株式会社キャンバス(4575 Mothers)
CBP501のパイプライン価値は最大368億円
フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
CBP501拡大相の対象がん種決定
キャンバス社は、2018年10月11日、最も重要な開発品であるCBP501(カルモジュリン・モジュレーター)の第Ⅰ相臨床試験後期(Phase1b)の拡大相の対象となるがん種を決定し公表した。対象がん種は、「すい臓がん」と「直腸大腸がん」であり、オプジーボのような免疫チェックポイント阻害剤の有効性が低く、比較的小規模の治験で奏功が確認される可能性があり、患者数も多数存在するがん種である。開発競争上の競合も比較的少なく、戦略的に最適な選択であると評価することができる。順調にいけば、拡大相の症例組入は2018年内に開始され、2019年前半に組入完了、拡大相終了が2019年中とも考えられるなか、キャンバスでは拡大相試験途上での導出提携も視野に入れているようだ。
CBP501は、免疫砂漠でも奏効
CBP501(カルモジュリン・モジュレーター)の作用機序として、次の3つの作用が期待されている。①がん微小環境下で免疫抑制作用を惹起するサイトカインの産生を抑制し、がん幹細胞を減少させる。②がん細胞の遊走・上皮間葉移行等を阻害する。③免疫原性細胞死を増加させ、がんに対する免疫反応が生じやすい環境をもたらす。これらの作用機序が、オプジーボのような免疫チェックポイント阻害剤の薬効が低い、免疫砂漠とも呼ばれるすい臓や遺伝子変異の少ない大腸がんでの奏効率を向上させると考えられる。
CBP501のパイプライン価値を試算すると35-368億円
改めて、CBP501に関するパイプライン価値の試算を行った。早期導出の可能性を鑑みて、前回より導出時期を1年前倒しして、2020年と想定を変更した。成功確率は、Phase1段階にあるため10-30%とした。市場規模(ピーク時)を、既存薬の薬価や市場浸透率などを勘案して1000億円、成功確率10%という条件では、パイプライン価値は35億円だが、市場浸透率が上がり、アバスチンのように5000億円市場が見込めるという仮定の下では、153億円―368億円という試算値が算出される。キャンバスはCBP501のみならず、それを基としたカルモジュリン・モジュレーターをシリーズで創出していくことを企図している。今回の拡大相試験の結果、カルモジュリン・モジュレーター技術そのものが画期的なものとして認識されれば、単独の開発候補品としてではなく、創薬プラットフォームとして、より高い価値を見出される可能性もあろう。
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