和田興産(8931) 分譲マンション事業は大幅増収増益
和田 剛直 会長 |
溝本 俊哉 社長 |
和田興産株式会社(8931) |
企業情報
市場 |
東証スタンダード市場 |
業種 |
不動産業 |
会長 |
和田剛直 |
社長 |
溝本俊哉 |
所在地 |
兵庫県神戸市中央区栄町通4-2-13 |
決算月 |
2月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(自己株式を控除) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
967円 |
11,099,752株 |
10,733百万円 |
8.6% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
50.00円 |
5.2% |
171.17円 |
5.6倍 |
2,574.79円 |
0.38倍 |
*株価は4/24終値。各数値は23年2月期決算短信より。発行済株式数は23年2月末の発行済株式数から自己株式を控除。
非連結業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2020年2月(実) |
40,093 |
3,290 |
2,442 |
1,781 |
160.49 |
35.00 |
2021年2月(実) |
39,806 |
2,737 |
1,918 |
1,267 |
114.22 |
35.00 |
2022年2月(実) |
41,785 |
3,883 |
3,162 |
2,337 |
210.55 |
40.00 |
2023年2月(実) |
42,712 |
4,387 |
3,607 |
2,382 |
214.61 |
50.00 |
2024年2月(予) |
39,000 |
3,600 |
2,800 |
1,900 |
171.17 |
50.00 |
* 予想は会社予想。単位:百万円。
和田興産(株)の2023年2月期決算の概要と2024年2月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画(24/2期~26/2期)
3.2023年2月期決算概要
4.2024年2月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:ESG活動>
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 23/2期は前期比2.2%の増収、同13.0%の営業増益。戸当たり平均価格が上昇したことや高収益プロジェクトが増加したことなどが寄与し、分譲マンション事業で大幅な増収増益となった。一方で、販売用収益物件の引渡戸数が減少した影響などにより戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業では減収減益となった。その他、不動産賃貸事業においても、賃貸物件の売却や大規模修繕を実施した影響などにより減収減益となった。
- 24/2期の会社計画は前期比8.7%の減収、同17.9%の営業減益の見通し。主力の分譲マンション販売事業において、引渡戸数は増加するものの、戸当たり平均価格が大幅に低下する影響により売上高とセグメント利益が前期比で減少する見込みである。一方、戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業においては、前期に引渡戸数を抑制したこともあり売上高が前期比で増加する見込みである。また、不動産賃貸収入事業では、販売用収益物件を売却する影響を見込み、概ね前期並みの売上を計画している。年間配当は、前々期と比べ10円増配の前期と同額の1株当たり年50円を予定。予想配当性向は29.2%となる見込み。
- 中期経営計画を発表した。数値計画では、24/2期~26/2期において直近3ヵ年実績合計の利益水準の達成を目指している。24/2期は前期比で減収減益の計画となっており、中期経営計画の達成のためには、中期経営計画の2年目と3年目の利益水準を高める必要があり、同社の業績の先行指標である契約済未引渡残高の拡大が不可欠である。24/2期上期末で契約済未引渡残高をどこまで積み上げることができるのか注目される。更に、今期は仕入戸数が減少する計画となっているが、これは採算性を重視し厳選を行っている影響である。成長のためには仕入の拡大も必要である。今後の仕入戸数の状況にも注目したい。
1.会社概要
明治32年(1899年)創業の老舗不動産会社。兵庫県神戸市・明石市・阪神間を主要地盤に、マンションや戸建て住宅の分譲、不動産賃貸及び土地有効活用等、地域密着型の不動産事業を展開。同社は用地仕入と企画に特化し、設計・建築・販売業務を他社に委託している。ブランド名「ワコーレ」を冠する分譲マンションは30戸~50戸程度の中規模マンションが中心だが、近年、大型マンション開発にも取組んでいる。また、上記事業エリアに近接する大阪府内、姫路市へのエリア拡大も進めている。加えて、マンションギャラリーの常設化により、価格競争力と利益率の向上を実現している。
神戸市内供給棟数 25年連続第1位、近畿圏供給棟数 第3位(いずれも2022年)。2023年2月末現在の累積供給実績は539棟20,802戸(着工ベース)。
1899年1月、神戸市で不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、1979年9月に和田興産(株)に改組し、1991年3月より自社ブランドである「ワコーレ」分譲マンション事業を本格的に開始した。
【企業理念-共生(ともいき) : 自分の生き方が他の人の幸せにつながる-】
人と人とのつながりを大切に、共に支え合い、自分の生き方が他の人の幸せにつながることを歓びとする「共生(ともいき)」の理念。同社はこの想いのもと、プロダクトコンセプトとして「PREMIUM UNIQUE (プレミアムユニーク)」を掲げ、住まう方にとってのオンリーワン(かけがえのない)の住まいづくりを目指している。同社は、いつまでも変わらぬ愛着と、住まいとしての価値を誇れる、住まう方にとっての「プレミアムユニーク」を神戸発・神戸ブランドとして発信していきたいと願っている。
(1)事業セグメント
「ワコーレ」ブランドで展開する(1)分譲マンション販売、「ワコーレノイエ」ブランドで展開する(2)戸建て住宅販売(販売は両事業共に外部委託)、収益物件や宅地等の開発・販売を手掛ける(3)その他不動産販売、賃貸マンション(ブランド名「ワコーレヴィータ」他)、店舗、駐車場等の賃貸を行う(4)不動産賃貸収入、及び解約手付金収入、仲介手数料収入、保険代理店手数料等の報告セグメントに含まれない(5)「その他」に区分される。
分譲マンション販売事業(23/2期の売上構成比87.5%)
分譲マンション販売事業は、売上の8割程度を占める同社の主力事業である。日本有数の住宅地である神戸・明石地区(兵庫県神戸市、明石市周辺)、阪神地区(兵庫県芦屋市、西宮市、尼崎市、伊丹市、宝塚市)を主要エリアとし、大手マンションデベロッパーと競合の少ない30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に「ワコーレ」ブランドで展開している。最近では100戸を超える大型物件も年間1~2棟手掛けている。人気の高いエリアにフォーカスし、同一地域で異なるタイプのマンションを供給することで、消費者の多様なニーズの取り込みと高い販売効率を実現する販売戦略、常設マンションギャラリーで販売することで販促費を抑制する戦略等、独自の地域密着戦略で効率的な事業モデルを確立している事が強み。また、近年では神戸・阪神間に隣接する大阪府北摂地域や大阪市内、兵庫県姫路市へのエリア拡大で新たな可能性を追求している。
23/2期プロジェクト事例
(同社2023/2期決算説明資料より)
「ワコーレ ザ・神戸旧居留地レジデンスタワー」は、利便性の高い中心市街地での100戸を超える大型物件であり23/2期の業績へ大きく寄与したプロジェクトである。「ワコーレ夙川羽衣町」は、坪単価約400万円、戸当たり平均でも約1億2千万円と阪神間の高級立地の中でも、高額の物件となっている。「クレヴィアシティ西神中央」は、神戸市の再開発事業で神戸市営地下鉄「西神中央駅」駅から徒歩3分と駅近であり、同社を含めた4社による共同事業である。
戸建て住宅販売事業(23/2期の売上構成比2.6%)
2007年より「ワコーレノイエ」ブランドで、神戸市・阪神間を中心に北摂地域や近年子育て世帯に人気の高い明石市へも展開し、10戸程度の中小規模の宅地造成開発を行っている。用地仕入れのネットワークを活かし、デザイン面の配慮や環境や災害などへの備えも含めた付加価値重視による開発を進めている。数多く寄せられる多様な用地情報の中には、立地、面積、地形等の面で戸建分譲に適した案件も多い。また、分譲マンションの事業期間が2年弱であるのに対して当事業は1年程度と短いため資金効率も高く、分譲マンション竣工の谷間を埋める事ができる。街並み造りを基本とする開発コンセプト、分譲マンション事業で培ったデザイン性や設計・企画力等でパワービルダーとの差別化を図っている。
戸建て住宅販売の事例
(同社2023/2期決算説明資料より)
その他不動産販売事業(23/2期の売上構成比2.6%)
鉄骨アパートや木造アパート等の企画開発に加え、マンション用地や戸建て用地の素地売りなどを含め開発用地等の出口戦略における選択肢の確保に寄与している。物件情報を有効活用する機能を担う他、資産の入替えに伴う賃貸物件(棚卸資産)の売却収益も当セグメントに計上される。近年は販売用小型収益物件(鉄骨・木造アパート)の販売が好調に推移している。
その他不動産販売の事例
(同社2023/2期決算説明資料より)
不動産賃貸事業(23/2期の売上構成比7.1%)
賃貸事業は、住居系を中心に、店舗・事務所等、駐車場、トランクルーム等も保有している。安定的なキャッシュ・フローが得られるビジネスとして創業時より継続する事業であり、市況に左右されがちな分譲マンション事業のウエイトが高い同社にあって、収益の安定化に寄与している。これらの賃貸物件は、既存物件の取得が中心で、長期保有を前提に固定資産へ計上し賃貸収入を得ている。その一方で、その他不動産販売事業における鉄骨等のアパートについては販売用としてたな卸資産へ計上するものの、売却期間までに得られる賃貸収入は不動産賃貸収入セグメントに計上され、近年の当該事業の売上高の増加に寄与している。また、将来的に分譲開発案件へ転換するケースも視野に入れている。稼働率は95%超の高水準を維持している(駐車場を除く)。2023年2月末現在の資産構成は、レジデンス77.9%、店舗・事務所等19.1%、駐車場0.5%、トランクルーム他2.5%となっている。
不動産賃貸事業の事例
(同社2023/2期決算説明資料より)
報告セグメントには含まれないその他の事業セグメントがあり、解約手付金収入、保険代理店手数料収入及び仲介手数料等がある(23/2期売上構成比0.2%)。
(2)和田興産の強み
日本有数の住宅地が事業エリア
日本有数の住宅地である神戸、明石、阪神間を主要な事業エリアとする事で旺盛な住宅需要を取り込むと共に情報力で比較優位を確立しており、地域に根差したコミュニティづくりでも定評がある。
(同社2023/2期決算説明資料より)
関西における「ワコーレ」ブランドの浸透
関西において「ワコーレ」ブランドは浸透しており、そのブランド力は大手マンションデベロッパーに引けを取らない。日本経済新聞社大阪本社が実施した第25回(2022年) マンションブランドアンケートにおいて、「個性がある」ブランド部門で4位と「親しみがある」ブランド部門で2位にランクされた。
(同社2023/2期決算説明資料より)
徹底したリスク管理により財務の健全性を維持
リスク管理を徹底する事で財務の健全性を維持しており、金融機関との取引もバランスがよく、かつ、安定している。この結果、多くの企業が淘汰されてきた不動産業界にあって、創業から120年以上の社歴の中で赤字計上はリーマン・ショックの影響を受けた10/2期のみ。安定的な配当も継続している。
大手との差別化に成功・事業エリア拡大による成長余地
近畿圏では、リーマン・ショック後の不動産不況で中堅・中小のマンション事業者の淘汰が進み、大手不動産会社や鉄道系不動産会社等に絞られてきたが、これらの不動産会社は大型物件や沿線開発を得意とするため、30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に展開する同社とは用地取得等で競合するケースが少ない。ただ、同社は更なる業容拡大に向け、既存エリアにおいて大型物件の開発に取り組むと共に、既存事業エリアと近接する兵庫県姫路市や大阪府内へ事業エリアを拡大中である。
(同社2023/2期決算説明資料より)
マンションギャラリーの常設化
同社は、1つの常設マンションギャラリーで複数物件を販売することからコスト面で優位に働く。また、同時販売を行うため顧客に対して幅広い選択肢の提供が可能となっている。
(同社2023/2期決算説明資料より)
2.中期経営計画(24/2期~26/2期)
同社は、今後3年間の中期経営計画を発表した。不動産業を取り巻く環境がより一層変化のスピードを速める中、重要課題が山積している。こうした環境下、同社では、より一層企業の成長を促し、持続可能な企業を目指すためには、新たな組織風土を構築することが必要不可欠であると考えている。これらの基本となる考え方について、行動指針という形で新たに明確化を図った。
【行動指針 (Wada-Way)】
自主自律 | 主体的に物事を捉え、自らが責任感を持って行動する |
唯一無二 | 一人ひとりの個性を活かし、価値ある独創で地域を彩る |
迅速果断 | スピード感を持った事業への取組み |
相互信頼 | チームワークとコミュニケーション(建設的な議論) |
【全社基本方針】
テーマ VISION | 将来を展望し、「地域に根ざした総合不動産業」への道筋を創る |
目標 | ◆直近3ヵ年の実績合計の利益水準を上回る
◆収益構造の転換を進め、事業セグメントの最適化を図る |
重点戦略 | ◆新たなこと(地域、事業、分野等)へ積極的に挑戦しつつ、事業の柱づくりを進める
◆内向き志向から外向き志向への転換。人材戦略、アライアンスの有効活用 ◆社会的課題の解決に向けたソリューション機能の充実と育成(ESG、SDGsの目線) |
【数値計画・KPI】
<数値計画>
21/2~23/2期合計 |
24/2~26/2期合計 |
|
売上高 |
1,243 |
1,224 |
営業利益 |
110 |
118 |
経常利益 |
87 |
94 |
当期純利益 |
60 |
64 |
*単位:億円。
<KPI>
カテゴリー |
指標項目 |
数値目標 |
収益性・効率性 | ROE(自己資本当期純利益率) | 8%以上 |
健全性・安全性 | D/Eレシオ(有利子負債資本倍率) | 2倍以内 |
【セグメント別の事業展開】
◎分譲マンション事業-当社の強みを生かしつつ、足元の環境を踏まえて成長機会を創造
強み | 地元地域に精通、圧倒的な存在感・ブランド力、常設マンションギャラリーを活用した販売力 |
外部環境 | 需給の安定化、世帯数の増加(世帯当たり人員の減少)、建築コスト増加 |
成長機会, 事業戦略 | 地域拡充、共同事業(JV)への取組み、再開発 |
引渡戸数目標 | 2,000戸目処(3期間合計)、保有ランドバンク 約2,600戸(2023年2月期末時点) |
◎戸建て事業-ワコーレブランドを活用し、分譲マンション事業を補完
事業戦略 | 重点エリアの設定(神戸市以西の設定)、建築コスト上昇への対応、自由設計住宅の取組み |
引渡戸数目標 | 前3期間の実績に対して1.5倍増。第一段階として年間50戸体制の確立 |
◎不動産賃貸事業-創業時から続く事業
強み | レジデンス系中心により収益の安定性を確保。中小型物件を中心にリスク分散、恒常的に95%超の高稼働率 |
成長機会, 事業戦略 | 既存築古物件の建替え・他事業への転用。借地物件の取組み、プロパティタイプの拡充 |
保有戸数目標 | 計画最終年度で約2,200戸の実現 |
◎販売用収益物件-ここ数年間における成長分野。インカム、キャピタルゲインで収益を安定確保
強み | これまで培った用地仕入・賃貸付けのネットワークを最大限活用。マンションに不向きな土地でも
開発可能 |
成長機会, 事業戦略 | 建築コストの上昇に鑑み最適用地を厳選。保有年数の最適化(売却時期の検討) |
引渡戸数目標 | 販売戸数は600戸超(3期間合計)、保有戸数800戸前後 年間賃貸収入6億円 |
◎その他事業方針
◆2023年4月組織改正により、CS事業部を設置。既存顧客からのニーズを汲み上げビジネス機会の創造に着手
◆従来のアライアンス先との関係強化を図り、協業体制により新たなビジネスモデルの構築を図る
【SDGs、ESG】
<ガバナンスの強化>
項目 |
具体的取組方針 |
取締役会等の責務 | ◆実効性評価の実施による取締役会における議論の活性化
◆取締役の報酬制度の見直し(退職慰労金廃止・業績連動報酬導入) ◆スキルマトリクスに基づく取締役会の機能強化 ◆取締役メンバーの多様性確保(事業分野、専門性、性別、独立性) |
人的資本投資 | ◆人材の多様性確保に向けた女性管理職の登用、拡充
◆社員の成長に資する新評価制度の定着化、研修制度の拡充 |
<サステナビリティ>
サステナビリティ基本方針の策定 ・環境性能への対応 ・古民家再生事業への取組み、SmaGOの設置
(同社2023/2期決算説明資料より)
【利益配当方針】
◆会社の継続性及び収益性を確保するため、既存事業及び新規事業への再投資を中心としつつ、株主還元策の拡充及びESG、SDGs等の観点も含めて利益の配分方針の明確化を図る。
項目 |
水準 |
概要 |
事業再投資 |
50%~70% |
収益性、効率性及び市場動向の把握を通じ、成長性等も加味して既存事業への再投資を図る |
配当性向 |
20%~30% |
株主への適正な還元が求められるなか、30%の配当性向を目指す |
サステナブル関連 |
10%~20% |
新たな事業領域への投資も含めて環境面への対応、人的資本への投資も本項目を投資原資とする |
3.2023年2月期決算概要
(1)非連結業績
22/2期 |
構成比 |
23/2期 |
構成比 |
前期比 |
期初予想 |
予想比 |
|
売上高 |
41,785 |
100.0% |
42,712 |
100.0% |
+2.2% |
42,000 |
+1.7% |
売上総利益 |
7,986 |
19.1% |
8,387 |
19.6% |
+5.0% |
– |
– |
販管費 |
4,102 |
9.8% |
3,999 |
9.4% |
-2.5% |
– |
– |
営業利益 |
3,883 |
9.3% |
4,387 |
10.3% |
+13.0% |
3,700 |
+18.6% |
経常利益 |
3,162 |
7.6% |
3,607 |
8.4% |
+14.1% |
2,900 |
+24.4% |
当期純利益 |
2,337 |
5.6% |
2,382 |
5.6% |
+1.9% |
2,000 |
+19.1% |
* 数値には株式会社インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。
* 単位:百万円。
* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
* 費用項目の▲は費用の増加を示す。
前期比2.2%の増収、同13.0%の営業増益
売上高は前期比2.2%増の427億12百万円。売上面では、主力の分譲マンション事業で戸当たり平均価格が上昇したことや高収益プロジェクトが増加したことなどが寄与し前期比で増加した。一方、販売用収益物件の引渡戸数が減少した影響などにより戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業では前期比で減少した。その他、賃貸収入事業においても、賃貸物件の売却や大規模修繕を実施した影響などにより前期比で減少した。今後の売上高の先行指標となる2023年2月末の契約済未引渡残高は前期末比17.4%減の358億85百万円となったものの、引き続き高水準を維持している。
営業利益は前期比13.0%増の43億87百万円。利益面でも、戸当たり平均価格が上昇したことや高収益プロジェクトが増加したことなどにより分譲マンション事業において前期比増加したものの、引渡戸数が減少した影響などにより戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業では前期比で減少した他、大規模修繕を実施した影響などにより不動産賃貸事業においても前期比で減少した。売上総利益率は前期比0.5ポイント上昇の19.6%と収益性の向上が図られた。また、売上高が増加する中、販管費の削減が図られたことにより、売上高営業利益率も10.3%と前期比1.0ポイント上昇となった。その他、営業外収益で出資金運用益の計上があった他、保険解約返戻金が増加したことに加え、営業外費用で支払利息が減少したことなどにより、経常利益は前期比14.1%増と営業利益の増加率を上回った。一方、特別利益で固定資産売却益が減少したことに加え、特別損失で固定資産除却損が増加したことなどにより当期純利益は、前期比で1.9%の増加にとどまった。
期初予想との差異要因
23/2期の着地は、期初予想に対し、売上面で1.7%上回り、営業利益で18.6%、経常利益で24.4%上回った。分譲マンション事業は販売が好調に推移し、引渡計画を上回った結果、売上高が計画を上回った。好採算物件も多く、利益面でも会社計画を上回った。また、賃貸収入事業でも高稼働率を維持しており、売上高、利益ともに計画を上回った。一方、その他不動産販売事業は売却予定物件を翌期に持ち越したため、売上高、利益ともに計画を下回った。
営業利益の変動要因
22/2期 営業利益 |
3,883 |
分譲マンションの利益増加 |
+1,388 |
戸建て住宅の利益減少 |
-134 |
その他不動産販売の利益減少 |
-492 |
賃貸収入減少 |
-128 |
賃貸物件の原価増加 |
-242 |
その他手数料収入等の増加 |
+10 |
販管費の減少 |
+102 |
23/2期 営業利益 |
4,387 |
* 単位:百万円
(2)セグメント別動向
22/2期 |
構成比 |
23/2期 |
構成比 |
前期比 |
|
分譲マンション販売 |
30,960 |
74.1% |
37,394 |
87.5% |
+20.8% |
戸建て住宅販売 |
2,239 |
5.4% |
1,103 |
2.6% |
-50.7% |
その他不動産販売 |
5,346 |
12.8% |
1,099 |
2.6% |
-79.4% |
不動産賃貸収入 |
3,151 |
7.5% |
3,022 |
7.1% |
-4.1% |
その他 |
88 |
0.2% |
92 |
0.2% |
+3.5% |
売上高 |
41,785 |
100.0% |
42,712 |
100.0% |
+2.2% |
分譲マンション販売 |
3,070 |
9.9% |
4,503 |
12.0% |
+46.7% |
戸建て住宅販売 |
90 |
4.0% |
2 |
0.2% |
-97.3% |
その他不動産販売 |
422 |
7.9% |
57 |
5.2% |
-86.4% |
不動産賃貸収入 |
1,123 |
35.6% |
715 |
23.7% |
-36.3% |
その他 |
73 |
82.2% |
83 |
90.3% |
+13.7% |
調整額 |
-895 |
– |
-974 |
– |
– |
営業利益 |
3,883 |
9.3% |
4,387 |
10.3% |
+13.0% |
* 単位:百万円。営業利益の構成比は売上高利益率。
* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
◎分譲マンション販売
売上高373億94百万円(前期比20.8%増)、セグメント利益45億3百万円(同46.7%増)。開発基盤となる用地価格や建築コストが上昇しているものの、住宅ローン金利の低水準や住まいに利便性を求める傾向が強まっていることから、分譲マンション市場は比較的堅調に推移した。こうした環境下、「ワコーレザ・神戸旧居留地レジデンスタワー」など681戸の引渡を行った(前期比2.3%増)。戸当たり平均価格が55百万円と前期比で約9百万円上昇した。売上総利益率は、前期比0.6ポイント上昇の18.7%とより一層の収益性の向上が図られた。
その他のKPIは、発売戸数672戸(前期比6.7%減)。契約戸数644戸(同16.7%減)、契約済未引渡戸数792戸(同4.5%減)。
仕入戸数は、964戸(同48.5%増)となった。23年2月末時点の仕入済未発売プロジェクト数は30棟・1,411戸。地域別の内訳は、神戸市21棟・1,066戸、阪神間4棟・156戸、明石市・姫路市1棟・42戸、大阪府4棟・147戸。
【事業のKPI】
22/2期 |
前期比 |
23/2期 |
前期比 |
|
引渡戸数(戸) |
666 |
-1.6% |
681 |
2.3% |
戸当たり平均価格(百万円) |
46 |
-1 |
55 |
9 |
発売戸数(戸) |
720 |
-19.8% |
672 |
-6.7% |
契約戸数(戸) |
773 |
16.4% |
644 |
-16.7% |
契約済未引渡戸数(戸) |
829 |
14.8% |
792 |
-4.5% |
仕入戸数(戸) |
649 |
8.0% |
964 |
48.5% |
◎戸建て住宅販売
売上高11億3百万円(前期比50.7%減)、セグメント利益2百万円(同97.3%減)。新規発売物件を中心に契約獲得に向けた販売活動に注力した。好調な分譲マンション販売を受け販売を来期に持ち越したことなどが影響し、引渡戸数が前期比で減少した。引渡戸数は19戸(前期39戸)、期中契約高は28戸・14億37万円(前期34戸19億72百万円)、契約済未引渡戸数は11戸・5億1百万円(前期2戸・1億67百万円)。売上総利益率は、前期比1.3ポイント上昇の14.4%となった。
◎その他不動産販売
売上高10億99百万円(前期比79.4%減)、セグメント利益は57百万円(同86.4%減))。賃貸マンション・宅地等69戸(前期253戸)を販売した。好調な分譲マンション販売を受け販売を来期に持ち越したことなどが影響し、販売用収益物件の引渡戸数が減少したことなどが影響した。プロジェクトの内訳は、開発関連3件・1億59百万円(前期:6件・8億27百万円)、販売用収益物件2件・9億29百万円(同:19件・32億68百万円)、その他1件・10百万円(同:1件・12億50百万円)。販売用収益物件については、鉄骨収益物件1件・21戸、RC収益物件1件・48戸を販売した。また、開発中物件は、期末時点で72件・1,076戸(前期末:63件・956戸)となった。
期中契約高は29戸・3億79百万円(前期314戸・51億1百万円)、契約済未引渡戸数は30戸・9億23百万円(前期70戸・16億43百万円)。売上総利益率は、前期比2.4ポイント上昇の14.6%となった。
【その他不動産販売の内訳】
22/2期 |
23/2期 |
||||
プロジェクト数 |
売上高 |
プロジェクト数 |
売上高 |
前期比 |
|
その他不動産販売 |
26件 |
5,346 |
6件 |
1,099 |
-79.4% |
開発関連 |
6件 |
827 |
3件 |
159 |
-80.7% |
収益物件 |
19件 |
3,268 |
2件 |
929 |
-71.6% |
その他 |
1件 |
1,250 |
1件 |
10 |
-99.2% |
* 単位:百万円
◎不動産賃貸収入
売上高30億22百万円(前期比4.1%減)、セグメント利益は7億15百万円(同36.3%減)。同社が主力とする住居系は比較的安定した賃料水準を維持しており、入居率向上と滞納率の改善に努めると同時に、最適な賃貸不動産のポートフォリオ構築のため、新規物件の取得など賃貸収入の安定的な確保を目指した。保有戸数は、販売用の収益物件を除いて住居系で期末時点1,887戸となった。稼働率は住居、店舗・事務所等で従来通り95%以上を維持し、安定収益の確保に寄与している。売上総利益率は、前期比10.4ポイント低下の32.7%となった。
【賃貸収入の内訳(23/2期)】
収入額 |
構成比 |
前期比 |
|
住居 |
2,223 |
73.6% |
-3.7% |
店舗・事務所等 |
666 |
22.0% |
-2.7% |
駐車場 |
84 |
2.8% |
-4.9% |
トランクルーム他 |
48 |
1.6% |
-28.1% |
合計 |
3,022 |
100.0% |
-4.1% |
* 単位:百万円
【稼働率の推移】
22/2期上期末 |
22/2期期末 |
23/2期上期末 |
23/2期期末 |
|
住居 |
96.4% |
96.7% |
95.7% |
97.9% |
店舗・事務所等 |
96.3% |
95.4% |
95.8% |
98.3% |
駐車場 |
64.5% |
61.3% |
77.7% |
86.9% |
セグメント別売上総利益
22/2期 |
売上総利益率 |
23/2期 |
売上総利益率 |
売上総利益 前期比 |
売上総利益率 前期比 |
|
分譲マンション販売 |
5,608 |
18.1% |
6,997 |
18.7% |
+24.8% |
+0.6% |
戸建て住宅販売 |
292 |
13.1% |
158 |
14.4% |
-45.9% |
+1.3% |
その他不動産販売 |
653 |
12.2% |
161 |
14.6% |
-75.4% |
+2.4% |
不動産賃貸収入 |
1,358 |
43.1% |
987 |
32.7% |
-27.3% |
-10.4% |
その他 |
75 |
84.3% |
84 |
91.2% |
+12.0% |
+6.9% |
売上総利益合計 |
7,986 |
19.1% |
8,387 |
19.6% |
+5.0% |
+0.5% |
* 単位:百万円
(3)期中契約高と契約済引渡残高の推移(23/2期)
23/2期は、期中契約高が前期比26.8%減、契約済未引渡残高が前期比17.4%減となった。前期末の水準が高かった反動により、今期末の契約済未引渡残高は減少したものの、過去と比較して高水準の契約済未引渡残高を維持している。
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
要約BS
22年2月末 |
23年2月末 |
22年2月末 |
23年2月末 |
||
現預金 |
17,007 |
11,756 |
仕入債務 |
13,204 |
7,026 |
販売用不動産 |
10,478 |
9,779 |
短期有利子負債 |
28,387 |
17,018 |
仕掛販売用不動産 |
40,872 |
34,446 |
前受金 |
4,202 |
3,490 |
流動資産 |
69,945 |
57,744 |
長期有利子負債 |
22,279 |
27,503 |
有形固定資産 |
25,671 |
26,378 |
負債 |
71,645 |
57,564 |
無形固定資産 |
617 |
625 |
純資産 |
26,656 |
28,579 |
投資その他 |
2,067 |
1,395 |
負債・純資産合計 |
98,302 |
86,144 |
固定資産 |
28,356 |
28,399 |
有利子負債 |
50,667 |
44,521 |
* 単位:百万円
* 有利子負債=社債+借入金(リース債務を含まず)
* 株式会社インベストメントブリッジが会社資料を基に作成。
23/2期末の総資産は前期末との比較で121億57百万円減の861億44百万円。資産サイドは、分譲マンションの竣工、物件引渡進捗等による仕掛販売用不動産や現預金などが主な減少要因となった。負債・純資産サイドは、建築代金の支払による仕入債務、物件竣工による一年以内返済予定長期借入金、前受金などが主な減少要因となった。有利子負債の内訳は、大手銀行37.4%(前期末43.4%)、地方銀行35.8%(同34.7%)、信用金庫26.8%(同21.9%)。また、23/2期末の自己資本比率は33.2%と前期末比で6.1ポイント上昇した。
尚、販売用不動産97億79百万円の内訳は、分譲マンション11億72百万円、戸建住宅5億16百万円、収益物件を中心とするその他80億91百万円。仕掛販売用不動産344億46百万円の内訳は、分譲マンション304億38百万円、戸建住宅12億92百万円、収益物件を中心とするその他27億15百万円。
キャッシュ・フロー(CF)
22/2期 |
23/2期 |
前期比 |
||
営業キャッシュ・フロー(A) |
8,223 |
2,153 |
-6,070 |
-73.8% |
投資キャッシュ・フロー(B) |
190 |
-1,066 |
-1,256 |
– |
フリー・キャッシュ・フロー(A+B) |
8,414 |
1,087 |
-7,327 |
-87.1% |
財務キャッシュ・フロー |
-3,116 |
-6,636 |
-3,520 |
– |
現金及び現金同等物期末残高 |
14,689 |
9,139 |
-5,549 |
-37.8% |
* 単位:百万円
* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
棚卸資産が減少したものの仕入債務が減少したことなどにより営業CFのプラスが縮小した。また、有形固定資産の取得による支出が拡大したことなどにより投資CFがマイナスへ転じ、フリーCFのプラスも縮小した。また、短期借入金が増加したものの長期借入金が減少したことなどにより財務CFのマイナスも拡大した。以上により、期末のキャッシュポジションは前期比で37.8%減少した。
4.2024年2月期業績予想
(1)非連結業績予想
23/2期 実績 |
構成比 |
24/2期 予想 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
42,712 |
100.0% |
39,000 |
100.0% |
-8.7% |
営業利益 |
4,387 |
10.3% |
3,600 |
9.2% |
-17.9% |
経常利益 |
3,607 |
8.4% |
2,800 |
7.2% |
-22.4% |
当期純利益 |
2,382 |
5.6% |
1,900 |
4.9% |
-20.2% |
* 単位:百万円
前期比8.7%の減収、同17.9%の営業減益予想
売上高は前期比8.7%減の390億円を計画。国内外の経済は、世界的な原材料価格の高騰や内外金利格差などで依然として不透明な状況が継続しているものの、主力事業の分譲マンション事業では24/2期に竣工予定のうち戸数ベースで8割程度販売契約を有しており、達成に向け保守的な会社計画となっている。分譲マンション販売事業において、引渡戸数は増加するものの、戸当たり平均価格が大幅に低下する影響により、売上高とセグメント利益が前期比で減少する見込みである。一方、戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業においては、前期に引渡戸数を抑制したこともあり売上高が前期比で増加する見込みである。また、不動産賃貸収入事業では、販売用収益物件を売却する影響を見込み、概ね前期並みの売上を計画している。
営業利益は前期比17.9%減の36億円の計画。利益面では、分譲マンション販売事業における戸当たり平均価格の大幅な低下が影響することに加え、用地価格や建築コストの上昇基調が継続していることに考慮した見通しとなっている。売上高営業利益率は、前期比1.1ポイント低下の9.2%の予定。
また年間配当は、前々期と比べ10円増配の前期と同額の1株当たり年50円を予定。予想配当性向は29.2%となる見込み。
(2)セグメント別見通し
23/2期 実績 |
構成比 |
24/2期 予想 |
構成比 |
前期比 |
|
分譲マンション販売 |
37,394 |
87.5% |
31,000 |
79.5% |
-17.1% |
戸建て住宅販売 |
1,103 |
2.6% |
2,000 |
5.1% |
+81.3% |
その他不動産販売 |
1,099 |
2.6% |
3,000 |
7.7% |
+172.8% |
不動産賃貸収入 |
3,022 |
7.1% |
3,000 |
7.7% |
-0.7% |
その他 |
92 |
0.2% |
– |
– |
– |
売上高 |
42,712 |
100.0% |
39,000 |
100.0% |
-8.7% |
* 単位:百万円
◎分譲マンション販売
売上高は前期比17.1%減の310億円の計画。引渡戸数は増加するものの、戸当たり平均価格が前期比で大幅に低下することが影響する見込みであり、売上高は22/2期並みとなる。一方、24/2期に竣工予定のうち戸数ベースで77.7%の販売契約を有していることもあり、計画の達成確度は高い。引渡戸数は、前期比4.3%増の710戸を計画している。また、発売戸数は、前期比22.6%減の520戸を計画しており、契約戸数は同19.3%減の520戸を計画している。仕入戸数は前期比25.3%減の720戸を計画。仕入れスタンスについては、市況などを勘案しつつ、引き続き採算性を重視した仕入を徹底していく方針を示している。
なお、「ワコーレシティ神戸元町(総戸数177戸)」や「ワコーレ阿倍野播磨町ラフィリス(総戸数(44戸)」などの共同事業によるプロジェクトも順調に増加している。特に、「ワコーレシティ神戸元町」は利便性の高い立地であり採算性も良好で、契約も順調に推移しており、25/2期の竣工物件であるが総戸数177戸に対し既に150戸を超える契約を獲得している。
【分譲マンション販売事業のKPI】
23/2期 実績 |
前期比 |
24/2期 予想 |
前期比 |
||
引渡戸数 |
681戸 |
+2.3% |
710戸 |
+4.3% |
|
戸当たり平均価格 |
55百万円 |
+9百万円 |
44百万円 |
-11百万円 |
|
発売戸数 |
672戸 |
-6.7% |
520戸 |
-22.6% |
|
契約戸数 |
644戸 |
-16.7% |
520戸 |
-19.3% |
|
仕入戸数 |
964戸 |
48.5% |
720戸 |
-25.3% |
◎戸建て住宅販売
売上高は前期比81.3%増の20億円の計画。前期に引渡戸数を抑制したこともあり売上高が前期比で増加する見込みである。ここ数年北摂地域に進出していたものの価格面での訴求力が不足したこともあり、立地に応じた売れ筋の価格帯での供給を進められるよう地域の選別や用地費の精査を徹底している。
◎その他不動産販売
売上高は前期比172.8%増の30億円の計画。前期に引渡戸数を抑制したこともあり売上高が前期比で増加する見込みである。24/2期は、木造収益物件と鉄骨収益物件を合わせ14プロジェクト193戸と22/2期並みの販売を計画している。収益アパート等の事業においては、サブリースの取扱いもなくコンプライアンス面に配慮している。販売面については、相続対策や資産運用のニーズを有する富裕層など高属性の顧客を対象としており、引き合いも強く投資意欲は旺盛である。今後も同社が強みとする地元の不動産流通業者とのネットワークを活用し実績を積み上げる方針である。
【開発中のプロジェクトと24/2期販売予定】
開発中のプロジェクト数 |
戸数 |
24/2期販売予定 |
戸数 |
|
木造収益物件 |
13棟 |
174戸 |
4棟 |
52戸 |
鉄骨収益物件 |
56棟 |
771戸 |
10棟 |
141戸 |
RC収益物件 |
3棟 |
131戸 |
– |
– |
合計 |
72棟 |
1,076戸 |
14棟 |
193戸 |
◎不動産賃貸収入
売上高は前期比0.7%減の30億円の計画。22/2期に販売用収益物件を売却した影響を見込み、概ね前期並みの売上を計画している。95%超の稼働率維持による安定収益の確保を目指しつつ、物件の入替を進めながらより良質なポートフォリオの構築を進めていく。
5.今後の注目点
同社の23/2期は、分譲マンション販売の増加が寄与し、前期比2.2%の増収、同13.0%の営業増益の好決算となった。期初の会社計画との比較では、売上高こそ1.7%の上振れであったものの、営業利益で18.6%、経常利益で24.4%の大幅な上振れとなった。一方で、24/2期は、前期比8.7%減収、同17.9%営業減益の減収減益の会社計画が示された。これは、主力の分譲マンション事業において、前期比で引渡戸数が増加するものの、前期に高価格帯のマンションの引渡が重なったこともあり、戸当たり平均価格が約11百万円減少することが影響するものである。
また、同社は中期経営計画を発表した。数値計画では、24/2期~26/2期において直近3ヵ年実績合計の利益水準の達成を目指している。24/2期は前期比で減収減益の計画となっており、中期経営計画の達成のためには、中期経営計画の2年目と3年目の利益水準を高める必要があり、同社の業績の先行指標である契約済未引渡残高の拡大が不可欠である。24/2期上期末で契約済未引渡残高をどこまで積み上げることができるのか注目される。更に、今期は仕入戸数が減少する計画となっているが、これは採算性を重視し厳選を行っている影響である。成長のためには仕入の拡大も必要である。今後の仕入戸数の状況にも注目したい。
尚、東京証券取引所は「PBR1倍割れ」の企業に対して、株価水準の具体的な改善策の策定と開示を強く要請している。同社は、会社の継続性及び収益性を確保するため、既存事業及び新規事業への再投資を中心としつつ、株主還元策の拡充及びESG、SDGs等の観点も含めて利益配分を実施する方針を掲げている。同社株は、PBR0.3倍台と非常に割安な水準となっているものの、配当利回りは5%を超え、今期の配当性向は約30%となっている。「PBR1倍割れ」の改善に向け、できることは多くはなさそうではあるものの、今後どの様な改善策が打ち出さるのかについても期待を込めて注目したい。
<参考:ESG活動>
同社はESG活動として、居住者の、安全、健康に配慮した住宅づくりに取り組むと共に、自然災害時の住宅補償や青少年育成支援を通した社会貢献にも力を入れている。また、ガバナンスの面では、健全かつ透明性が高く効率の良い経営体制の確立を最重要課題と考え、ガバナンス体制の整備と充実に取り組んでいる。
環境
同社が販売する分譲マンションは神戸市準拠の環境性能を採用しており、戸建て住宅は「認定低炭素住宅」基準に適合している。また、住宅全般でシックハウス対策を講じている他、一部の分譲マンションでスマートフォンを利用したサービスを採用する等、スマートマンションの取り組みも進めている。
神戸市準拠の環境性能を分譲マンションに採用 | 神戸市では、一定規模の建築物を建てる際、地球温暖化への配慮、住む人の安心・安全など環境配慮への取り組みを事業会社が自己評価し市へ届出、市は採点結果をホームページ等で公開している。同社は、この結果を分譲マンションのチラシやホームページ等の広告物に掲載し、建物の安全性を示している。 |
高断熱で高気密な住まいの実現 | 例えば、ワコーレノイエ神戸鹿の子台では、従来の軸組工法と比べ機密性の高いツーバイフォー工法を全邸に採用。二重屋根構造や床断熱、玄関ドアやバスルームにも高断熱の設備を使用し、品確法に基づく「断念等性能等級4」の住まいの約1.5倍の断熱性能を実現している。 |
Urban Innovation KOBE +P に協賛
神戸のまちをより美しく保つ「スマートごみ容器」の設置を開始 |
神戸市の最先端のテクノロジーを用いた実証実験で社会・行政課題の解決を目指す新事業「Urban Innovation KOBE +P」に協賛し、2022年10月より神戸市中央区の3か所にスマートごみ容器「SmaGO(スマゴ)」を設置している。
スマゴは、環境にやさしいソーラー発電で動くIoT機能付のスマートごみ容器で、投入されたごみを自動的に約1/5に圧縮する機能により、これまで1日2回行っていたごみ回収を1日1回に削減し、ごみ収集作業の効率化を図る。また本体には神戸らしいデザインを掲載し、 ごみ容器の認知度を高め、ぽい捨ての削減も図る。 |
社会
兵庫県が実施する住宅
再建共済制度「フェニックス共済」へ加入 |
兵庫県では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、自然災害で被害を受け、再建、補修等を行う際に給付金を支払う住宅再建共済制度「フェニックス共済」を平成17年9月から全国に先駆けて実施ししている。同社は、県下で販売する分譲マンション全てにフェニックス共済を採用しており、引渡の年度末まで及び翌年度1年間は同社負担で補償を受けることができる。 |
「春高・春中ゴルフ」への
特別協賛 |
同社は全国高等学校・中学校ゴルフ選手権春季大会(春高・春中ゴルフ)への特別協賛を開始した。同大会はジュニアゴルファーの「聖地化」を目指す兵庫県三木市で開催されており、地元兵庫県の活性化とスポーツ振興及び応援を目的として特別協賛することとなった。今年度は2023年3月29日から3日間にわたって開催され、素晴らしいプレーが繰り広げられた。 |
青少年育成支援への取組み | 少子高齢社会が進行する中、子供達が健全な社会生活を過ごせるよう、様々な育成支援を行っている。
◎中学生の社会科見学を実施 2023年3月7日、ワコーレトアロードマンションサロンにて神戸市立福田中学校1年生の社会科見学を実施した。モデルルーム等を見学し、同社の事業や地元神戸の街づくりへの想いを伝えた。 ◎ヴィッセル神戸サッカースクールパートナー 青少年へのサッカー普及活動支援のため、ヴィッセル神戸が運営する「サッカースクール」に協賛している。 ◎神戸新聞社子育て支援プロジェクト「すきっぷ」 毎月12日「育児の日」に、神戸新聞社が主催する親子参加型の地域イベント「すきっぷサロン」に協賛している。 |
古民家再生プロジェクト | 同社は分譲マンションを中心に新築の住宅開発を主業としている、一方で既存建物の再利用の重要性も認識している。地域密着企業として、保存すべきものを守りながら街の活性化を図るべく、2020年より古民家再生プロジェクトを開始。「ラドーレ」をブランド名に、今後も空き家問題及び人口流出を防ぐ一助になるよう尽力している。
◎第1弾 「ラドーレ神河」 |サイクルカフェ併設の宿泊施設築50年以上の自転車販売店兼住宅を、一棟貸しのゲストハウス「ラドーレ神河」へと再生。2020年11月にオープンした。近年、神河町ではサイクルツーリズム事業への取組みが積極的に行われていることから、建物南側1階をサイクルカフェに。リモートワークの普及等を鑑み、コワーキングスペースも併設している。 ◎第2弾 「ラドーレ垂水ハーバービューレジデンス」 同社が保有していた築90年を超える賃貸戸建て住宅をフルリノベーション。昔ながらの丸いドアノブや、昭和型板ガラスと呼ばれる窓ガラスといった趣を残しながら、耐久性の向上やプライバシー面に配慮し、現代の暮らし方に寄り添った施工を行った。 |
企業版ふるさと納税
神河町より感謝状の贈呈 |
同社の「ラドーレ神河」が在る兵庫県神崎郡神河町に、企業版ふるさと納税制度を利用し1,000万円の寄附を行った。寄附金は、令和5、6年度に整備を予定している、(仮称)粟賀小学校跡地公園・図書コミュニティ施設整備事業の公園遊具整備に活用される。同社はこの整備事業に賛同し、「子育て環境の充実や新たな人の流れの創出など魅力あるまちづくりの一助
になれば」と考え、今回の寄附を実施した。これに伴い、神河町長の山名宗悟氏より感謝状が贈呈された。 |
ガバナンス・その他
監査等委員会設置会社 | 同社はコーポレート・ガバナンスの強化及び企業価値の向上を図るため、2019年5月の株主総会をもって「監査等委員会設置会社」へ移行した。また、2022年5月より同社の取締役は12名、うち5名が社外取締役(構成比率は3分の1超)として選任されている。 |
コンプライアンス体制 | 「コンプライアンス規程」を基本方針に「内部通報規程」や「取引先管理規程」など各種マニュアルを制定している。また、コンプライアンスの統括部署として内部統制委員会を設置し、適宜、法令順守状況の検証や改善策を実施している。加えて、監査等委員会直下に内部監査室を設置し牽制機能を強化している他、外部の法律事務所や税理士と顧問契約を締結しコンプライアンス体制の充実に向けた対応を行っている。 |
ナナトモサステナビリティについて | 同社は7つの観点で持続可能な社会づくりに貢献する「ナナトモサステナビリティ」を宣言している。同社が創業120年以上の歴史の中で大切にしてきた企業理念「共生」は、自分の生き方が他の人の幸せにつながることを歓びとする想いである。時代やテクノロジーが変化しても、誰しもが人・街・未来とつながって生きている。今後も神戸を中心としたこの街に暮らす一人ひとりの豊かな人生に寄り添い、支え続けるために、地域と社会の発展に寄与する。 |
働きやすい職場環境づくり | 同社は従業員が働きやすい職場環境づくりのため、有休休暇、時間単位休暇をはじめとした各種福利厚生制度の充実に努めている。また、女性の就業環境改善のため産前産後休暇・育児休暇や時短勤務制度を制定している。さらに、従業員の健康維持のため、産業医を交えた衛生委員会を毎月開催すると共に、健康診断やメンタルヘルスチェックを実施しており、健康状態の把握に努めている。
正社員109名 男性62.4%、女性37.6% 入社から3年以内の定着率 87.3% 産休・育児休暇取得率 100.0% 産休・育児休暇後復帰率 100.0% 平均雇用年数の男女差 9ヶ月 入社5年以内の社員に占める女性比率 29.4% (2023年2月末時点) |
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 12名、うち社外5名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年7月19日)
基本的な考え方
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、健全かつ透明性が高く効率の良い経営体制の確立を最重要課題と考え、その充実に取組んでおります。また、当社は小規模な組織でありますが、相互牽制や独立性にも配慮したシンプルで効率的な組織体系を構築しており、意思決定の迅速化と透明性の高い経営の実現を一層強固なものとするため、以下の5項目を重点にガバナンス体制の整備に努めております。
1.取締役会における実質的な議論に基づく監督機能の発揮
2.常務会による経営の意思決定のための重要事項の適時適切な審議
3.監査等委員会による実効性の高い監査の実施
4.内部監査室の設置、内部統制委員会の開催等による内部管理体制の整備
5.コンプライアンス体制の実現に向けた法律事務所等の外部機関との連携
<実施しない主な原則とその理由>
【原則4-2. 取締役会の役割・責務(2)】
当社の事業活動の根幹は不動産に対する投資と投資した不動産の再有効活用を目指した出口戦略であり、当社の経営耐力を踏まえた適切なリスクテイクを進めていくことが業績向上のキーポイントになっております。かかる認識のもと取締役会等においては当社を取り巻く環境の正確な理解に基づき、迅速かつ適切な意思決定を進めております。なお、経営陣の業務運営にかかる評価に対する報酬に関して、数値目標だけでは判断が困難であると認識していることから特別のインセンティブは設けておりませんが、今後の課題として検討を進めてまいります。
【原則5-2. 経営戦略や経営計画の策定・公表】
当社は株主価値の持続的向上を図るためROEを目標とする経営指標としております。また、資本コストにつきましてもその数値に関しては把握しております。しかしながらこれらの数値を用いた収益計画や事業方針の策定よりむしろ他の計数目標を活用する方が、実務上では効果的な運用が可能になるものと認識しております。但し、株主価値の向上や投資家に対する説明責任がより一層求められるなかにあっては、資本コスト等の指標を用いた投資計画の策定や資本の効率的運用を進めていくことを通じて、引き続き経営管理の高度化を図ってまいります。
【補充原則5-2①】
経営戦略の策定にあたっては各セグメントの事業特性、収益性、財務面に対する影響等を総合的に勘案したうえで、最適な事業ポートフォリオの構成に努めるとともに環境変化に応じて適宜見直しを図っておりますが、現段階では中期経営計画を含めて公表には至っておらず、今後セグメント別の資本コスト対比の収益性分析等とも併せて対応方法を検討してまいります。
<開示している主な原則>
【補充原則2-4①】
当社では、2024年3月末日までに女性で課長職以上の役職者を2名以上登用するよう取り組んでおりますが、外国人や中途採用者の管理職比率については特に定めておりません。これは、当社が持続的に成長するためには、女性や外国人、中途採用者などの従来の発想にとらわれない視点や知見を重視しており、国籍、職歴に関係なく、個人の能力や実績を重視した人物本位の登用を実施しているためであります。また、女性が永年働けるように産休制度の充実にも努めており、出産後の復帰率は100%となっております。さらに人材戦略を推進するため、新たに人事課の設置を行っております。
【原則3-1. 情報開示の充実】
(ⅰ)有価証券報告書に「共生(ともいき)」の企業理念をはじめ経営に関する基本的な考え方、事業展開方針等を明確にしております。
(ⅱ)コーポレート・ガバナンスの考え方につきましても有価証券報告書や上記「1.基本的な考え方」に記載しております。
(ⅲ)報酬決定に関しましては総額については株主総会で、各取締役の報酬は担当職務、役割等に応じて取締役会において決定しております。
(ⅳ)取締役を含む経営幹部の選解任につきましては、各取締役の成果等に応じて取締役会にて株主総会への上程議案を定めて株主総会の決議により決定しております。
(ⅴ)取締役の選任理由等につきましては、事業報告書に記載することで開示しております。
【原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は広報・IR室をIR担当部署として年2回神戸と東京で決算説明会を開催するとともに、個人投資家向けの説明会を大阪で開催し、株主等との積極的なコミュニケーションを図っております。また出席できない方のために説明会の動画もHP上で公開しております。加えて株主等からの当社の理解を促進させるためWebサイトの充実にも努めております。