シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
新薬探索コスト考慮後で約300億円のパイプライン価値

2018/02/19

ベーシックレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

創薬リスクを回避しつつ高収益を狙う製薬ベンチャー
シンバイオは、自社で創薬研究を行うのではなく、世界中の創薬企業とのネットワークと目利き力を活かして有望な新薬を導入し開発しているバイオ製薬ベンチャーである。
開発のターゲットは、医療ニーズが高いにも拘わらず、大手があまり参入して来ない希少疾患(ガン、血液、ペインマネジメント)に絞るニッチ戦略で、高シェア・高収益を狙っている。
また、導入する新薬候補は原則として既に有効性・安全性が確立されたもののため、開発リスクは低く抑制されている。
実際、シンバイオの第一号開発品(トレアキシン)は、導入から僅か5年という短期間で承認・発売に至った

主力品の適応拡大とライフサイクル・マネジメントで黒字化が視野に
トレアキシンは2010年に悪性リンパ腫の一種である再発・難治性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を対象に承認されたあと、2016年には、慢性リンパ性白血病や未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンを適応対象とする承認を獲得した。これにより、2017年は前年比約60%の売上伸長率となっており、最初の発売から7年で、76億円(薬価ベース)の市場規模まで拡大している。
現在は、さらなる適応拡大を目指して開発が進行中で、再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(DLBCL)の第Ⅲ相臨床試験の患者登録が行われている。
加えて、剤型変更によるライフサイクル・マネジメントも実行中である。トレアキシンは2020年で承認から10年経過し、後発品のリスクに曝されるリスクがあるが、米国イーグル社から、使い勝手の良い液剤を導入し、現在の凍結乾燥剤を置換していくことで、そのリスクを回避していく方針である。
これらの方策により、トレアキシンの市場規模は、ピーク時204億円程度まで拡大する可能性があると弊社では見込んでいる。
トレアキシンの適応拡大や液剤導入、第二の開発品であるリゴセルチブの開発、さらに経常的な新薬の探索活動など高水準の開発コストと自社販売体制の整備が重荷になるものの、トレアキシンの売上拡大で2021年12月期には営業利益が黒字に転化する可能性は高い。

新薬探索コスト等考慮後のパイプライン価値は、300億円程度(税前)と試算
自社販売体制の構築を前提とし、経常的な新薬探索コスト等を考慮した後のパイプライン価値は、2017年12月末の現預金も加味して、303億円(割引率10%の場合:税前)と試算される。(仮に割引率を8%に変更すると、366億円と試算される。)
ただし、2021年に黒字転化するまでの3年間は赤字が継続し、2017年12月末の現預金では、その間の費用をカバーできない可能性がある。新株予約権の行使と先方の都合で開発中止になった薬剤(IONSYS)の補償金(仲裁手続中)でカバーされる可能性はあるが、新規資金調達の計画があることを認識しておく必要はあるだろう。

 

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