,000 |
+14.1% |
8,200 |
+6.5% |
16.1% |
28.6% |
41,575 |
8.0 |
2.3 |
3294 |
イーグランド |
30,000 |
+9.8% |
1,730 |
-14.1% |
5.8% |
17.9% |
9,287 |
8.6 |
0.9 |
8934 |
サンフロンティア不動産 |
100,000 |
+25.2% |
20,870 |
+18.6% |
20.9% |
15.3% |
94,780 |
6.7 |
1.2 |
8940 |
インテリックス |
46,365 |
+8.6% |
2,063 |
+121.6% |
4.4% |
3.5% |
7,636 |
5.6 |
0.6 |
*単位:百万円、倍。売上高・営業利益は今期予想、各社最新決算短信より。時価総額、PER、PBRは25年2月27日終値ベース。
【1-7 サステナビリティ】
ESG課題について、以下のような施策に取り組んでいく。

(同社資料より)
2.中期経営計画
2023年2月14日に公表した「2023年~2025年中期経営計画」の各段階利益について、24年12月期に1年前倒しで計画を達成したため、新たに2026年までの計画を策定・発表した。これについても確実に計画を達成し、2027年以降は既存事業のさらなる成長に加え、新たな収益機会を創出する考えだ。
【2-1 基本方針】
自社の目指す姿を、「社会のニーズや時代の変化に対応した「魅力ある」まちづくりの創造」「事業活動を通じた環境・社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献」「中長期での企業価値向上に向けた新たなビジネスモデルの構築」と認識し、事業課題として以下の3つを掲げている。
①既存事業の深化
②新規事業の創出
③M&A推進

(同社資料より)
【2-2 事業課題】
(1)既存事業の深化
独自の強みを最大限に生かした商品企画で、さらなる高付加価値を追求し、持続的な利益成長を実現する。
地方主要都市への事業展開を通して、地域活性化と地方創生を推進する。
*新築不動産販売事業
東京23区を中心に、名古屋、京都、福岡、沖縄でも住居系・商業系の収益不動産開発のプロジェクトが複数進行中である。
*再生不動産販売事業
1億円から9億円台の「ラ・アトレ Premium-Renovation®」シリーズの販売が好調に推移している。
10億円を超える新ブランド「BILLION RESIDENCE ®」の販売も強化している。
この2ブランドを核として高価格帯物件を強化し、プレミアム市場における高い付加価値を提供することによって、持続的な利益の拡大を目指す。

(同社資料より)
「BILLION RESIDENCE®」については、「ラ・アトレ Premium-Renovation® 」事業において長年をかけて培った実績・ノウハウと幅広い情報ネットワークにより厳選して供給する。
都心エリアにおいて、1戸当たり7,000万円以上1億5,000万円未満の「Hi▶La▶Re(ひらり)」も含めた複数プロジェクトを展開している。
*不動産賃貸事業
ヘルスケア施設を中心とした優良な賃貸資産取得による安定的な収益の確保と賃貸ポートフォリオの最適化を進めている。
社会的ニーズの高いヘルスケア施設へは、毎期20億円を目標に積極的な投資を実施する。事業規模を拡大していく上でフロービジネスだけでなく、安定的な収益の確保が見込めるストックビジネスによる収益基盤の強化が不可欠であり、特に利益率の高いヘルスケア施設に経営資源を集中する。

(同社資料より)
(2)新規事業の創出
24年8月、今後の持続的な成長及び中長期的な企業価値向上を図るため、中期経営計画の方針に基づき、新たな収益となる事業展開を目的とする新規事業として、「M&A支援事業」及び「企業投資事業」を開始すると発表した。
同社では以前より、M&A又は戦略的提携や、ファンドの設立・運営、ファンドへの出資等を通じて、日常的に多数の案件情報を入手し、多様な業種・業態に関する複数の案件につき検討又は交渉を順次進めている。
そうした中、これまでに蓄積したM&A及び企業投資のノウハウや構築してきたネットワーク、経営ノウハウ、多様な業種・業態に関する全国的な案件情報等を活かし、新たな収益基盤を確立し、これによる収益力の向上を図ることを目的に、新規事業として、両事業を開始することとした。
◎M&A支援事業
我が国においては、事業承継問題・国内市場縮小等を背景に、業種・業界を問わず M&Aが活発に実施されており、その関連・支援事業領域も拡大傾向にある。
このような状況の下、同社グループはM&Aを重要な成長戦略として位置付けており、M&A支援機関としての登録を行った。
2023年12月にはストームハーバー証券株式会社と業務協力覚書を締結した。
今後は、M&A支援アドバイザーとして、経営者層のネットワークやコミュニケーションを活用し、企業の成長戦略や市場状況を勘案し、最適な戦略的提案を行っていく。
業種を問わず、中堅・中小企業におけるM&Aを幅広く対象とするが、中でも、不動産を保有している企業等については、同社の経営ノウハウを活かし、保有資産の収益性向上又は効率的活用等を通じて、経営改善等を含めたサポートを実施する予定だ。
◎企業投資事業
2022年2月にBSPアセットマネジメント株式会社との共同出資により、「LA・BSPビジョンファンド投資事業有限責任組合」を設立した。2022年12月30日には、沖縄の不動産開発会社である株式会社ファンスタイルを完全子会社とし、九州エリアのベンチャー事業再生・事業承継ファンド及びベンチャーファンドへの出資も実施している。
今後、継続的な事業成長を実現するため、地方の中堅企業との連携を強化し、企業価値向上および事業規模の拡大に取り組む方針だ。
M&A候補先としては、「特定のマーケットにおいて高いシェアを有する中堅企業」「後継者不足など事業継承の課題を抱えている企業」「独自の商品・サービスを有し、且つ参入障壁の高い市場で優位性を持つ企業」などを対象としていく。
また、投資先となるファンドについては、多様な分野のミドル、レイター段階のベンチャー企業を対象とした次期ファンドの組成・運用を図るほか、九州エリアの強化をより一層進めるとともに、他エリアにおいてもベンチャー事業再生・事業承継ファンドおよびベンチャーファンドへの出資を推進する考えだ。
【2-3 コーポレート課題】
グループ経営基盤強化に向けて、以下のような課題を認識しており、それぞれの取組みを進めていく。
課題 |
取組み |
事業ポートフォリオの拡大 | 競争優位性の高い分野や継続的に高い成長が期待できる市場など、グループ経営資源を最大限に発揮できる新たな事業領域に挑戦し、引き続き事業ポートフォリオの拡大及び最適化を図る。 |
財務基盤の強化 | 継続的な利益成長を実現していく上で、財務基盤の最適化を図りながら将来の成長投資と株主還元の両立を実現していく。
自己資本比率20%以上を維持し、財務健全性および資本効率を向上させる。 |
経営指標の策定 | 「ROE20%以上」「配当性向40%」を目指す。 |
生産性の高い組織づくり | 個人の能力が発揮できる組織体制を構築することにより、高い組織力を生み出し、組織全体として生産性を向上させる。
専門性の高いスキル・ノウハウを持つ人材の積極採用・育成の強化を図る。 |
【2-4 数値目標】
(1)全社
「中期経営計画」の最終年度2026年12 月期は、「売上高610億円、営業利益175億円」を計画している。
2025 年12月期は同社グループ創業35 周年に当たる節目の年度であり、役職員一同、さらなる事業発展・企業価値の向上に邁進する考えだ。

20/12期 |
21/12期 |
22/12期 |
23/12期 |
24/12期 |
25/12期(予) |
26/12期(計画) |
|
売上高 |
13,757 |
14,677 |
18,253 |
31,499 |
44,707 |
51,000 |
61,000 |
営業利益 |
1,124 |
3,216 |
4,226 |
5,552 |
7,700 |
8,200 |
17,500 |
経常利益 |
978 |
2,847 |
3,730 |
4,941 |
6,848 |
7,400 |
16,700 |
当期純利益 |
650 |
1,959 |
3,381 |
3,293 |
4,713 |
5,100 |
11,600 |
EPS(円) |
123.58 |
410.83 |
638.25 |
549.10 |
560.3 |
816.4 |
– |
*単位:百万円
(2)セグメント別利益計画
23/12期 |
24/12期 |
25/12期(予) |
26/12期(計画) |
|
売上総利益 |
8,509 |
11,390 |
11,900 |
21,800 |
新築不動産販売部門 |
5,262 |
7,123 |
9,500 |
19,400 |
売上総利益率 |
34.4% |
26.9% |
25.6% |
41.2% |
再生不動産販売部門 |
2,635 |
3,582 |
1,950 |
1,950 |
売上総利益率 |
17.4% |
20.8% |
15.0% |
15.0% |
不動産賃貸事業部門 |
572 |
616 |
450 |
450 |
売上総利益率 |
56.4% |
62.6% |
50.0% |
50.0% |
その他 |
41 |
68 |
0 |
0 |
*単位:百万円
【2-5 今後の財務戦略】
◎総資産の成長イメージ
戦略的な成長投資と安定的な株主還元の両立を図りつつ、資本効率の向上に努め、総資産1,000億円を目指しながら、毎期高い利益成長を重ね自己資本比率20%以上を維持する(24年12月期の自己資本比率は25.2%)。
内部成長としては、フロー型ビジネスの不動産開発事業とストック型ビジネスの不動産賃貸事業の安定的な成長を追求する。
外部成長としては、シナジーが期待できる企業へのM&A又は戦略的提携のための成長投資を実施する。
【2-6 株主還元】
株主への利益還元を経営の重要課題の一つと考えている。
これまでは、配当性向の基本方針として、目標を「30%以上」としていたが、「40%」に引き上げた。
ラ・アトレ35周年及びLAホールディングス5周年を迎えるにあたり、「企業価値の持続的向上」と「利益還元の最大化」の実現を目指す。

3.2024年12月期決算概要
【3-1業績概要】
23/12期 |
構成比 |
24/12期 |
構成比 |
前期比 |
修正予想比 |
|
売上高 |
31,499 |
100.0% |
44,707 |
100.0% |
+41.9% |
+4.0% |
売上総利益 |
8,509 |
27.0% |
11,390 |
25.5% |
+33.9% |
– |
販管費 |
2,957 |
9.4% |
3,689 |
8.3% |
+24.8% |
– |
営業利益 |
5,552 |
17.6% |
7,700 |
17.2% |
+38.7% |
+7.0% |
経常利益 |
4,941 |
15.7% |
6,848 |
15.3% |
+38.6% |
+5.4% |
当期純利益 |
3,293 |
10.5% |
4,713 |
10.5% |
+43.1% |
+4.7% |
*単位:百万円。修正予想は24年11月公表の業績予想に対する比率。
大幅な増収増益、売上高、営業利益、経常利益は5期連続で過去最高を更新
売上高は前期比41.9%増の447億円。収益不動産のオフィスビル・商業ビル、新築分譲マンションの販売が好調だった。土地企画販売は都心部含めて6件を売却した。再生不動産販売は、高価格帯物件が好調だった。
営業利益は同38.7%増の77億円。前期に続き、高付加価値戦略が奏功した。売上高営業利益率は同0.4ポイント低下したものの、売上・利益とも2度目の上方修正後の業績予想値を上回った。

【3-2 セグメント別動向】
23/12期 |
構成比 |
24/12期 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
|||||
不動産販売事業 |
30,444 |
96.6% |
43,654 |
97.6% |
+43.4% |
新築不動産販売部門 |
15,301 |
48.6% |
26,434 |
59.1% |
+72.8% |
土地企画販売 |
1,550 |
4.9% |
13,434 |
30.0% |
+766.2% |
新築不動産販売 |
13,750 |
43.7% |
13,000 |
29.1% |
-5.5% |
再生不動産販売部門 |
15,142 |
48.1% |
17,219 |
38.5% |
+13.7% |
リノベーションマンション |
10,862 |
34.5% |
15,805 |
35.4% |
+45.5% |
インベストメント事業 |
4,279 |
13.6% |
1,414 |
3.2% |
-67.0% |
不動産賃貸事業部門 |
1,014 |
3.2% |
983 |
2.2% |
-3.0% |
売上高合計 |
31,499 |
100.0% |
44,707 |
100.0% |
+41.9% |
売上総利益 |
|||||
不動産販売事業 |
7,896 |
25.9% |
10,706 |
24.5% |
+35.6% |
新築不動産販売部門 |
5,262 |
34.4% |
7,123 |
26.9% |
+35.4% |
土地企画販売 |
221 |
14.3% |
2,879 |
21.4% |
+1202.7% |
新築不動産販売 |
5,040 |
36.7% |
4,244 |
32.6% |
-15.8% |
再生不動産販売部門 |
2,634 |
17.4% |
3,582 |
20.8% |
+36.0% |
リノベーションマンション |
1,825 |
16.8% |
3,013 |
19.1% |
+65.1% |
インベストメント事業 |
808 |
18.9% |
568 |
40.2% |
-29.7% |
不動産賃貸事業部門 |
571 |
56.4% |
616 |
62.6% |
+7.9% |
売上総利益合計 |
8,509 |
27.0% |
11,390 |
25.5% |
+33.9% |
*単位:百万円。売上高は外部顧客への売上高。利益の構成比は売上総利益率。決算短信等におけるセグメント情報のセグメント利益は、各セグメントの売上総利益から販売費用及び営業外費用を差し引いたもの。
(1)不動産販売事業
売上高は前期比43.4%増、売上総利益は同35.6%増。
①新築不動産販売部門
売上高は前期比72.8%増、売上総利益は同35.4%増。
新築分譲マンションでは、4棟が竣工し引渡しを開始した。
土地企画販売では都心部の高額物件含めて6件売却した。
収益不動産のオフィスビル「THE EDGE」シリーズ3棟および商業ビル「A*G」シリーズ2棟、新築分譲マンションを販売し、売上は過去最高を更新した。
②再生不動産販売部門
売上高は前期比13.7%増、売上総利益は同36.0%増。
「ラ・アトレPremium-Renovation®」シリーズの販売が好調に推移し、同シリーズの売上高は過去最高を更新。
インベストメント事業は東京・渋谷区の土地建物などの販売が完了した。
(2)不動産賃貸事業部門
売上高は前期比3.0%減、売上総利益は同7.9%増。
減収ではあったが、ヘルスケア施設等の保有資産が安定的に稼働した。
(2)各経営指標の目標
各経営指標(ROE、自己資本比率、配当性向)は23年12月期に続き、24年12月期も計画数値を超過した。
23年12月期目標 |
23年12月期実績 |
24年12月期目標 |
24年12月期実績 |
|
売上高総利益率 |
20%以上 |
27.0% |
20%以上 |
25.5% |
売上高経常利益率 |
10%以上 |
15.7% |
10%以上 |
15.3% |
自己資本比率 |
20%以上 |
24.6% |
20%以上 |
25.2% |
ROE |
20%以上 |
25.0% |
20%以上 |
28.6% |
配当性向 |
30%以上 |
38.4% |
30%以上 |
38.5% |
【3-3 財務状態と
キャッシュ・フロー】
◎主要BS
23年12月末 |
24年12月末 |
増減 |
23年12月末 |
24年12月末 |
増減 |
||
流動資産 |
49,880 |
63,141 |
+13,260 |
流動負債 |
19,859 |
24,785 |
+4,926 |
現預金 |
12,783 |
13,545 |
+762 |
短期有利子負債 |
17,321 |
20,433 |
+3,112 |
販売用不動産 |
15,693 |
18,041 |
+2,348 |
固定負債 |
26,137 |
28,330 |
+2,192 |
仕掛販売用不動産 |
20,463 |
29,317 |
+8,854 |
長期有利子負債 |
25,438 |
27,523 |
+2,084 |
固定資産 |
11,323 |
8,098 |
-3,225 |
負債合計 |
45,997 |
53,116 |
+7,119 |
有形固定資産 |
10,190 |
6,737 |
-3,453 |
純資産 |
15,212 |
18,131 |
+2,918 |
投資その他の資産 |
1,094 |
1,319 |
+225 |
利益剰余金 |
11,948 |
15,343 |
+3,395 |
資産合計 |
61,209 |
71,247 |
+10,037 |
負債純資産合計 |
61,209 |
71,247 |
+10,037 |
*単位:百万円
棚卸資産の増加などで、資産合計は前期末比100億円増加の712億円。
長短有利子負債の増加などで、負債合計は同71億円増加の531億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同29億円増加の181億円。
自己資本比率は前期末比0.6ポイント上昇し25.2%となった。
◎キャッシュ・フロー
23/12期 |
24/12期 |
増減 |
|
営業CF |
-3,202 |
-1,755 |
+1,447 |
投資CF |
-1,403 |
-708 |
+694 |
フリーCF |
-4,605 |
-2,464 |
+2,141 |
財務CF |
7,773 |
3,200 |
-4,572 |
現金同等物残高 |
12,689 |
13,426 |
+736 |
*単位:百万円
税金等調整前当期純利益の増加などで、営業CF及びフリーCFのマイナス幅は縮小した。
新株予約権の行使による株式の発行による収入の減少などで、財務CFのプラス幅は縮小した。
キャッシュ・ポジションは上昇した。
【3-4 トピックス】
◎定款の変更
25年2月、取締役会において定款の変更に関する議案を決議した。
(定款変更の目的)
ホールディングス体制への移行から約5年経過したことを契機に、事業内容の記載を整理するとともに、同社グループの事業が拡大及び多様化していることから、今後の新たな事業展開に機動的に対応するため、定款第2条(目的)について事業目的の追加及び変更を行う。
(主な変更の内容)
「新設」として以下の事業目的を追加した。
中期経営計画に基づいた「M&A支援事業」及び「企業投資事業」の開始に伴うものである。
* | M&Aに関する仲介、斡旋、コンサルティング及びアドバイザリー業務並びに国内外の各種企業及び各種事業への投資及び出資 |
* | 投資事業組合、投資事業有限責任組合等への投資、出資及びその管理運営業務 |
* | 不動産投資顧問業 |
* | DX(デジタルトランスフォーメーション)に関するサービス及びコンサルティング、情報処理サービス及び情報提供サービス並びに各種ソリューションサービスの提供 |
2025年3月28日に開催予定の第5回定時株主総会の決議を経て効力発生となる。
4.2025年12月期業績予想
【4-1 業績予想】
24/12期 |
構成比 |
25/12期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
44,707 |
100.0% |
51,000 |
100.0% |
+14.1% |
営業利益 |
7,700 |
17.2% |
8,200 |
16.1% |
+6.5% |
経常利益 |
6,848 |
15.3% |
7,400 |
14.5% |
+8.1% |
当期純利益 |
4,713 |
10.5% |
5,100 |
10.0% |
+8.2% |
*単位:百万円。予想は会社公表数値。
増収増益を予想
売上高は前期比14.1%増の510億円、営業利益は同6.5%増の82億円を予想。
引き続き3事業部門とも中期経営計画の方針に基づいて事業を展開する。
配当は前期比38円/株増配の330.00円/株の予定。予想配当性向は39.9%。
【4-2 各事業の取組】
①新築不動産販売部門
成長ドライバーとなる収益不動産開発事業では、商業系の商業ビル「A*G」シリーズ及びオフィスビル「THE EDGE」、住居系の高級賃貸レジデンス「THE DOORS」シリーズを積極的に展開し、競争優位性のある商品企画により更なる高付加価値化を追求するとともに、ブランド力向上と地方主要都市へのエリア拡大を図る。また、分譲マンション事業においては、「ラ・アトレレジデンス」ブランドを地方主要都市に展開するとともに、沖縄県において「レーヴ」シリーズのブランド事業拡大を図り、事業基盤の強化と競争優位性が発揮できる独自のポジションを確立する。
②再生不動産販売部門
主力である戸別リノベーションマンション販売に注力し、1戸当たり1億円以上の「ラ・アトレ Premium-Renovation®」シリーズを中心として、1戸当たり10億円以上のハイグレードな邸宅「BILLION RESIDENCE®」を展開。幅広い顧客層のニーズに対応した商品に加えて企画・デザイン力により、価格競争に巻き込まれることのない競争優位性の高い高付加価値の商品を供給し独自のポジションを確立する。
③不動産賃貸事業部門
社会的ニーズの高いヘルスケア施設への積極的な投資を進め、賃貸ポートフォリオの最適化を図り安定的な収益を確保するとともに、ヘルスケア施設の運営委託会社との最適なリレーションの構築と、更なる運営改善に注力し、高い収益力を維持する。
5.脇田社長に聞く
脇田社長に、24年12月期決算概要、中期経営計画、株主・投資家へのメッセージなどについて伺った。
Q:24年12月期決算についてコメント頂けますか?
上期決算の際にお話ししましたように、当社の財務状況やこれまでの実績をご評価いただき、金融機関からのクレジットの上限が大きく引き上げられました。
これまでの当社は件数というよりも、価格戦略など、物件ごとの収益性を引き上げて売上・利益を獲得していくのが基本路線でしたが、今回の資金調達力向上に伴い、従来では手掛けることのできなかったボリュームの案件をスピーディーに仕上げるなど、期中においても上積みが進み、売上・利益ともに大きく伸長させることができました。
「金利のある世界」になったことで、金融機関は融資先の選別も始めており、その点でも事業環境は当社にとっては、より有利なものとなっています。
25年12月期に入っても、同様の状況が続いています。
Q:中期経営計画についてコメントをお願いします。
2023年2月14日に公表した「2023年~2025年中期経営計画」の各段階利益について、24年12月期に1年前倒しで計画を達成することができましたので、新たに2026年までの計画を策定・発表しました。
2026年12月期は、「売上高610億円、営業利益175億円」を計画していますが、これについても確実に計画を達成し、2027年以降は既存事業のさらなる成長に加え、2024年8月より開始した「M&A支援事業」及び「企業投資事業」を含む新規事業をより積極的に展開し新たな収益機会を創出してまいります。
24年12月期の総資産は700億円を超えましたので、まずは800億円を目標としますが、1,000億円が射程圏に入ってきました。
高付加価値戦略を継続しながら、金融機関のクレジット拡大を受け、大型案件も着実に拡大していくと考えています。
Q:開始したばかりではありますが、「M&A支援事業」及び「企業投資事業」の実績、進捗などをお聞かせください。
「M&A支援事業」においては、先般、当社が仲介した建設会社同士のM&Aが基本合意に至りました。
当社のM&A仲介のスタイルは、中小企業のネットワークの中から直接オーナー同士、トップ同士のパイプラインをつなぐというものです。大手のM&A仲介会社のように件数を重ねることで利益を出すのではなく、1件1件丁寧に仕上げていきますので、当事者同士も安心して交渉ができる点が特徴であると考えています。
私のネットワークによるマッチングだけでなく、デューデリジェンスなどM&Aの実務において豊富な経験を持つスタッフもおりますので、盤石な体制でM&Aのお手伝いを行ってまいります。
建設業界は人手不足が大きな課題となっていますので、今後も同様な案件が多く生まれてくるものと考えています。
「企業投資事業」については、沖縄の不動産開発会社「株式会社ファンスタイル」の子会社化とその後の取組みが重要なケーススタディとなっています。
ファンスタイル社は沖縄ナンバーワンの会社ではあるのですが、当社の子会社となったことに加え、ブラッシュアップを行ったことで、クレジットの上限が大きく引き上げられました。当社の地域戦略のお話をするうえでファンスタイル社のケースは非常に明快なメッセージとなっています。
こうした沖縄・九州での実績を基に、現在、北海道での実績づくりに向け、粛々と取り組んでいます。
当社はグループ経営理念の一つとして、「地域社会の生活を尊重したクリーンでフェアーな企業活動を通じて、“心豊かになるような住まい”を提供することにより、地域の住環境創りに寄与する経営を目指す。」と謳っているように、地域活性化を極めて重要なテーマと位置付けています。
これまで地域金融機関や地域の有力企業との関係構築を始めとした様々な展開や取り組みを進めてきた中で、真に地域の問題を解決し、地域活性化に繋げるためには、必ずしも当社や当社のグループ会社が中心にいる必要はない、地域活性化の主役となるべき企業が成長していくためには、場合によっては、一時的には同業他社の建設会社と組む方が適切なケースもあるかもしれないと考えています。
そうした点を柔軟に考え、対応することで各地域の企業や金融機関との接点を増やし、関係も深化させていくことが、中長期的には当社グループの企業価値向上に繋がると考えています。
ですので、新規事業である「M&A支援事業」及び「企業投資事業」は、単に仲介の手数料を稼ぐとかキャピタルゲインを得るといったものではなく、地域活性化を実現する中で、様々なパターンで成長を取り込んでいくという、当社ならではの事業展開である点をご理解いただきたいと思います。
Q:ありがとうございました。最後に株主・投資家の皆様にメッセージをお願いいたします。
まずは、現在の市場環境や当社の競争優位性を最大限に活かし、2026年末までによりしっかりとした事業基盤の強化に取り組みます。その上で、2027年以降は、既存事業の成長を土台とし、不動産をコアとする新規事業への果敢な挑戦により、様々な収益機会を創出してまいります。
「中期経営計画」の最終年度2026年12 月期は、「売上高610億円、営業利益175億円」を計画していますが、その先、売上高1,000億円も見えてきたと考えています。
また、直近の新たな動きとしては、パートナー企業との共同事業にも取り組み始めました。
当社の総資産は着実に拡大していますが、自己資本比率とのバランスの中で事業を推進するとなると、やはり当社単体で100億円規模のプロジェクトを手掛けるのはまだリスクがあります。
そこで、「モノづくり」のノウハウと実績が豊富な当社が案件立ち上げ時に全部セットアップし、その後ファンドなどパートナー企業が資金を入れてプロジェクトを完成させていくという取り組みを始めました。
当社としてはオフバランスで大規模プロジェクトを展開することができ、売上・利益を更に積み上げていくことができるわけです。
常に独自性を追求して着実な成長、時価総額の拡大を目指してまいりますので、これからも是非応援していただきたいと思います。
6.今後の注目点
前回のレポート(24年8月)で、「金融機関からのクレジットの上限が大きく引き上げられ、件数の拡大による業績拡大を追求することができるようになり、既にその効果は表れ始めている」との脇田社長のコメントであったが、結果的には2回の上方修正後の予想値を大きく上回る決算となった。
この流れは足元も変わりはないということで、25年12月期の「売上高前期比14.1%増の510億円、営業利益同6.5%増の82億円」という予想は、かなり堅目の数値と見ていいようだ。
同社ならではの事業展開を目指す「M&A支援事業」及び「企業投資事業」も開始したばかりではあるが、着実に実績を生みつつある。「売上高1,000億円」も視野に入ってきた同社の今後の動向を一段と注目していきたい。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 5名、うち社外取締役2名(うち独立役員2名) |
監査役 | 3名、うち社外監査役2名(うち独立役員2名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2024年5月23日
<基本的な考え方>
当社は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)とは、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーに対する社会的責任を果たすための企業経営の基本的な枠組みであると理解しております。今後もより良い経営基盤の確立に注力して、コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施に取り組んでまいります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

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