(8275:東証1部) フォーバル 事業拡大のための先行投資 続く第4四半期の業績に注目
今回のポイント |
・19/3期第3四半期は、前年同期比9.6%の増収、同6.2%の経常増益。売上面はアイコンサービスが順調に拡大したフォーバルビジネスグループや光回線サービスやISPが順調に拡大したフォーバルテレコムビジネスグループや単価の高いスマートフォンの比率が高まったモバイルショップビジネスグループなどすべてのセグメントで増加した。一方、利益面は、人件費が増加したフォーバルビジネスグループやモバイルショップビジネスグループで減少したものの、売上が増加したフォーバルテレコムビジネスグループや総合環境コンサルティングビジネスグループで増加した。・19/3期の会社計画は、前期比3.2%の増収、同4.7%の経常増益の期初予想から修正なし。売上面は、アイコンサービスなどの経営コンサルティング分野の増加によるフォーバルビジネスグループの増加に加え、フォーバルテレコムビジネスグループやモバイルショップビジネスグループの増加を見込んでいる。利益面でも、フォーバルビジネスグループやフォーバルテレコムビジネスグループなどの増収効果を見込んでいる。配当も前々期より2円増配となった前期から1円増配の1株当たり年間22円で、期初の予定を据え置き。
・続く第4四半期の業績は、来期の成長を占う上で非常に重要な役割を担っている。上期に積極的に採用したコンサルタントの生産性を早期に向上させることができるのか、次四半期のフォーバルビジネスグループの業績動向が注目される。また、同社の業績拡大には、主力ビジネスである営業利益との連動性が高いアイコン売上の拡大が不可欠である。アイコン売上の先行指標となる今下期のよろず経営相談件数とアイコンサービス導入件数にも注目したい。 |
会社概要 |
中小・中堅企業を対象に「情報通信分野」・「海外分野」・「環境分野」・「人材・教育分野」の4分野に特化した次世代経営コンサルティングカンパニーを目指している。また、ITを活用し経営を高度化・効率化する手段として、オフィス向けの光ファイバー対応IP電話サービスやFMCサービス(固定通信と移動体通信を融合したサービス)、ならびにそれらとネットワークセキュリティを融合したIP統合ソリューションなどの通信・インターネット関連サービスを提供するほか、OA・ネットワーク機器の販売・工事、携帯端末の取次ぎ、Web構築、太陽光システムやオール電化製品の販売・工事などのサービスを提供している。社名のFORVAL(フォーバル)は、「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業を目指す」という経営理念が込められている。事業は、(株)フォーバルを中心に、中小法人向けOA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次、コンサルティングサービス等を手掛けるフォーバルビジネスグループ、(株)フォーバルテレコムを中心に、VoIP・モバイル等の通信サービス、インターネット関連サービス、普通印刷、及び保険サービス等を手掛けるフォーバルテレコムビジネスグループ、(株)リンクアップがモバイルショップにおいて携帯端末の取次等を手掛けるモバイルショップビジネスグループ、14/3期に新たに子会社化した(株)アップルツリーがオール電化・エコ住宅設備の卸・工事請負業を営む総合環境コンサルティングビジネスグループの4セグメントに分かれる。 加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメントにはIT教育サービス、IT分野のエンジニア及び管理者の育成や、東南アジアにおける現地幹部候補・留学生の人材紹介を手掛ける(株)アイテックが含まれている。
近年のハード販売における付加価値の低下を踏まえ、現在、差別化が可能で付加価値も高いコンサルティングサービスへのシフトを進めており、08年4月にサービスを開始したITコンサルティングサービス「アイコン」がその中核となっている。また、コンサルティングサービスの一環として、中小企業の情報化の支援やASEAN展開の支援にも取り組んでおり、前者ではIP統合ソリューションを展開。後者では、10年5月にFORVAL(CAMBODIA)CO.,LTD.(カンボジア・プノンペン)を設立し、以後、11年7月のPT FORVAL INDONESIA(インドネシア・ジャカルタ)及び同年8月のFORVAL VIETNAM CO.,LTD.(ベトナム・ホーチミン)の設立、更には12年3月のミャンマー駐在員事務所(ミャンマー・ヤンゴン)を開設後、翌13年2月に現地法人化(FORVAL MYANMAR CO., LTD.を設立)するなど、ASEANにおいてネットワークの拡充を進めている。 フォーバルグループの業績推移 IT領域における教育と資格の奨励を通じて従業員のスキルを高め、ハードの卸売りからアイコンサービスによるコンサル業態へ事業転換させた効果が確認できる。 |
成長戦略 |
同社は、グループの新しい中期ビジョンとして、企業経営そのものを支援し、中小・中堅企業の利益に貢献する『次世代経営コンサルティング』の確立を掲げた。既存の事業領域である情報通信の知識・技術を駆使した経営コンサルと強みである独自の海外進出ノウハウを活用した経営コンサルに加え、2013年にM&Aを行った株式会社アップルツリーの活用により、重要度が高まっている環境問題にいかに配慮し、事業を展開、環境に貢献していくかの経営コンサルが可能となる。加えて、情報通信分野、海外分野、環境分野において顧客企業の社員教育がワンストップで実施できる体制が整備された。また、同様に2013年にM&Aを行った株式会社アイテックがグループに加わったことで、顧客企業の人材・教育分野でのサービスのラインナップも強化された。同社は、これら4分野において、売上拡大と業務効率改善とリスク回避のためのコンサルティングを実施し、中小・中堅企業の利益に貢献する。
次世代経営コンサルティングサービスの中核をなすのが、情報通信分野(国内)と海外分野におけるアイコンサービスの提供である。アイコンの基本サービスは、経営のよろず相談サービス、定期訪問&通信技術を使った遠隔サポート、パソコン・ネットワーク状態監視サービス、各種アプリケーションの問合せサービス、お客様専用サイトの運営などがある。 よろず経営相談は、定期的に顧客のもとへ訪問するコンサルタントが、企業経営にまつわる「困った」を解消するサポートを行う。 同社が顧客に対して実施したヒアリング調査(19/3期上期)によると、90%以上の顧客がよろず経営相談に対して参考になったと答えている。今後も質の高いよろず経営相談の増加が期待される。また、これまで売上高の拡大と情報通信に関するものが相談の中心であったが、近年リスク回避やその他様々な内容の相談が増加している。今後、同社のコンサルティング能力の高さが、各種のビジネスチャンスを生むものと期待される。 OEMによるアイコンサービス導入件数の推移 アイコンサービスの売上高推移 アイコン売上高と営業利益は相関性が高い。アイコンサービス開始からの10年間で見ると、アイコン売上高が1増えるとそれ以外のビジネスにも相乗効果が生じ営業利益は約1.5増える傾向がある。今後もアイコン売上高の拡大を通じた、営業利益の拡大が期待される。 (2)海外分野の拡大-海外進出支援事業の拡大 同社のASEAN進出支援事業である「グローバルアイコンサービス」は、海外進出前と進出後の様々な問題や障害を、ワンストップでサポートするビジネスモデルである。現在はカンボジアとベトナム、インドネシア、ミャンマーの4ヶ国で展開。情報提供から始まり、FS支援、現地法人の設立代行、人材採用・人材教育支援、バックオフィス整備支援、ネットワーク環境支援、現地パートナー開拓支援等をトータルサポートすることで、同社が最も得意とする情報通信技術を活用した日本と変わらない快適なオフィス空間を提供するビジネスヘつなげていく。日本と現地の両国で、トータルサポートを実施。 グローバルアイコンは、進出前の総合準備支援、事業計画の策定とカウンターパートとの交渉、総合調査支援や、生産委託先開拓、販売パートナー開拓、JICA等公的機関による海外展開支援の公募参加を目的とした事業可能性調査など6つのメニューでサポートが可能。 特徴的な海外進出支援事業の例 – ベトナムのレンタル工場 近年、地元企業の海外進出支援に積極的な自治体との提携が拡大している。 海外事業の売上高推移 (3)新規分野の拡大 |
2019年3月期第3半期決算 |
前年同期比9.6%の増収、同6.2%の経常増益
売上高は前年同期比9.6%増の410億26百万円。アイコンサービスやサーバー、セキュリティ関連の販売が順調に拡大した他、(株)第一工芸社を2018年10月に子会社化した影響もありフォーバルビジネスグループで同7.9%増加した。また、光回線サービスやISP等が順調に拡大したフォーバルテレコムビジネスグループで同17.6%増加した。加えて、単価の高いスマートフォンの比率が高まったモバイルショップビジネスグループで同3.5%増加した他、住宅用太陽光システムやオール電化製品等の販売が増加した総合環境コンサルティングビジネスグループで同6.0%増加した。更に、セミナー関連が好調に推移したその他事業グループでも同9.8%増加した。 営業利益は前年同期比7.1%増の18億39百万円。セグメント利益は、売上が増加したフォーバルテレコムビジネスグループで同35.1%増加した他、売上の増加に加え、固定費の圧縮に取り組んだ効果により総合環境コンサルティングビジネスグループは61百万円(前年同期は12百万円の損失)と改善した。一方、人件費等の増加により、フォーバルビジネスグループで前年同期比0.4%減少した他、人件費や販促費等の増加の影響でモバイルショップビジネスグループは同76.6%の減益となった。また、改訂版の発行に伴う旧刊の廃棄損等の影響によりその他事業グループで同23.8%減少した。高収益事業であるアイコンサービスの拡大などにより売上総利益が前年同期比10.8%増加し、売上総利益率は、同0.4ポイント上昇の32.6%となった。一方、既存社員に対する配分の増加や社員数の増加など人件費を中心に販管費が同11.4%増加したことから、営業利益率は4.5%と同0.1ポイント低下した。また、営業外収益で計上した違約金収入が前年同期比で減少したことなどにより経常利益は同6.2%の増益と営業利益の増益率を下回った。法人税等の支払額が減少したことから親会社株主に帰属する四半期純利益は同14.4%の増益となった。 収益性の高いアイコン事業の増加や経費の削減により、第3四半期(4-12月)の売上と営業利益は、順調に拡大している。 今第3四半期(10-12月)は、前年同期比減益となったものの、過去の第3四半期(10-12月)の中でも、高水準の売上と営業利益となった。 18/12月末の総資産は前期末比42億35百万円増の292億15百万円。資産は、㈱フォーバルテレコムにおいて前払費用もしくは長期前払費用として計上している代理店へのインセンティブの支払いが増加したこと、12月末日が金融機関休業日となり回収が翌月となったことにより未収入金が増加したこと、㈱第一工芸社の子会社化等により有形固定資産が増加したこと、㈱フォーバルテレコムの保険代理店事業を行う子会社の保険店舗譲り受けによりのれんが増加したことなどが影響した。負債純資産は、これら総資産の増加に対応して短期借入金を増加したことに加え、利益の計上により利益剰余金が増加したことが影響した。自己資本比率は33.1%と前期末から2.7ポイント低下。また、有利子負債(リース債務含まず)は51億66百万円と前期末から33億89百万円増加した。 |
2019年3月期業績予想 |
前期比3.2%の増収、同4.7%の経常増益予想
第3四半期を終え、19/3期の会社計画は、売上高が前期比3.2%増の530億円、経常利益が同4.7%増の31億円の期初予想から修正なし。営業利益と経常利益は11期連続の増益を、また、親会社株主に帰属する当期純利益は8期連続の増益、5期連続の最高益更新を目指す。同社は、企業経営を支援する次世代経営コンサルタント集団として、IP統合商品の更なる普及促進、IoT・ビッグデータ活用による新サービスの創出、スマートフォンに代表される情報通信の利活用促進、太陽光発電やLEDなどの総合環境コンサルティング・IT技術者向けを中心とした教育サービスの提案を行い、更に東南アジア諸国への進出支援などに取り組む方針。 売上面は、アイコンサービスなどの経営コンサルティング分野が拡大するフォーバルビジネスグループの増加に加え、ISPサービスを中心とするネット系サービスが拡大するフォーバルテレコムビジネスグループの増加が牽引する見込み。一方、モバイルショップビジネスグループや総合環境コンサルティングビジネスグループの事業環境の好転は見込んでいない。 利益面は、主としてフォーバルビジネスグループやフォーバルテレコムビジネスグループなどの増収効果と収益性改善を見込んでいる。営業利益は30億と同5.1%の増益。売上高営業利益率は5.7%で、前期比0.1ポイント上昇の計画。 配当も、前期比1円増額の1株当たり年間22円と実質7期連続の増配の予定を据え置き。 なお、連結子会社の㈱リンクアップは2018年10月18日付開催の臨時株主総会において自己株式の取得に関する議案を付議することを予定していたものの同日中止となった。この自己株式の取得が実施された場合には連結業績に影響する可能性がある。 同社の四半期業績は例年第4四半期に最も多い傾向がある。第3四半期を終え、概ね会社計画通りに推移している模様。 最近のトピックス ・コグニティ株式会社 と業務提携 ・株式会社 エレバム のランプ及びLEDの製造販売事業を譲受 |
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<参考:コーポレート・ガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
コーポレート・ガバナンス・コード適用以降のコーポレート・ガバナンス報告書提出日、2018年12月20日。 <基本的な考え方> |