ブリッジレポート:(2196) エスクリ ウェディング業界の新しい姿を目指す

2019/07/11

 

 

渋谷 守浩 社長

株式会社エスクリ(2196)

 

企業情報

市場

東証1部

業種

サービス業

代表取締役社長兼最高執行責任者

渋谷 守浩

所在地

東京都港区西新橋2-14-1 興和西新橋ビルB棟

決算月

3月

HP

https://www.escrit.jp/

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

754円

11,982,000株

9,034百万円

15.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

16.00円

2.1%

122.05円

6.2倍

615.53円

1.2倍

*株価は 6/28終値。発行済株式数、ROE、DPS、EPS、BPSは19年3月期決算短信より。

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

26,226

839

787

359

30.39

12.00

2017年3月(実)

29,477

1,343

1,224

713

59.89

12.00

2018年3月(実)

31,700

1,950

1,830

665

55.72

12.00

2019年3月(実)

33,302

2,191

2,123

1,078

90.01

12.00

2020年3月(予)

34,400

2,500

2,400

1,450

122.05

16.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。(以下、同様)

 

株式会社エスクリの会社概要、業績動向、渋谷社長へのインタビューなどをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.業績動向
3.中期経営方針の取り組み
4.渋谷社長に聞く
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 専門式場、ゲストハウス等多様な業態で全国に展開するウェディングサービス企業。ソフトを重視した独自の事業戦略、同業他社を凌駕する売上・利益の成長が大きな強み・特長。渋谷社長のリーダーシップの下、事業基盤の強化を進め更なる成長を追求している。 
  • 人の力をコアバリューとする同社は、働きやすい環境作りに向け、ESGのうち特に「Social(社会)」について健康経営、女性活躍など様々な施策を積極的に推進している。特に「女性活躍推進に関する取り組み」については、高い評価を受けている。 
  • 2020年3月期の売上高は前期比3.3%増加の344億円、営業利益は同14.1%増の25億円の予想。粗利率、営業利益率はどちらも0.7%上昇する。中期計画最終年度の今期、過去最高益更新を見込んでいる。配当は中間、期末それぞれ前期比2円増配で合計4円増配の16.00円/株の予定。予想配当性向は13.1%。 
  • 渋谷社長に、エスクリが目指す姿、競争力強化のための取り組み、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。株主・投資家に対しては、「我々の前には大きなチャンスが拡がっています。ただし、投資家の皆様にご迷惑をかけることがないよう、出店に関して慎重になっていることだけは どうぞご理解をいただきたいと思います。今後は新たなるビジネスモデルとしてエンターテインメント性を追求し、これまでのウェディング業界にはない姿を目指してチャレンジを続けてまいりますので、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。」とのことだ。 
  • 約1時間に亘る渋谷社長へのインタビューで最も印象に残ったのは、「ブライダル業界はシュリンクではなくて、挙式数が減っていくスピードよりも、業者が減少するスピードがはるかに上であるということが、ビジネスを考えるうえでの本質であり、これをチャンスと言わずして何をチャンスと言うのか」というコメントと、「やみくもに出店することだけが成長であるとは考えていない。投資家の皆様にご迷惑をかけることがないよう、出店に関して慎重になっていることだけは どうぞご理解をいただきたい。」というコメントとのバランスだった。 
  • 「ブライダル業界=シュリンク」と「成長戦略=出店戦略」という2つの通説を疑ってみることでチャンスを見出しながら着実な成長を追求する、このスタンス、バランス感覚が、2016年の危機的状況からの急回復を成し遂げた大きな要因ともいえるだろうか。今期で3ヵ年の中期経営方針を終え、「エンターテイメント性を追求したウエディング企業」に向け次の中期計画ではどんな施策を打ち出すのか、大いに注目したい。

1.会社概要

専門式場、ゲストハウス等多様な業態で全国に展開するウェディングサービス企業。駅ビル・駅近の出店に特徴を持つ。ソフトを重視した独自の事業戦略、同業他社を凌駕する売上・利益の成長が大きな強み・特長。アニメやゲームなどのキャラクターとのコラボ企画による集客にも注力。渋谷社長のリーダーシップの下、事業基盤の強化を進め更なる成長を追求している。

 

【1-1沿革】

(株)リクルート(現:(株)リクルートホールディングス)でブライダル関連情報誌「ゼクシィ」 創刊の中核メンバーであった岩本博氏(株式会社エスクリ 代表取締役会長兼最高経営責任者)はブライダル産業に日々接している中で、他社にはないある差別化を図れば大きな成長を実現することができると考え、自らブライダル事業の立上げを決意。2003年6月に同社を設立。
その差別化要因とは「ハードではなくソフト」つまり、人財の力をコアバリューとし、多様なスタッフが能力や専門性を最大限発揮し、高収益のビジネスモデルを構築することであった。
当時はハウスウェディングなど、豪華な施設を売りとするウェディングが主流だったのに対して、ゲストにとっては利便性がより重要と考え、駅近のビル内にチャペルとバンケットを開設。煌びやかなハウスウェディングではなくても、ハードに頼らずソフトの力で、顧客は十分満足していただけると考えた。
この差別化戦略は見事に的中し、「ビルインのモデルといえばエスクリ」との評価も得て、急速に業容は拡大。他社の参入も始まる中、首都圏中心に好立地への出店を加速させるためには資金調達が必要と考え、2010年3月、東証マザーズに上場し、2012年11月には東証1部に市場変更した。
しかし、急激な出店とM&A(1年間で13会場増加)により、人的リソースが不足、既存店を含め営業戦力が希薄化したことで、2016年2月に上場以来初の業績下方修正(売上12%減、営業利益66%減)を発表。加えて、本来は立て直しに注力すべき経営幹部が部下を連れて辞任したことなどで社内は大いに動揺した。
この創業以来の危機に際し、トップとして立て直しに取り組んだのが代表取締役社長兼最高執行責任者である渋谷 守浩(しぶたに もりひろ)氏である。渋谷氏の強力なリーダーシップの下、立て直しは着実に進み、2020年3月期には2015年3月期に記録した過去最高の営業利益を5期ぶりに更新する見込みである。

 

【1-2 企業理念・ビジョン】

社名「エスクリ」は、は「STAFF CREATE」に由来する。

 

「時代が変わっても、「人の力」は変わらない。信頼できるスタッフ、信頼できるチームで、顧客の期待を超えていく。」
「人の力をコアバリューとし、多様なスタッフが能力や専門性を最大限に発揮し、お互いに活かし合える企業体をめざしています。能力の高いスタッフが最高のサービスでお客さまに満足させる。「人財の力」で成功を収めていく、人が主役のビジネスをつくっていきます。」
(同社ウェブサイトより)

 

同社がハードに頼らずソフト、最も重要な経営資源である人財が最大限に活躍できる環境作りに注力するのはこの哲学に起因する。

 

【1-3市場環境】

(1)市場環境概観
民間調査会社の調べによれば、日本の挙式披露宴・披露パーティー(国内で手配された海外挙式含む)市場は、年率1%弱のペースで市場規模縮小が続いている。
その要因は、主に以下の2点。

 

①人口減少に伴う婚姻件数の減少
比較的人口の多かった団塊ジュニア世代が40 代後半へと年齢を重ねる一方、平均初婚年齢に相当するである1980 年代後半~1990年代生まれの29~30 歳前後の人口は今後減少を辿る。

 

②結婚関連の物品・サービスに関する支出の抑制傾向
披露宴を行わない「ナシ婚」、両親とごく親しい友人のみを招待する少人数のパーティーなど、多様な価値観の広がりとともに、結婚関連の物品・サービスに関する支出を抑制し、実生活の充実を優先するといった行動が広がっている。

 

また、既に婚礼施設が供給過多の状態となっている一方で、いまだ一定のけん引力を有する新規施設開業が行われており、来館や受注を獲得するための時間的、人的コストは益々増大していくことが予想されるとしており、経営難に面するブライダル業者も増加しているようだ。
ただ、縮小傾向に歯止めがかかることは見込みにくいものの、市場規模は依然として約1.4兆円と大きく、エスクリでは独自の戦略でこの需要を着実に吸い上げて今後も更に成長を実現できると考えている。

 

◎同業他社

コード

企業名

売上高

増収率

営業利益

営業増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

2196

エスクリ

34,400

+3.3

2,500

+14.1

7.3%

9,070

6.2

1.2

15.6

2198

アイ・ケイ・ケイ

20,010

0.0

1,910

-7.6

9.5%

21,179

16.8

1.8

12.2

2418

ツカダ・グローバルホールディング

63,000

+4.7

5,500

+4.8

8.7%

29,376

9.2

0.8

7.0

2424

ブラス

10,010

+3.1

600

-13.1

6.0%

3,825

10.4

1.1

7.0

4331

テイクアンドギヴ・ニーズ

67,500

+0.9

4,000

-6.6

5.9%

13,947

8.1

0.6

10.4

4696

ワタベウェディング

51,000

+5.2

800

+38.5

1.6%

5,886

14.7

0.6

2.1

*単位:百万円、倍。業績は今期会社予想。時価総額、PER、PBRは2019年6月25日終値ベース。ROEは前期実績。

 

ウェディング各社の中で同社のROEは最も高い一方、PERは最も低い。認知度の向上と、今後の成長戦略についての理解促進が必要であろう。

 

【1-4 事業内容】

(1)セグメント
ブライダル関連事業と建築不動産関連事業の2セグメントで構成されている。

 

①ブライダル関連事業
全国32会場の直営施設に加えて提携施設を通じた挙式・披露宴の企画・運営等のブライダルサービス、ホテルスタイルの施設を通じた宿泊サービス、レストランスタイルの施設を通じたレストランサービス、各種パーティーの企画・運営の宴会サービスを提供している。

 

直営のブライダルでは、「施設スタイルにこだわらない都市型ブライダルオペレーター」として、多様化する顧客のニーズに応えるため、様々なスタイルの直営挙式・披露宴施設の運営を行っている。
顧客である新郎新婦やゲストに対する「施設の貸し切り感」、「オリジナル感」の演出を重視し、挙式・披露宴で提供される衣装、装花、引出物、料理、飲料、演出等を顧客のこだわりに合わせてトータルプロデュースする「オーダーメイド型の婚礼サービス」を提供している。

 

特に、衣装、装花、演出に関しては社内における内製化を推進しており、外注取引企業ではなく自社の従業員が直接顧客と打ち合わせを行うことにより、顧客の細かなこだわりにも対応し、一層の顧客満足度の向上を目指している。
また、運営施設のうち、バンケット(披露宴会場)が複数ある施設に関しては、それぞれのバンケットに専用のチャペル又はロビースペースを設置することにより、「施設の貸し切り感」の演出を行っている。

 

ブライダル業界では、「施設の貸し切り感」、「オリジナル感」演出のために一軒家の邸宅風施設であるゲストハウス型施設が多いが、同社は、同様の演出が可能で、かつ出店立地に最適なスタイルでの出店を実施している。
さらに、レストランやホテルの事業者が行うブライダルサービスの一括運営受託も行っている。

 

(同社ウェブサイトより)

 

②建築不動産関連事業
グループ会社の株式会社渋谷が、飲食店や小売店を中心とした施設の内外装工事の請負及び設計監理業務、戸建住宅やマンションの建築、コンテナ事業、コンサルティングサービス等を行っている。

 

【1-5 特徴と強み】

(1)ソフトを重視した独自の事業戦略
ハードには、トレンド・ブームがあり、それは必ず変化すると考える同社では、「ハードによる集客優位性の限界」を長期的成長の阻害要因ととらえ、ソフトパワーを重視している。
優秀なスタッフによる「高いオペレーションスキル」をベースに、「ブライダルパーティー会場運営ビジネス」を展開している。

 

また、様々な企業とのアライアンスによる差別化等、ハードの形態は異なっても集客を高め、過度な投資を実施しなくても高い顧客満足度を獲得できるオペレーションノウハウの構築を進めている点も、他社には見られない大きな特徴である。

 

この鍵となるのが、「人財戦略」「出店戦略」「ワンストップサービス戦略」の3事業戦略。
これら3戦略により、業界内で圧倒的な差別化を図り、ブライダル業界における新しいスタンダードおよびハードやスタイルのはやり廃りに左右されない安定的なビジネスモデル確立を目指している。

 

①人財戦略
社員が働きがいを感じ、進化し続け、組織として最大限に力を発揮することが重要であると考えおり、個人の能力開発および自由闊達で風通しのよい組織づくりに取り組んでいる。
人財が継続して働ける職場環境を創造し、なおかつ女性活躍推進企業としてライフステージの変化に伴う働き方の支援や、福利厚生の充実、キャリア形成支援等、様々な施策を推進している。
こうした取り組みが、同社最大の競争優位性であるソフトパワーの醸成に繋がっている。

 

②出店戦略
約1.4超円と言われるブライダル市場において、現在のメインストリームであるゲストハウスウェディングでさえもシェアは約2割程度と言われている。

 

これまでの経験や検証から「ハードによる集客優位性には限界がある」と考える同社は、特定のスタイルという狭い市場ではなく、全てのドメインで収益の可能性を追求している。
そのために、ホテル・レストラン・ゲストハウス・専門式場と、多様な施設スタイルで事業展開し、変化するマーケットニーズに応えることを軸としている。
同時に、新規出店のみでなく既存店の改修による集客力向上も重視しており、安定・着実な成長実現こそがステークホルダーの期待に応えることであるとも考えている。、

 

③ワンストップサービス戦略
ブライダル業界では、ドレスやヘアメイク、装花などを外部の業者に委託するのが一般的だが、そこには顧客の要望に充分応えることができないという大きなデメリットが生じる。
同社では前述のように、衣装、装花、演出に関しては社内における内製化を推進しており、こうしたワンストップサービス体制を強化し、更なる顧客満足度の向上を図っていく。

 

(2)同業他社を凌駕する売上・利益の成長
P3の同業他社比較の表の中から、エスクリおよび同社よりも売上規模の大きい3社(ツカダ・グローバルホールディング、テイクアンドギヴ・ニーズ、ワタベウェディング)の売上高及び営業利益の時系列推移を比較したのが下のグラフであるが、売上、利益ともに同社の伸びが一頭地を抜いている。
また営業利益に関しては、ツカダ・グローバルホールディングおよびワタベウェディング2社のピーク利益が2010~2011年なのに対し、同社は今期過去最高を更新する見込みであり、厳しい事業環境にありながら、売上・利益ともに拡大を続けていることは大いに注目される。
この成長のベースにあるのが、創業来の理念であり、渋谷社長が強力に推進する「ソフトの力」である。

 

 

【1-6 ROE分析】

 

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

ROE (%)

32.3

34.4

32.6

6.9

12.7

10.7

15.6

 売上高当期純利益率(%)

5.72

5.69

6.20

1.37

2.42

2.10

3.24

 総資産回転率(回)

1.53

1.57

1.33

1.18

1.15

1.18

1.28

 レバレッジ(倍)

3.69

3.86

3.95

4.27

4.55

4.32

3.79

 

直近のピークである14年3月期よりは低いものの、16年3月期を底に回復し、一般的に日本企業に期待されているといわれる8%を大きく上回っている。
今期の売上高当期純利益率は4.2%の予想であり、今期も高いROEを実現すると見込まれる。

 

【1-7 ESGへの取り組み】

社名の由来にもあるように、人の力をコアバリューとする同社は、働きやすい環境作りに向け、ESGのうち特に「Social(社会)」
について様々な施策を積極的に推進している。

 

(1)健康経営の推進
以下のような「Escrit健康経営宣言」を掲げている。

 

Escritは、お客様に最高の幸せの瞬間を届けるため、従業員一人ひとりが、心身共に健康であり、いきいきと仕事に取り組んでいくことが、最も重要だと考えています。

 

「従業員の安全と健康の確保、快適な職場環境づくりは企業活動の基礎である」という考えの下、Escrit従業員・会社が一体となって、健康で長く働くことのできる環境の整備に向けて、これから一層積極的に取り組んでいくことを宣言します。

代表取締役社長 渋谷守浩

 

①主な取り組み
「健康経営」をEscrit全体で実践していくために、健康管理(定期健康診断の結果分析、ワークライフバランスの実現)、疾病予防(感染症、生活習慣病の予防、女性特有の疾病対策)、メンタルヘルス管理、継続的な運動の促進などに取り組んでいる。

 

②評価:「東京都スポーツ推進企業」「スポーツエールカンパニー」に認定
こうした取り組みが評価され、「東京都スポーツ推進企業」「スポーツエールカンパニー」に認定された。

 

「東京都スポーツ推進企業認定」は、従業員が行うスポーツ活動の促進や、スポーツ分野におけるアスリート・団体・大会などへの支援を実施している企業を認定するもの。
エスクリでは、従業員スポーツ活動の促進のため、各種スポーツイベント、エスクリ「絆」駅伝の開催や、部活動を行っているほか、採用したトップアスリートに部活動のコーチとして活躍してもらう場を設けるなどの施策を行っている。
その他にもアスリート支援(フェンシング女子エペ日本代表の鈴木穂波選手を雇用)とスポーツ文化への貢献(卓球プロリーグの「T.T彩たま」とパートナー契約締結等)に積極的に取り組んできた。こうした取り組みが「東京都スポーツ推進企業」認定に繋がった。

 

「スポーツエールカンパニー」制度は、運動不足である「働き盛り世代」のスポーツの実施を促進し、スポーツに対する社会的機運の醸成を図ることを目的として、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業をスポーツ庁が認定するもので、従業員の健康管理を考え戦略的に取り組んでいる企業の社会的評価の向上を図ることを目的としている。

 

(2)女性の活躍に向けた各種施策と実績
①主な取り組み
ウエディングプランナー、ドレススタイリスト、フラワーコーディネーターなど、女性が活躍する場面が多い同社では、19年3月末で全社員のうち7割が女性社員。
性別やライフステージに左右されず、誰もが実力によって正当に評価される会社を目指すとの想いから、女性活躍推進を中期経営計画の方針の一つとしている。

 

この方針に基づき以下のような「女性活躍推進に関する取り組み」を行っている。

 

取り組み

概要

女性の産前期間の不安解消と体調管理しやすい環境を整備

・「スタート面談」の実施

安心して産前期間を過ごせるように体調面や業務面で配慮してほしいことを上司や人事担当者と面談する。

 

・通院時間の確保

体調管理を行うために、勤務時間中に検診のための通院時間を確保する。(男性の付き添いも可能)

産前産後制度の拡大と男性の休暇取得促進

・産前休業の拡大

取得できる産前休業を法定の産前6週から産前8週に拡大する。

 

・男性の休暇取得促進

子どもが誕生した日から翌々月末までの間に最大8日間の休暇取得を推奨する。(出産時の立会にも使用可能)

復職前面談を実施し、円滑な復職を支援

・「カムバック面談」の実施

復職後の働き方を具体的にイメージしてもらえるように勤務時間の希望等について、上司や人事担当者と面談する。

復職後における子育てと仕事の両立を支援

・慣らし保育応援

子どもの慣らし保育期間に関する出勤を免除する。

 

・短時間勤務・子の看護休暇の拡大、時間外勤務の制限

育児短時間勤務を、子どもが小学校入学までに拡大する。

時間外勤務の制限を、子どもが小学校入学までに拡大する。

子の看護休暇を、子どもが中学校卒業までに拡大する。

 

加えて、女性のみに限らず、全社員に働きやすい環境を提供したいとの考えから、「労働時間の適正化に関する取り組み」「女性相談窓口の設置」「管理職者向けマネジメント研修」「全社員向け研修」「女性社員向けキャリアアップ研修」等にも注力している。

 

②実績
こうした取り組みの結果、女性活躍は下記のグラフのように目に見える実績となって表れているほか、「支援制度を活用することで育児も仕事も楽しんでいます。将来的には、働く女性社員の目標になれるようになりたいですね。」(同社ウェブサイトより)といった声も寄せられており、従業員満足度は着実に高まっているようだ。

 

時短勤務者数は50名を目標としていたが、19年3月末に達成したため次の目標を策定中。
女性管理職比率は2022年度 50%を目標としている。

 

③評価:厚生労働大臣より「えるぼし」の認定取得
2018年7月、ブライダル企業として初めて女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づき、女性の活躍推進に関する取り組みが優良な企業として、厚生労働大臣より「えるぼし」の認定をうけた。

 

「えるぼし」認定は、女性活躍推進法により、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業に対して、厚生労働大臣が認定する制度で、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの評価項目がある。
「えるぼし」は、現在約2万社が申請し、約600社が認定されている狭き門だが、上記のような女性活躍推進の取り組みが、基準を超えていることが認められ認定を取得することができた。

 

(3)全契約社員の正社員化を実施
従業員の長期的なキャリア形成の観点から、2018年8月、契約社員全員の正社員化を決定した。
同社では、ウエディングプランナー、ドレススタイリスト、フラワーコーディネーター等多数の職種において、契約社員が多数活躍しているが、契約社員制度を廃止し、新設した転勤のない正社員制度(地域限定正社員)へと転換する。
現在契約社員として従事している従業員は、社内で重要な役割を担っており、同社では雇用をとりまく環境の変化や、女性の社会進出の状況をふまえ、従業員が安心して長期キャリアの形成に取り組めるようにする。

2.業績動向

(1)2019年3月期決算概要

①業績概要

 

18/3月期

構成比

19/3月期

構成比

前期比

予想比

売上高

31,700

100.0%

33,302

100.0%

+5.1%

+0.0%

売上総利益

17,799

56.1%

18,695

56.1%

+5.0%

-0.4%

販管費

15,849

50.0%

16,504

49.6%

+4.1%

-0.7%

営業利益

1,950

6.2%

2,191

6.6%

+12.4%

+1.9%

経常利益

1,830

5.8%

2,123

6.4%

+16.0%

+3.6%

当期純利益

665

2.1%

1,078

3.2%

+61.9%

+2.7%

*単位: 百万円

 

増収増益、計画通りの着地
売上高は前期比5.1%増の333億円。両事業とも増収。ブライダル関連では新店開業が寄与した。
営業利益は同12.4%増の21億円。新店や台湾の開業コスト増があったが各種経費改善でコストコントロールに成功。
3期連続の2桁増益となった。

 

②セグメント別動向

 

18/3期

構成比

19/3期

構成比

前期比

売上高

         

 ブライダル関連

27,289

86.1%

28,671

86.1%

+5.1%

 建築不動産関連

4,410

13.9%

4,631

13.9%

+5.0%

 合計

31,700

100.0%

33,302

100.0%

+5.1%

セグメント利益

         

 ブライダル関連

3,125

11.5%

3,016

10.5%

-3.5%

 建築不動産関連

229

3.8%

282

4.9%

+23.1%

 調整額

-1,404

-1,107

 合計

1,950

6.2%

2,191

6.6%

+12.4%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

(ブライダル関連)
増収減益。
前期出店のさいたま新都心の通期稼働に加え、4月開業の広島、9月開業の渋谷も稼働を開始したため増収となったが、広島と渋谷、台湾の開業コストの発生により、セグメント利益は前期を下回った。
新規2事業所出店、8か所の既存店改修など設備投資額は10億54百万円。

 

◎受注状況
Core Bridal Service、New Bridal Serviceともに受注は堅調に推移した。受注残も2桁の伸び。

 

*Core Bridal Service

 

18/3期

19/3期

前期比

施行件数

5,166

5,304

+2.7%

受注件数

6,566

6,989

+6.4%

受注残件数

3,600

4,064

+12.9%

平均組単価

3,763

3,779

+0.4%

*単位:百万円

 

 

*New Bridal Service

 

18/3期

19/3期

前期比

施行件数

2,836

3,259

+14.9%

受注件数

3,286

3,790

+15.3%

平均組単価

1,448

1,673

+15.5%

*単位:百万円

 

*Core Bridal Service:エスクリ直営施設の列席者30名以上の挙式・披露宴を対象。
*New Bridal Service:子会社、運営受託、少人数婚、得ナビ(提携会場分)、リゾート婚の数値が含まれる。
海外送客分については、上記と重複する顧客もいるため数値から除外。

 

(建築不動産関連)
増収増益。
計画どおり建設工事が竣工したことに加え、不動産リノベーション物件の販売があった。

 

③財務状態とキャッシュ・フロー
◎主要BS

 

18/3月末

19/3月末

 

18/3月末

19/3末

流動資産

8,747

7,661

流動負債

10,422

8,852

現預金

4,804

4,814

仕入債務

1,543

1,464

売上債権

540

298

短期借入金

3,106

2,520

販売用不動産

1,315

810

固定負債

10,192

8,945

固定資産

18,346

17,452

長期有利子負債

7,159

5,720

有形固定資産

13,162

12,182

負債合計

20,615

17,798

投資その他の資産

5,031

5,182

純資産

6,479

7,316

資産合計

27,094

25,114

利益剰余金

5,304

6,208

*単位:百万円。

   

負債純資産合計

27,094

25,114

     

自己資本比率

23.9%

29.1%

 

販売用不動産、有形固定資産(建物及び構築物)の減少などで資産合計は前期末比19億円減少の251億円。
借入金及び社債の減少などで負債合計は同28億円の減少で177億円。
利益剰余金が同9億円増加し、純資産は同8億円増加の73億円。
自己資本比率は前期末より5.2%上昇し、29.1%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18年3月期

19年3月期

増減

営業CF

1,826

3,164

+1,338

投資CF

-2,098

-831

+1,267

フリーCF

-272

2,333

+2,605

財務CF

-855

-2,341

-1,485

現金同等物残高

4,568

4,568

+0

*単位:百万円。

 

税金等調整前当期純利益の増加等で営業CFのプラス幅は拡大。
投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFはプラスに転じた。
借入金及び社債の返済で財務CFのマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは変わらず。

 

 

④19年3月期の主な取り組み
◎新規出店

形態

名称・所在地

開業時期

婚礼施設 LAGUNAVEIL HIROSHIMA(ラグナヴェール広島):広島県広島市

2018年4月

婚礼施設 LAGUNAVEIL ATELIER(ラグナヴェールアトリエ):東京都渋谷区

2018年9月

ドレス店舗 PRIMACARA表参道店:東京都港区

2018年7月

 

ドレス店舗は、オリジナルウエディングドレスブランド「PRIMACARA」のブランド力向上と、ドレスを入口とした婚礼ニーズの創出・獲得のため、ブランドのイメージを表現する旗艦店としてオープンした。
表参道駅徒歩2分の好立地であり、天井高6mの広々としたメインディスプレイなどドレスを一層輝かせる設備も備えている。

 

◎海外事業
2018年3月に台湾子会社が直営サロンを開業した。
インバウンド挙式需要の増加に伴い、さらなる顧客獲得を目的としている。
人気の高いリゾートウェディングに加え、同社の強みであるアクセスが良い国内好立地での挙式に観光視点も取り入れた提案を実施し、インバウンド挙式のニーズ創出を目指している。

 

◎リニューアル
運営施設8か所(東京都3か所、大阪府1か所、福井県1か所、富山県1か所、栃木県2か所)のリニューアルを行った。
リニューアル施設には、同社アートディレクターの森本千絵氏がコンセプトを手がけた会場もあり、ナチュラルテイスト志向の顧客や、フォトジェニックな会場を希望する顧客など、多様化するニーズに応えるとともに、既存施設の付加価値を高めることで、さらなる集客力と顧客満足度の向上を目指している。

 

◎ANA、JALの両社と提携
2016年12月にスタートした全日本空輸株式会社(ANA)との提携に続き、2018年9月より日本航空株式会社(JAL、東証1部、9201)と提携し、結婚式の費用総額に応じて、マイルがたまるサービスをスタートした。多様化する結婚式のニーズやモチベーションに応え、新たな顧客の取り込みと市場の活性化に取り組んでいく。

 

◎サマンサタバサと共同企画
株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド(東証マザーズ、7829)とコラボレーションし、2019年2月より新ウエディングプラン「Samantha Wedding」の販売を開始した。
会場装飾やウエディングアイテムの他、オリジナルのウエディングケーキ、サプライズコンテンツなど、サマンサタバサの世界感あふれるプランを提供する。

 

◎新たなコラボレーションの取り組み
ディズニー、サンリオ、モンスターハンターに続き、新たに世界的な人気を誇る「ポケットモンスター」との取り組みを開始した。
新しいウエディングプランとして2019年2月から「ポケットモンスターブライダルフェア(結婚式の無料相談会)」の予約受付を開始しした。
同社では、ナシ婚や結婚式実施率の低下が進むブライダル業界を活性するべく、ドレス、フラワー、サービスなどを自社で内製化している強みを最大限に活かし、これまでも、数々の企業とタイアップを実施し、様々なブライダルフェアの開催など、他社にはないコンテンツを発信してきた。

 

今回の「ポケットモンスター」との取り組みでは、ブライダルフェアの参加特典として「オリジナルペーパーバッグと婚姻届」を進呈。またこのブライダルフェアを通して成約した新郎新婦には、成約特典として「ピカチュウのウェルカムボード」をプレゼントするほか、結婚式当日にピカチュウがお祝いに来てくれるグリーティングを用意。会場もピカチュウで彩られ、新郎新婦もゲストも楽しめるウェディングプランとした。

(2)2020年3月期業績見通し

①業績見通し

 

19年3月期

構成比

20年3月期(予)

構成比

前期比

売上高

33,302

100.0%

34,400

100.0%

+3.3%

売上総利益

18,695

56.1%

19,529

56.8%

+4.5%

販管費

16,504

49.6%

17,029

49.5%

+3.2%

営業利益

2,191

6.6%

2,500

7.3%

+14.1%

経常利益

2,123

6.4%

2,400

7.0%

+13.0%

当期純利益

1,078

3.2%

1,450

4.2%

+34.5%

*単位:百万円。予想は会社側発表

 

増収増益、利益率も上昇。利益は過去最高更新へ。
売上高は前期比3.3%増加の344億円、営業利益は同14.1%増の25億円の予想。粗利率、営業利益率はどちらも0.7%上昇する。中期計画最終年度の今期、過去最高益更新を見込んでいる。
配当は中間、期末それぞれ前期比2円増配で合計4円増配の16.00円/株の予定。予想配当性向は13.1%。

 

 

②セグメント別動向

 

19/3期

構成比

20/3期(予)

構成比

前期比

売上高

         

 ブライダル関連

28,671

86.1%

30,398

88.4%

+6.0%

 建築不動産関連

4,631

13.9%

4,002

11.6%

-13.6%

 合計

33,302

100.0%

34,400

100.0%

+3.3%

セグメント利益

         

 ブライダル関連

3,016

10.5%

3,633

12.0%

+20.4%

 建築不動産関連

282

4.9%

90

2.2%

-68.1%

 調整額

-1,107

-1,223

 合計

2,191

6.6%

2,500

7.3%

+14.1%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

(ブライダル関連)
増収増益。
前期出店の広島・渋谷が通期で稼働する。
受注・単価は前期水準を見込んでいる。
コストには、海外事業(リゾート婚・インバウンド婚)拡大による先行費用1.2億円を含んでいる。
(建築不動産関連)
減収減益。
受注状況及び資材高騰や人材不足等の市場環境を考慮し、減益の見込。
不動産リノベーションは、保有物件はあるが計画には見込んでいない。

 

3.中期経営方針の取り組み

同社では、2018年3月期を初年度、2020年3月期を最終年度とする中期経営方針に基づいて6つの施策を推進中。
前期終了時点での進捗を以下のように自己評価している。

 

中期経営方針 既存事業の収益性向上と新たな収益基盤の形成

~毎期、確実な利益成長を遂げる~

 

(各種施策と自己評価)

施策 進捗 評価
新規出店 ・2018年4月に広島、9月に渋谷を新規開業。

・前期出店のさいたまを含め堅調に推移。

既存店強化 ・過去最大級8施設のリニューアルを実施。効果に差はあるが受注状況は改善。

・人材育成と高単価を保つ仕組化については引き続き注力。

新規事業の推進 ・インバウンド婚ニーズの獲得を目指し、台湾に現地法人を設立して営業を開始。

・沖縄・ハワイなどのリゾート婚も受注増加。

コスト改善 ・施設リニューアルに合わせ、余剰スペースに別テナントの事務所を集約、家賃等を削減。

・その他、水道光熱費、備品消耗品、リネン等、様々なコスト改善を推進

プロモーション戦略 ・キャラクターを活用した商品の開発など、他企業とのアライアンスを強化。

・今期は、サマンサタバサ社との共同企画、ポケモンとのコラボ等を開始。

レディ・ファースト戦略 ・女性社員が更に活躍できるよう、様々な職場環境の改善施策を推進。

・女性の育児、復職に関わるきめ細やかなサポートが評価され、厚生労働大臣より

「えるぼし」認定を取得。

 

既存店強化については、改修という観点では、しっかりとした投資を実行することができたが、効果の発現はこれからという点もあることに加え、人材育成については半永久的なモノであるという意味で△としている。また高単価を保つ仕組みについては引続き注力する。
コスト改善は、あらゆる角度から検討を進め実績を上げている。

 

プロモーション戦略については、今後も様々なアイデアを具現化し、他社には真似のできない同社ならではの付加価値の創出を目指す。

 

レディ・ファースト戦略については前述の通り、社内外から高く評価されている。

4.渋谷社長に聞く

渋谷社長に、エスクリが目指す姿、競争力強化のための取り組み、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「社長に就任されたのが2016年4月、その2か月前に毎期上方修正を繰り返してきた御社が初めて下方修正を余儀なくされ、社内にも相当な混乱があったということですが、その時、社長としてまず何に取り組まれたのでしょうか?」

 

A:「どん底に落とされ、残った社員全員の力を借りて結果的には1年後には上方修正ができるまで這い上がることができたわけですが、当時取り組んだのは、「すべてをやり直す」ということでした。特に競争原理の導入による支配人クラスの徹底的な鍛え直しに注力しました。やっと上手く機能し始めましたが、私の求めている域には到底達していません。今後も手を抜くことなく教育を続けていきます。」
初めは会長の岩本とは仕事の上の付き合い(※筆者注:渋谷氏は奈良県で100年以上続く超優良建設会社である株式会社渋谷の4代目オーナー社長。エスクリの内装工事を手掛けていた)でしたが、意気投合していった際、是非エスクリの成長に社内で力を貸して欲しいと熱く誘われ、いわば男気の世界で2013年に入社しました。

 

2016年2月の下方修正に際し、本来であれば社内一丸となってその危機に立ち向かわなければいけないのに経営陣の一人が社員を連れて辞任するという事態となり、ウェディング事業が本職ではない私に立て直しの白羽の矢が立ったわけです。
ただ、私もこの会社に縁あって入ったからには何としてでもこの危機を乗り越えようと腹を括りました。

 

どん底に落とされ、残った社員全員の力を借りて結果的には1年後には上方修正ができるまで這い上がることができたわけですが、当時取り組んだのは、「すべてをやり直す」ということでした。

 

ウェディングが本業ではない私ですが、企業経営者としては見る目も行動にも自信はある。そんな私からすれば、当時の当社は全てが隙だらけ、穴だらけでした。
そこで、まず、食材、飲料、ドレスの仕入まで全てに関わり、加えて、マーケティング、支配人の教育にも手を付けました。

 

特に、各会場のトップである支配人クラスの教育には徹底した実力主義を導入しました。
それまでの当社は一旦支配人になるとよほどのことが無い限り降格は無かったのですが、現実を見ればとても支配人として人の上に立てない者もいました。そんな人間がそのまま支配人として在籍していても株主や社員が幸せになれるはずもないので、徹底的に鍛え直すこととしたわけです。
加えて、副支配人制度を強化して、支配人を降格させても事業がしっかりとワークするよう、実力ある副支配人を育成することとしました。そうすることで支配人は、支配人は降格させられないためには実績を挙げなければならないという競争が働きます。
私の目が届かないところでも競争原理が機能するような仕組みを作ったという点が最も大きな改革だったと思います。

 

その後も、競争原理を広げ、東日本支社と西日本支社の2支社体制、支配人をまとめる部長、部長をまとめる支社長、支社長をまとめる本部長の配置と、組織をしっかりと機能させることに注力しました。

 

5年近く経ち、着手する前から比べればかなりの進捗、世間一般的に言えばよくここまでとも言われ、やっとうまく機能し始めたかなとは思いますが、私の求めている域には到底達していないというのが正直な感想です。
なので、この点は今後も手を抜くことなく教育を続けていきます。

 

Q:「御社最大の強み、競争優位性は人の力、ソフトの力であろうと見ていますが、競争に勝ち続けるにはそれらを常に磨き上げていく必要があると思います。その点で社長が取り組んでいることはどんな事でしょうか?」

 

A:「仕事しやすい環境作りにも当然取り組んでいますが、とにかく教育です。私自身としては、私が講師となっての勉強会や、研修会を開催しています。また月に1度の全国テレビ会議、全国33会場でのミーティングなどを通じて、商売の基本の「基」を徹底的に教え続けています。全社員の意志やベクトルを統一することは私の大きなミッションだと考えています。」

 

仕事しやすい環境作りにも当然取り組んでいますが、とにかく教育です。
会社としての取り組みとしては研修制度において、今のトレンドを把握したり、取引先にご協力いただいての新商品の開発や発表を行ったり、といったことを常に行っています。
私自身としては、私が講師となっての勉強会や、研修会を開催しています。一つは、鍛えがいのある社員のレベルアップの場、もう一つは今後の当社を牽引してもらう上層部育成の場です。

 

私は商売において、魚を売るのも、車を売るのも、家を売るのも、結婚式を売るのも全部基本的には同じことだと思っています。ですので、物売りとしてお客様の心理をどうやってこちらに向けるか、その基本の「基」を徹底的に教え続けています。

 

また全社員に私のメッセージを届けることも大変重要なので、月に1度全国テレビ会議で、当社の千数百名の社員を対象に講話を行っているほか、毎月2回のペースで全国33会場を順次全て回り、各会場で昼ご飯を食べながらのランチミーティングを行っています。なぜこれを始めたかというと、ある時地方の社員が、「テレビ会議でしか見たことない社長が来てくれた」とSNSに書いたのがきっかけです。
私は芸能人でもないのに「テレビでしか見たことが無い人」と社員に言われたら、これはいけないと。
朝5時に起きて飛行機、電車で会場に着き、昼の会議を終えたらとんぼ返りで東京に戻ります。
本音を言えば、1泊してその土地の美味しいものでも食べてゆっくりしたいけれど、それはしない。

 

やはり、我々のようなベンチャー企業が成果を出せるか否かは、トップがどれだけ動いたか次第です。
大手企業のように黙っていても売上が付いてくるような規模ではないので、やはりトップが動かないと。
私のスケジュールは見られるようになっているので社員は私の動きをしっかり見ています。
私は社員によく言うんです。「忙しい忙しいと言うけど、俺のスケジュールを1回見てごらん。絶対俺より暇だから。」と。
そう言い切れるぐらいは働いています。

 

こうやって全社員の意志やベクトルを統一することは私の大きなミッションだと考えています。

 

Q:「今度は事業展開について伺います。社長はブライダル業界の現在および今後の事業環境、業界環境をどう認識していますか?その中でエスクリはどんな姿を目指していこうと考えていますか?」

 

A:「よくウェディング業界はシュリンクしていると言われますが、人口減少と支出抑制の下で結婚式数が増える訳はないので、全く自然な流れです。ですから、緩やかに挙式数が減っていくスピードよりも、急激に業者が減少するスピードははるかに上であるということが、ビジネスを考えるうえでの本質であり、大きなチャンスです。このチャンスを活かし、他社には真似のできない競争優位性でマーケットを開拓していこうと考えています。」

 

現在、「ナシ婚」であったり、海外挙式であったりとニーズが多様化してきており、また同時に結婚式をされる方が少なくなってきて業界自体がシュリンクしてるとよく言われますが、私はシュリンクしていると表現すること自体が問題の本質をついていない、当を得ていないと思っています。

 

人口は減少し結婚するカップルはおのずと減少している。また、個人の収入も決して増加していない。
なので、こうした状況下で結婚式数が増える訳はないので、シュリンクではなく、全く自然な流れなんです。

 

そこで自然な流れだと考えれば攻め方が変わります。シュリンクしてると言うから印象も悪いし、下向きムードになるんですが、私は全然そうは思ってなく、この自然な流れにこそビジネスチャンスがあると考えています。
現在でもまだ1兆4000億円の大きな市場があるわけで、一方、廃業する同業者が加速度的に増加しているんです。
100年企業である株式会社渋谷の経営者でもある私としては、これをチャンスと言わずして何をチャンスと言うのかという認識です。
つまり、シュリンクではなくて、緩やかに挙式数が減っていくスピードよりも、業者が減少するスピードがはるかに上であるということが、ビジネスを考えるうえでの本質なのです。

 

また前期には台湾子会社が直営サロンを開業したことに加え、ハワイに初めてのチャペルをオープンしました。インバウンド挙式需要や海外挙式需要の取り込みも重要な施策です。ただ、海外は慎重なジャッジが必要と考えています。

 

いずれにせよ、挙式数が減っていくスピードよりも、業者が減少するスピードがはるかに上というチャンスを活かし、他社には真似のできない競争優位性でマーケットを開拓していこうと考えています。

 

Q:「他には如何でしょうか?」

 

A:「他社との違いを打ち出すには「エンターテインメント性」を重視していきます。「エンターテインメント性のあるウェディングと言えばエスクリ」というブランディングを追求、確立させていきたいと考えています。」

 

ニーズの多様化が進み、価格は安くて当たり前という認識の中で、他社との違いを打ち出すには「エンターテインメント性」を重視していきます。

 

当社がまず最初に取り組んだのが、ディズニーとの提携です。当社会場では、ディズニーのプリンセスをモチーフにした挙式披露宴を行えます。他にも、サンリオ、ポケモン、モンスターハンターとのコラボや、女性ブランドであるサマンサタバサとの共同企画も立ち上がりました。

(同社資料より)

 

競合他社が集客に苦しむ中、当社では「ゼクシィ」などの通常媒体以外に、これら当社独自の企画によっても集客しています。さらには、この様な企画のお客様は、「ゼクシィ」などの媒体のお客様と違い、もともとは「お金も時間もかかるし、結婚式をどうしよう」と思っていた方が多いです。それが当社のイベントに参加し、結婚式の良さを知り、さらに「ディズニーのプリンセスのようになれるのなら」「ピカチューやキティちゃんが来てくれるのなら」結婚式を挙げようと。つまり需要を掘り起こしてもいます。

 

今後はこうしたエンターテインメント性を強く打ち出し、「エンターテインメント性のあるウェディングと言えばエスクリ」と、創業時の「ビルイン型ウェディングと言えばエスクリ」と同様な、ブランディングを追求、確立させていきたいと考えています。

 

Q:「では次に、中計経営方針について簡単なレビューをお願いします。まず、新規事業の推進を「-」としていますがこの意味は何でしょうか?」

 

A:「海外事業についてはむやみにリスクをとることはせず、今期はいったん様子を見ます。様子を見てからの次の動きを見極める考えです。」

 

先程申し上げましたように、前期には台湾子会社が直営サロンを開業しました。またハワイに初めてのチャペルをオープンしました。インバウンド挙式需要や海外挙式需要の取り込みも重要な施策です。ただ、今期はいったん様子を見ます。この様子を見てから次の動きを見極めないとなりません。昔のように「では次どこをやるか」ではなく、このマリーナチャペルの動向を見たうえで、我々の海外に対する攻め方が正しいかどうかのジャッジを行い、正しければそこから動き始めます。
一部の投資家の方は、「次はどうするか? 」とおっしゃるんですが、投資家の皆様の大切な資金にしっかりとリターンを残してこそ我々の仕事と考えていますので、やみくもな攻め方はしません。こういう意味で今期は様子を見る年としています。そういう意味で「-」としています。

 

Q:「では、二重丸のコスト削減、レディ・ファースト戦略についてもコメントをお願いします。」

 

A:「コスト削減に関しては様々なことに取り組みました。。また、女性がしっかり働ける、楽しく働ける、長く働ける環境を作り上げることができつつあると思います。」

 

コスト削減に関しては、これまで急激に出店、展開するのみで、様々なコストについてスケールメリットを活かした交渉をしてこなかった。それをこの2年間でひとつ1つを見直し、交渉そして削減をしました。

 

レディ・ファースト戦略に関しては、当社の社員の7割が女性ですので、女性の体調とか結婚、出産を考えると、女性にどうやって活躍してもらうかという点は、当社の命運がかかっているといえるほどの重要な事項だと思い、取り組んでいます。
前期は厚生労働大臣から、「えるぼし認定」を頂くことができました。
土日が出勤という環境下でも女性がしっかり働ける、楽しく働ける、長く働ける環境を作り上げることができつつあると思います。

 

Q:「続いて現在の課題と社長が認識していることは何でしょうか?」

 

A:「社員が若いということですね。ベンチャー企業から大人企業にならないといけないとメッセージを頻繁に送っています。私の代でエスクリを強固なエンターテイメントウエディング企業に成長させるとともに、経営陣に入るにふさわしい大人を育成すること、これが私のこれからのミッションではないかと考えています。」

 

様々な課題がありますが、やはり社員が若いということですね。ベンチャー企業から大人企業にならないといけないとメッセージを頻繁に送っています。若さのエネルギーも重要ですが、自分を律することも重要です。でも、そんな若い人達が支えている企業だから、彼らを一日も早く大人力のある社員に育ててあげなければいけないと感じています。
そのためには若い彼らでも会社がしっかり回るような仕組みを作ってあげることが必要だと思いますので、私の代でエスクリを強固な企業に成長させるとともに、経営陣に入るにふさわしい大人を育成すること、これが私のこれからのミッションではないかと考えています。

 

Q:「ありがとうございます。では最後に株主や投資家に社長からのメッセージをお願いいたします。」

 

A:「我々の前には大きなチャンスが広がっています。ただし、成長戦略としては、やみくもに出店することだけが成長であるとは考えていません。投資家の皆様にご迷惑をかけることがないよう、出店に関して慎重になっていることだけは どうぞご理解をいただきたいと思います。今後は新たなるビジネスモデルとして「エンターテインメント性」を追求し、これまでのウェディング業界にはない姿を目指してチャレンジを続けてまいりますので、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。」

 

先程も申し上げましたように、現在のウェディング業界はシュリンクではなくて、緩やかに挙式数が減っていくスピードよりも、急激に業者が減少するスピードははるかに上であるということが、ビジネスを考えるうえでの本質であり、我々の前には大きなチャンスが広がっています。
株式を上場しているメリットを活かし、その信用力、与信力をもって、攻めるべき方向性はすでにしっかりと見極めることができています。

 

ただし、成長戦略としては、やみくもに出店することだけが成長であるとは考えていません。投資家の皆様が大切なお金を我々に投資頂いている以上は、今の時代はよほど吟味して出店をしないと、その出店が足かせになって減損に繋がる可能性も高い。これほど申し訳ないことはないので、投資家によっては物足りないと感じられるかもしれませんが、我々が投資家の方以上に出店に関して慎重になっていることだけは どうぞご理解をいただきたいと思います。

 

一方、我が社も設立から16年も経ているわけですから、古い会場に対するリニューアル工事にも投資を行っています。
古い会場をリニューアルして、リニューアルフェアを打つとかなりの集客効果が望めます。
つまりリニューアル投資も立派な出店であるということもご理解いただきたいと思います。

 

今後は新たなるビジネスモデルとして「エンターテインメント性」を追求し、極端な表現ですが、マジックショーを見に来るような、歌手のライブを見に来るような感覚のウェディングパーティーにしていきたい。
呼ばれるゲストが「エスクリで披露宴やるならぜひ行きたい」と思われるようする。新郎新婦に価格やアップグレードで訴求するだけではなく、ゲストが喜ぶ式場だから新郎新婦も喜び、選んでくれる。こんな、これまでのウェディング業界にはない姿を目指してチャレンジを続けてまいりますので、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。

 

5.今後の注目点

約1時間に亘る渋谷社長へのインタビューで最も印象に残ったのは、「ブライダル業界はシュリンクではなくて、緩やかに挙式数が減っていくスピードよりも、業者が減少するスピードがはるかに上であるということが、ビジネスを考えるうえでの本質であり、これをチャンスと言わずして何をチャンスと言うのか」というコメントと、「やみくもに出店することだけが成長であるとは考えていない。投資家の皆様にご迷惑をかけることがないよう、出店に関して慎重になっていることだけは どうぞご理解をいただきたい。」というコメントとのバランスだった。

 

「ブライダル業界=シュリンク」と「成長戦略=出店戦略」という2つの通説を疑ってみることでチャンスを見出しながら着実な成長を追求する、このスタンス、バランス感覚が、2016年の危機的状況からの急回復を成し遂げた大きな要因ともいえるだろうか。
今期で3ヵ年の中期経営方針を終え、「エンターテイメント性を追求したウエディング企業」に向け次の中期計画ではどんな施策を打ち出すのか、大いに注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役の構成

組織形態 監査役会設置会社
取締役 4名、うち社外2名
監査役 3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年6月20日

 

<基本的な考え方>
当社は、顧客、株主、取引先、社員、社会というすべてのステークホルダー(利害関係者)から信頼を得ることが企業価値を持続的に向上させていくことにつながると考えております。そのためには、経営の効率性と透明性を確保し、健全性の高い組織を構築することが必要不可欠であり、コーポレート・ガバナンスに対する取り組みが極めて重要であると考えております。
そのため、当社は、社員全員が当社の基本的な価値観や倫理観を共有するために「企業行動規範」を制定し、周知徹底を図っております。

 

また、当社は、経営の効率性を確保するため、企業の成長による事業の拡大に合わせて組織体制を適宜見直し、各組織部門の効率的な運営および責任体制の確立を図っております。
さらに、経営の透明性を確保するため、監査役会による取締役会の業務執行ならびに法令、定款および当社諸規程の遵守を図るべく内部統制機能を充実させ、迅速かつ適切な情報開示を実現すべく施策を講じております。
今後も企業利益と社会的責任の調和する誠実な企業活動を展開しながら、株主を含めたすべてのステークホルダーの利益に適う経営の実現および企業価値の向上を目指して、コーポレート・ガバナンスの充実を図ってまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

開示内容

【補充原則4-1-2 中期経営計画】 当社は現在、中期経営計画は方針のみ開示し、数値目標は開示しておりませんが、単年度では、当該期初に業績予想を開示し、予想数値との乖離が生じた際は、詳細な要因分析を行い、次期以降の計画に反映しております。
【補充原則4-10-1 取締役の選任・報酬などの重要な事項に関する検討にあたり独立社外取締役の適切な関与・助言】 取締役および経営幹部の選任については、独立社外取締役が出席する取締役会において各候補者について審議のうえ決定しております。報酬については、取締役会で一任を受けた代表取締役社長が、株主総会で決定された報酬の範囲内で、役員報酬に関する社内規程に基づき決定しており、現在は独立社外取締役の関与及び助言は得ておりませんが、今後、より透明性を確保できるような体制構築に向けて取り組んでまいります。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4. いわゆる政策保有株式】 当社の政策保有株式にかかる基準については次のとおりであります。

(1)政策保有目的による株式については、原則としてこれを保有しない。

(2)今後、持続的な企業の向上に資する案件が出てきた場合には、そのリスクとリターン等に関する十分な議論に加え、保有の目的を明確化させたうえで、取締役会の決議を経て判断をする。

【原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】

 

「IR活動の基本方針」として、HP上に以下の方針を掲載しております。

 

当社に関する情報を公平かつタイムリーに提供し続けることをIR活動の基本方針としています。これらの活動を通して、株主・投資家の皆様とのコミュニケーションを図り、健全な企業経営の実現、株主価値の最大化を目指してまいります。また、株主との対話については、管理本部を管掌する取締役を、IR担当取締役としており、個別面談を含めた積極的な対応をしております。

更に当社の情報を多くの方々に届けるために、アナリスト向けの説明会を開催しております。

https://www.escrit.jp/ir/disclo/

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