(6550)Unipos株式会社 広告事業終了に伴い減収 Unipos事業は成長
田中 弦 社長CEO |
Unipos株式会社(6550) |
|
企業情報
市場 |
東証グロース市場 |
業種 |
サービス業 |
代表取締役社長CEO |
田中 弦 |
所在地 |
東京都渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル 7F |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
174円 |
12,967,400株 |
2,256百万円 |
-228.3% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
0.00円 |
– |
-89.11円 |
– |
-145.96円 |
– |
*株価は11/17終値。発行済株式数、DPS,EPSは23年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2019年3月(実) |
6,828 |
213 |
211 |
259 |
26.48 |
0.00 |
2020年3月(実) |
6,371 |
-478 |
-478 |
-900 |
-91.48 |
0.00 |
2021年3月(実) |
1,964 |
-517 |
-528 |
-852 |
-81.62 |
0.00 |
2022年3月(実) |
1,453 |
-1,216 |
-1,197 |
-2,510 |
-195.79 |
0.00 |
2023年3月(予) |
838 |
-1,138 |
-1,150 |
-1,154 |
-89.11 |
0.00 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。
Unipos株式会社の2023年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.今後の成長戦略
3.2023年3月期第2四半期決算概要
4.2023年3月期業績予想
5.人的資本経営への取り組み
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 従業員の心理的安全性を向上させ、従業員同士が、日常の感謝や賞賛をその言葉とともにポイント(ピアボーナス)を送り合うことができる、相互評価・賞賛のためのサービスである「Unipos」を提供している。田中社長が同社経営の中で、自らの体験・経験を下に作り上げた独自サービスで、現在、約360社が導入。組織風土改革に繋がる実績が評価され、社歴の長い伝統的企業の採用が増加している。感情報酬を社会実装し、「本音の感情の交流により人の心が動き行動が生み出される世界」を実現していくことを目指している。
- 23年3月期第2四半期の売上高は前年同期比56.8%減の3億75百万円。広告事業終了に伴い、前年同期に対して4億93百万円の減収。営業利益は5億69百万円の損失。減価償却費が減少したほか、家賃・人件費など各種費用の削減により損失幅は1億72百万円の拡大とどまる。四半期純利益は5億円の損失。前期は特別損失を計上したため、損失額は前年同期から大幅に縮小した。
- Unipos事業は四半期ベースで順調に成長を続けている。22年9月末の顧客件数は362件で、前期末から20件増加。新規受注・利用開始顧客の増加とともに、既に利用中の顧客内 でも利用拡大が進んでいる。この結果、継続課金対象となる月額料金である「ストック売上高」の比率は、毎四半期90%台で推移しており、売上高拡大とともに収益構造の安定性も進んでいる。
- 業績予想に変更は無い。売上高は前期比42.3%減の8億38百万円の予想。広告事業終了により減収となるも、Unipos事業は同44.8%増の8億35百万円と、前期同様の成長率を見込む。営業損失は11億38百万円の予想。Unipos事業の成長投資を行いながらも、コスト改善を実施し、前期並みの損失を見込む。想定市場の成長率以上に事業を加速させるための投資を費用対効果の高い施策に絞り込んで実施すると同時に、固定費も逓減させ、早期の黒字化を図る。
- 人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方「人的資本経営」の必要性が日本企業において急速に高まっている。成長戦略としては、こうしたトレンドを追い風に、組織風土改革に必須な協働プラットフォームとしてのポジションをより強固なものとするため受注拡大と機能及び体制のさらなる拡充に向け投資を実行する。
- 投資家の関心の高まりとともに企業の「人的資本」に関する情報開示のルール作りが進行している。しかし、SDGs、ダイバーシティ、インクルージョンとは掲げていても、実態とのギャップの大きい企業も沢山あるだろう。そのギャップ解消には、組織文化の改善が必須であるが、組織における心理的安全性が低下している企業が改善を実現するためには、日常的な従業員の意識・行動から変革する必要があるため改善には時間がかかり、企業としては早めに対応する必要がある。
- 真の組織風土改革に向けて同社の役割は益々大きくなるものと予想される。引き続きUnipos事業のKPIである導入企業数および売上高の進捗を注目していきたい。
1.会社概要
従業員の心理的安全性を向上させ、従業員同士が、日常の感謝や賞賛をその言葉とともにポイント(ピアボーナス)を送り合うことができる、相互評価・賞賛のためのサービスである「Unipos」を提供している。田中社長が同社経営の中で、自らの体験・経験を下に作り上げた独自サービスで、現在、約360社が導入。組織風土改革に繋がる実績が評価され、社歴の長い伝統的企業の採用が増加している。感情報酬を社会実装し、「本音の感情の交流により人の心が動き行動が生み出される世界」の実現を目指している。
【1-1 上場までの沿革】
Windows95が登場し、日本においてインターネットが急速に普及する元年ともなった1995年に大学に入学した田中 弦氏(現 Unipos株式会社 代表取締役社長CEO)は、インターネットの魅力・将来性に惹かれ、大学卒業後、ソフトバンク株式会社、ネットイヤーグループ株式会社で経験・実績を積む。その後、自らのスキルを更に磨き上げるために、戦略系のコンサルティングファームに入社し、通信業、製造業などの顧客に対するコンサルティングに携わる中で、派閥・パワハラといった日本の伝統的企業の組織的な問題、課題を目の当たりにする。この時の経験は、組織風土改革のためのサービス「Unipos」創出のベースにもなっている。
2004年に株式会社ネットエイジに執行役員として入社すると、2005年には、新規事業として自ら立案した広告事業を展開する子会社 株式会社RSS広告社の社長に就任。2012年にはMBOで同事業を全面的に継承する。商号変更により「Fringe81株式会社」として事業を展開していた同社は2017年6月に東証マザーズに上場。同月に現在の中心サービス「Unipos」の提供を開始した。
Fringe81社が提供していた広告事業は、その取り組みの独自性から順調に成長を続けていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受け、損失を計上する。そうした中、2020年12月にSansan株式会社を割当先とする第三者割当増資を中心とする資本業務提携を締結し財務基盤を強化するとともに、事業構造改革に着手。2021年8月に、広告事業を終了し、コロナ禍でも順調に伸長しているUnipos専業のSaaS企業として再出発することを公表し、同年10月に商号も「Unipos株式会社」に変更した。
2022年3月期をもって事業構造改革は実質的に完了し、Unipos事業による再成長を目指している。
2022年4月、東証再編に伴い、東証グロース市場に移行した。
【1-2 理念、目指す姿】
パーパスを「『最高の集団を自らつくる』時代をつくる」、コーポレートミッションを「感情報酬を社会基盤に」としている。
同社では、組織や社会をより良い方向に前進させるきっかけは、勇気ある小さな行動であり、素晴らしい行動が増えれば会社や組織は変化すると考えている。
そして、この行動に「感情報酬」を加えることで、素晴らしい行動は増加すると考えおり、それを促進する仕組みが同社の主力事業「Unipos」である。
感情報酬を社会実装し、「本音の感情の交流により人の心が動き行動が生み出される世界」を実現することを目指しており、社員同士の関係性の質が向上し、心理的安全性の高い理想の組織への変革をサポートしていく。
(同社資料より)
【1-3 同社を取り巻く環境】
~高まる人的資本強化の必要性~
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方「人的資本経営」の必要性が日本企業において急速に高まっている。
第四次産業革命などによる産業構造の急激な変化、少子高齢化や人生100年時代の到来、個人のキャリア観の変化など、企業を取り巻く環境は大きな変化を迎えている。
こうした中、企業が事業環境の変化に対応しながら、持続的に企業価値を高めていくためには、事業ポートフォリオの変化を見据えた人材ポートフォリオの構築や、イノベーションや付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、経営戦略と適合した人材戦略が重要となる。
同時に、世界的なメインストリームとなっている「ESG投資」の観点からも、企業の組織風土変革や人的資本強化のための取り組みは、投資家にとって関心の高い重要なポイントである。世界的に気候変動とともに非財務情報として積極的な開示が要求される傾向にあり、日本でも数年内に有価証券報告書への記載を義務付けるとの見方も出ている。
こうした環境下、HRテッククラウド市場は年率30%超で成長し、2026年度には2,270億円に達するとの見方もある。
その中でも、従業員の行動を変えることで組織の変革を生み出す「Unipos」は、「人的資本経営」の実践に大きく寄与する仕組みと位置付けることができ、Uniposの増収率は21年3月期36%増、22年3月期45%増と市場全体の成長率を上回って伸長している。今期も約40%の増収を見込んでいる。
(同社資料より)
【1-4 事業内容】
22年3月期に広告事業を実質的に終了させ、「Unipos」事業の成長によって、早期黒字化を果たし、持続的成長を追求する考えだ。
(1)Unipos事業の概要
多くの企業において組織風土改革が不可欠と考える同社が提供するHRテックサービス。
従業員の心理的安全性を向上させ、従業員同士が、日常の感謝や賞賛をその言葉とともにポイント(ピアボーナス)を送り合うことで相互評価・賞賛することができる。
田中社長が同社経営の中で、自らの体験・経験を下に作り上げた独自サービスである。
①組織の風土改革とは?
Uniposの仕組み、概要を理解するためには、同社が考える組織風土改革とはどのようなものかを理解しておく必要がある。
◎同社の環境認識
現代は経営者の知識・経験だけでは対応できない不確実・不透明な時代であり、労働人口減少に伴いより少ない人員で企業価値の維持・向上が求められている。
少子化が進む中で、労働力のボリュームゾーンは、「経済成長を知らず、会社に期待しない」など、労働に対する価値観が従来世代とは大きく異なるZ世代以降にシフトしている。
こうした環境下、企業は、価値観の異なる一人一人の知識や経験を集約する「協働」が可能な組織に変革することによって困難な経営状況を乗り越えていく必要がある。
◎組織風土改革における必要なアプローチ
組織風土とは「組織を構成する人員の間で内発的に発生し、共有される普遍的な価値観や環境」のこと。
組織を変革するためには、戦略や組織構造の変更といった局所的なアプローチではなく、価値観の変革を中心とした多面的で総合的なアプローチによる組織風土改革が重要となる。
◎同社が掲げる組織の風土改革
組織内の自律的な行動がオープンに称賛・共有されることによって、心理的安全性(※)を高めるだけでなく、関係性の質を向上させ、事業成長へと導くための健全な組織風土(価値観・環境)の醸成に繋がる。
(同社資料より)
※心理的安全性とは?
組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと。
心理的安全性が低いと、「良かれと思って行動しても、罰を受けるかもしれない」という不安を感じ、「意見を言いにくい」「悩みを打ち明けにくい」「気づいていても沈黙する」など、必要なことでも行動しなくなってしまい、結果として、組織における不正や離職の増加につながることとなる。
反対に、従業員の心理的安全性が向上すると、安心感が高まり、良い行動が増加。それが顧客に対するサービスの品質向上につながり、結果的に業績向上に寄与することとなる。
心理的安全性向上のためには、「よくやった!」「すごいね!」「ありがとう」など、ポジティブな声かけが必要である。
さらに、貢献に対する称賛を上司と部下の間に留めず組織全体でシェアすると、相互理解も深まり、部門間などより広い関係性が向上し、良い行動がさらに増加する。
(同社資料より)
②Uniposの仕組み
◎概要
Uniposは、IT技術を活用して、「貢献に対する称賛」を共有し、組織内の良い行動を増やすサービス。
組織内で評価すべき行動や発言などがあった際に、「称賛を送る人」が称賛メッセージとともに、ピアボーナスと呼ばれるポイントを「称賛をもらう人」に送る。
他の従業員はタイムラインで他のメンバーの貢献を把握することができ、共感した投稿に対し拍手ボタンで「称賛を送る人」や「称賛をもらう人」にピアボーナスを送ることができる。
旧来の人事評価における上司からの一方的な評価/処遇と異なり、周囲から気軽かつ日常的に賞賛/感謝を伝えることにより従業員の動機づけを行うことが可能である。
部署や肩書を問わず即時に同僚を評価でき、半期や四半期ごとの業績評価では見落とされがちな小さな貢献も評価に加えることができる。また、従業員相互の評価内容が公開されることにより、評価の透明化・公正性の担保が可能となる。加えて、従業員同士で授受したピアボーナスを給与/賞与に置き換え付与することで、経済的な報酬をもたらすことも可能である。
(同社資料より)
③効果
Uniposは、組織内で広く貢献や称賛がシェアされることにより、組織改革をする上で重要な「価値観の共有」を図ることができる。
以下のように組織の様々な関係性の質を改善し、理想の組織への変革を実現するものであると同社では考えている。
経営者 ⇔ 現場 |
経営理念やバリューの浸透による経営戦略の実行スピード向上 |
事業部 ⇔ 事業部 |
部門間の無関心を防ぐ相互理解の促進 連携強化によるサイロ化の解消 |
上司 ⇔ 部下 |
上司のリーダーシップ育成による部下の自律性と潜在能力の最大化 |
組織全体 |
全ての土台となる心理的安全性の向上 |
Unipos導入企業(金融業界、従業員数1,000名以上)でアンケートを実施したところ、以下のような顕著な改善が見られた。
利用率が平均以上(=称賛が多い)の部署は働きがいに関わる指標が1.3~1.9倍高く、関係性の質改善に効果的であると、同社は分析している。
(同社資料より)
④特長・価値
心理的安全性向上のためには、組織内のメンバーとの「価値観の共有」「感情の共有」が不可欠であり、かつ一部のメンバーのみが利用するのではなく、多くのメンバーが利用できるものでなくてはならない。
この2つの要件を満たすものとしては、一般的には、「飲み会」「1on1面談」があるが、「飲み会」は価値観・感情の共有や関係性の改善などに効果はあるものの、メンバーの貢献を全社的に可視化するには適していない。また「1on1面談」はクローズであるが故、感情の共有や関係性の改善につながる場合もあるが、やはりメンバーの貢献を全社的に可視化するには適していない。
これに対しUniposは、「メンバーの貢献に対する激励・賞賛・共感などの様々な気持ち・メッセージが共有できる」「組織内での大小様々な貢献にスポットライトが当たり、データとして蓄積される」「貢献の賞賛を通じ、お互いを認め合うポジティブなサイクルが習慣化され、関係性の改善につながる」といった特長を有しており、「心理的安全性向上」という観点からは、最も適した仕組みであると同社では考えている。
組織内で多くの良い行動を発見するためには強力なきっかけが必要だが、感謝・激励・称賛・共感・慰労などの感情は本人に面と向かっては言いづらい。ピアボーナスという経済的価値をきっかけにして、これらの感情を言葉で伝え、結果的に組織内の良い行動を増やすことができる点も、Uniposの特長である。
(同社資料より)
以下3つの価値が、上記の効果に結び付いている。
1.称賛が習慣化する |
自然と称賛を送りたくなるシンプルで使いやすい設計であるため、称賛される機会が増え、従業員の貢献・挑戦意欲が高まる。 |
2.貢献が見える・活かせる |
タイムライン上で部下の貢献を把握し、拍手ボタンで称賛できるので、忙しいマネージャーも無理なくチームのマネジメントを改善できる。 |
3.組織風土が変わる |
#ハッシュタグで「行動指針に沿った貢献」を目にする機会が増えるので、組織全体への企業理念・行動指針(バリュー)の浸透が自然と進む。 |
(2)ビジネスモデル
利用者(社員アカウント)1人当たりの月額単価×社員アカウント数で算出される月額利用料を顧客企業より受領する。
導入にあたっての初期費用も必要だが、毎月課金のストック型収益が売上高の9割以上を占める。
利用顧客件数の拡大も加速している。
(同社資料より)
(3)顧客企業
当初はIT、人材サービス中心であったが、Unipos導入効果についての認知が向上するのに伴い、多様な業種・分野で導入が進んでおり、豊富な実績が新たな導入を呼ぶという好循環に入っている。
現在の導入企業数は約360社。従業員30名の中小企業から2,000名以上の中堅・大企業まで企業規模も幅広い。
(同社資料より)
(導入事例1:株式会社静岡銀行)
株式会社静岡銀行(東証プライム、8355)は、1877年に設立された静岡第三十五国立銀行を母体に、1943年に設立された。従業員は約3,000名。
*悩み・課題
「事業環境や社会生活の変化のスピードが一段と加速する昨今、ニューノーマルの時代に適応する組織となるため、一人一人の想いや行動にあらためてスポットを当て、日々の業務にやりがいを生み出すことができる組織づくりが必要で、課題解決型企業グループ実現のため積極果敢な挑戦を増やしたい」と考えていた。
*導入効果
そうした中、同行では、約20年振りに人事制度の改定をしたほか、各種施策と連動して2021年5月に全従業員3,000名を対象に社内SNS「Cheer*Chat」と命名してUniposを導入・活用した
その結果、導入から5か月を経た2021年10月に実施した従業員意識調査では「従来の延長線上の取り組みよりも、従業員の多様な挑戦や個性の発揮を優先している」という項目が10%以上向上した。
日常的にお互いの多様な貢献を認め合い、挑戦を称賛することで職場の心理的安全性が育まれ、「新たなチャレンジをしよう」という機運の高まりが、この結果に寄与したと考えている。
(導入事例2:アース製薬株式会社)
アース製薬株式会社(東証プライム、4985)は1892年創業、1925年設立。従業員は単体で約1,300名。医薬品、医薬部外品、医療用具、家庭用品などの製造・販売並びに輸出入を行っている。
*悩み・課題
上司世代は叱ることが多く、部下との関係が悪化し、若手層の離職が増えていた。
*導入効果
上司と部下、相互に送りあう称賛の輪が心理的安全性を高め、若手がモチベーション高く働ける組織に変化。
若手の離職も減るだけではなく、多くの失敗やミスの原因となるコミュニケーション不足が解消され、モチベーションや職場の雰囲気などの要素が混じり合って企業としての実力や魅力が高まり、結果として業績にも反映されていることを実感している。
(導入事例3:富士製薬工業株式会社)
富士製薬工業株式会社(東証プライム、4554)は1954年創業。従業員数は単体で約800名。「女性医療領域No.1」を掲げる老舗の製薬メーカー。
*悩み・課題
そもそも医薬品業界は部門ごとの専門性が高く、部門を超えた人材の交流が少ない傾向にあるため、「相手を尊重しつつ自由な意見を言い合える心理的安全性が必要で、同時に個性を発揮できるような環境を作りたい」と考えていた。
*導入効果
「Unipos」の利用開始後、利用した社員を対象にサーベイを行った結果、心理的安全性を感じるために組織にあると良いとされる「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新規歓迎」の4つの因子の指標がすべて向上していました。感謝の人間関係からは、信頼関係が生まれます。その信頼関係がある組織は高い心理的安全性が育まれる強い組織だと考えています。まさに、『富士製薬工業の成長はわたしたちの成長に正比例する』という経営理念に合致する効果が期待できそうだと思いました。」(同社コメント)
(4)市場規模
従業員規模が30名以上になると、組織づくりに課題が生まれる。その組織課題を解決し、事業成長を促すのがUniposであることから、同社では、Uniposの目指す「感情報酬の社会実装」の対象となるのは、従業員規模30名以上のすべての企業と考えている。
従業員が30名以上の企業は国内に約20万社存在することから、潜在市場は約3,490億円であると同社では試算している。
(同社資料より)
【1-5 同社の特長・競争優位性】
(1)組織風土改革の圧倒的な実績
同社が独自に開発した「Unipos」は、幅広い業種で採用が拡大している。中でも、社歴の長い伝統的な大企業での採用が増加している点は注目に値する。
組織変革に迫られながらも変化が難しく、一般的にはUniposのような仕組みの導入には二の足を踏むと見られがちな大企業での導入が増加しているのは、実際に従業員の意識を変え、組織を変えてきた「圧倒的な実績」が最も大きな要因であると、田中社長は考えている。
(2)リカーリングによる安定した収益構造
前述のように、社員アカウント1人当たりの月額単価に社員アカウント数を掛け合わせて算出される月額利用料を顧客企業より受領しており、この毎月課金のストック型収益が売上高の9割以上を占める。
23年3月期からは、SaaS企業として安定した収益構造をさらに強固なものとしていく考えである。
【1-6 ESG、SDGs】
2020年2月からは、従業員同士が日々の互いの貢献に送りあったピアボーナスを、従業員自身が選んだNPOやNGOに寄付し、団体から活動レポートと感謝の言葉を受け取るという従業員寄付機能も「SDGsプラン」を通して提供している。
2.今後の成長戦略
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方「人的資本経営」の必要性が日本企業において急速に高まっている。
こうしたトレンドを追い風に、風土改革に必須な協働プラットフォームとしてのポジションをより強固なものとするため受注拡大と機能及び体制のさらなる拡充に向け投資を実行する。
(同社資料より)
受注拡大のためのマーケティング投資に9億64百万円(22年3月末までで4億29百万円充当済)、受注拡大・体制拡充のための人件費として12億31百万円(同4億73百万円充当済)、機能拡充のための開発投資に15億80百万円(同1億99百万円充当済)。トータルで、37億75百万円(同11億1百万円充当済)の投資を実施する。
(同社資料より)
*売上高
ストック売上高が90%以上という安定的な収益構造に変化はなく、想定市場の成長率以上に事業を加速させるための投資を実施。
*コスト
マーケティング投資は、費用対効果の高い施策に絞り込んで実施する。継続的な顧客獲得を図りながらも、23年3月期は前期比約1.2億円の費用削減を見込んでいる。
オフィス移転(約2.2億円のコスト削減)や人件費減少で固定費も逓減していく。売上増とコスト削減で早期の黒字化を図る。
3.2023年3月期第2四半期決算概要
【3-1業績概要】
|
22/3期2Q |
構成比 |
23/3期2Q |
構成比 |
前年同期比 |
前年同期比(金額) |
売上高 |
869 |
100.0% |
375 |
100.0% |
-56.8% |
-493 |
売上総利益 |
557 |
64.1% |
212 |
56.6% |
-61.8% |
-344 |
販管費 |
954 |
109.8% |
782 |
208.3% |
-18.0% |
-171 |
営業利益 |
-397 |
– |
-569 |
– |
– |
-172 |
経常利益 |
-385 |
– |
-567 |
– |
– |
-182 |
四半期純利益 |
-1,588 |
– |
-500 |
– |
– |
+1,088 |
*単位:百万円。
*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
費用項目の▲は費用の増加を示す。
売上高は前年同期比56.8%減の3億75百万円。広告事業終了により対前年同期比で4億93百万円の減収。
営業利益は5億69百万円の損失。減価償却費が減少したほか、家賃・人件費など各種費用の削減により損失幅は1億72百万円の拡大とどまる。
四半期純利益は5億円の損失。前期は特別損失を計上したため、損失額は前年同期から大幅に縮小した。
【3-2 Unipos事業の動向】
◎売上高
四半期ベースで順調に成長を続けている。
22年9月末の顧客件数は362件で、前期末から20件増加。新規受注・利用開始顧客の増加とともに、既に利用中の顧客内 でも利用拡大が進んでいる。この結果、継続課金対象となる月額料金である「ストック売上高」の比率は、毎四半期90%台で推移しており、売上高拡大とともに収益構造の安定性も進んでいる。
*過去開示の契約件数は一時停止中の企業(件数)なども含まれていたが、上記の契約件数は一時停止企業および解約済企業を含めず算出。
(同社資料より)
◎コスト
成長投資として自社主催の大規模なカンファレンスを実施した。引き続き費用対効果の高い自社イベントへ注力するが通期では前期比約1億20百万円減少となる予定。
家賃関連費用は前年同期水準で推移。通期は2億24百万円減少を見込む。
(同社資料より)
第1四半期(2022年4-6月)における正社員18名の退社で、第2四半期(7‐9月)の人件費は2億89百万円。
(同社資料より)
【3-3 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
|
22年3月末 |
22年9月末 |
増減 |
|
22年3月末 |
22年9月末 |
増減 |
流動資産 |
2,481 |
2,087 |
-394 |
流動負債 |
382 |
297 |
-85 |
現預金 |
2,163 |
1,869 |
-294 |
仕入債務 |
0 |
0 |
0 |
売上債権 |
131 |
149 |
+17 |
短期有利子負債 |
164 |
144 |
-20 |
固定資産 |
390 |
290 |
-100 |
固定負債 |
560 |
671 |
+111 |
有形固定資産 |
0 |
2 |
+2 |
長期有利子負債 |
560 |
671 |
+111 |
無形固定資産 |
– |
– |
0 |
負債合計 |
942 |
968 |
+26 |
投資その他の資産 |
390 |
288 |
-102 |
純資産 |
1,930 |
1,408 |
-521 |
資産合計 |
2,872 |
2,377 |
-495 |
株主資本 |
1,907 |
1,406 |
-500 |
|
|
|
|
負債純資産合計 |
2,872 |
2,377 |
-495 |
*単位:百万円。
*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
現預金の減少等で資産合計は前期末比4億95百万円減少し23億77百万円。
負債合計はほぼ変わらず9億68百万円。
純資産は減資により同5億21百万円減少の14億8百万円。
自己資本比率は前期末の66.4%から59.2%に低下した。
◎キャッシュ・フロー
|
22/3期 2Q |
23/3期 2Q |
増減 |
営業CF |
-111 |
-486 |
-375 |
投資CF |
85 |
100 |
+15 |
フリーCF |
-26 |
-386 |
-359 |
財務CF |
3,187 |
91 |
-3,095 |
現金同等物残高 |
4,502 |
1,869 |
-2,633 |
*単位:百万円
*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
4.2023年3月期業績予想
【4-1 業績予想】
|
22/3期 |
構成比 |
23/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
1,453 |
100.0% |
838 |
100.0% |
-42.3% |
-615 |
営業利益 |
-1,216 |
– |
-1,138 |
– |
– |
+78 |
経常利益 |
-1,197 |
– |
-1,150 |
– |
– |
+47 |
当期純利益 |
-2,510 |
– |
-1,154 |
– |
– |
+1,356 |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
業績予想に変更なし。減収、成長投資を行いながらもコスト改善策を実行
業績予想に変更は無い。売上高は前期比42.3%減の8億38百万円の予想。広告事業終了により減収となるも、Unipos事業は同44.8%増の8億35百万円と、前期同様の成長率を見込む。
営業損失は11億38百万円の予想。Unipos事業の成長投資を行いながらも、コスト改善を実施し、前期並みの損失を見込む。
前述のように、想定市場の成長率以上に事業を加速させるための投資を費用対効果の高い施策に絞り込んで実施すると同時に、固定費も逓減させ、早期の黒字化を図る。
5.人的資本経営への取り組み
人的資本開示に関する関心の高まりに伴い、ルール作りがグローバルで進んでいる。
その環境・背景及び同社の取り組みは以下のとおりである。
(1)環境・背景
経済のデジタル化が進み、投資家の人的資本に対する注目が高まるに伴い、欧州連合(EU)や米国、日本は年内にも開示ルールを策定する方針である。投資家による企業の選別が一段と加速する可能性が高い。
国際標準規格ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)では、様々な項目が列挙されているが、そのうち組織文化は、「組織における心理的安全性の低下」が起因となっており、日常的な従業員の意識・行動から変革する必要があるため改善に時間がかかるため、企業としては早めに対応する必要がある。
(同社資料より)
(2)同社の取り組み
こうした環境の下、同社では、コーポレートミッション 『感情報酬を社会基盤に』の実現に向け、同社の存在意義(Purpose)実現と人的資本の価値向上に向けた各種施策を推進している。
(同社資料より)
①部門や雇用形態などの垣根を越え、「自らの力で会社をより良くしたい」という想いのもと、全社に影響を与える課題の解決や全従業員による経営や組織に対する関与を高めるための取り組み
施策 |
概要 |
社内横断プロジェクト |
全体の約4割の社員が自主的に継続して参加し、組織活性化やエンゲージメントに繋がるアウトプットを創出している。 |
発見大賞 |
Uniposへ投稿された称賛の中から全社員の投票によって、前向きな挑戦や行動をした社員を「発見大賞」として選出する。受賞者・投稿者だけでなく、周辺の関係者も含めて価値ある行動を全社員へ共有する機会を創出している。 |
ミッションバリューデー |
ミッションやバリューについて全員が考え抜き、議論し、一人ひとりがUniposの存在意義(Purpose)に対して”問いを立てる”ための時間。 |
②ミッションの実現に向け、コミットする人材像・行動指針であるバリューをもとに評価するとともに、中長期的にも意欲を高めてもらうための取り組み
施策 |
概要 |
バリューに根差した新評 価制度の制定 |
人事・評価制度を刷新した。成果に基づく評価だけではなく、バリューを理解し如何にそれを自らの発言や行動をもって体現することができたかを評価する等級制度/報酬制度を導入した。 |
全社員を対象にした新株 予約権の発行 |
中長期的な業績向上に対する意識や意欲を一層高め、優秀な人材を継続的に確保すること等を目的に無償で新株予約権を付与した。 行使可能期間は2024年5月7日から2032年5月6日まで。 |
6.今後の注目点
投資家の関心の高まりとともに企業の「人的資本」に関する情報開示のルール作りが進行している。しかし、SDGs、ダイバーシティ、インクルージョンとは掲げていても、実態とのギャップの大きい企業も沢山あるだろう。
そのギャップ解消には、組織文化の改善が必須であるが、組織における心理的安全性が低下している企業が改善を実現するためには、日常的な従業員の意識・行動から変革する必要があるため改善には時間がかかり、企業としては早めに対応する必要がある。
真の組織風土改革に向けて同社の役割は益々大きくなるものと予想される。引き続きUnipos事業のKPIである導入企業数および売上高の進捗を注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 |
監査役設置会社 |
取締役 |
6名、うち社外4名(独立役員2名) |
監査役 |
3名、うち社外3名(独立役員3名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年7月7日
<基本的な考え方>
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、事業環境が刻一刻と変化するインターネット業界において企業価値の持続的な増大を図るには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるという認識のもと、長期的かつ安定的な株主価値の向上に努めるというものであります。全てのステークホルダーを尊重し、企業の健全性、透明性を高めるとともに、長期的かつ安定的な株主価値の向上に努めるため、迅速で合理的な意思決定体制及び業務執行の効率化を可能とする社内体制を構築し、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでまいります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。