GCC経営™分析レポート:株式会社グラッドキューブ(東証GRT 証券コード:9561)
テクノロジーで世界に喜びを届ける未来創造企業

2025/02/20

長期展望+四半期レビュー
ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)
宮下修

1.長期展望:AIテクノロジーによるグローバル成⾧戦略の⾧期展望

グラッドキューブの⾧期成⾧戦略は、マーケティングDX事業の高収益性を基盤としながら、テクノロジー事業での積極投資を通じた革新的ビジネスモデルの構築に焦点を当てている。同社は「Vertical AI」や「DRAGON DATA CENTER」など、AI技術を活用した新サービス開発に注力しており、これらが将来の収益源として機能する見込みだ。SPAIA競馬の黒字化、米国市場参入、スポーツベッティング市場への進出がアップサイド。⾧期展望として、メタバース事業や医療AI分野への展開も視野に入る。特にスポーツベッティングの世界市場は株式会社グローバルインフォメーションの情報によれば(https://newscast.jp/news/0494496)、スポーツベットの領域だけで2024~2030年には1000億ドルを超える=1.5兆円、わずか3%程度のシェアをとるだけで、売上高500億円の達成が視野に入る。さらに、医療×AI市場、メタバース市場のアップサイドの可能性もある。これらの成⾧市場でAI技術とデータ解析力を活かした差別化戦略を展開する計画だ。JPRアナリストの試算では、全ての施策が成功した場合、2035年に向けて売上高500億円、営業利益100億円、理論株価6,786円も視野に入る可能性がある。この実現には、AI人材の採用・育成、グローバル人材の確保、技術革新への迅速な対応、そして資金調達力の強化が不可欠となる。課題は新規事業の収益化スピードとグローバル展開における実行力だが、マーケティングDX事業の安定収益がこれらの挑戦を支える強固な基盤となっている。

2.四半期決算:マーケティングDXの収益力を基盤とした成⾧投資期へ

グラッドキューブの2024年度の四半期業績分析からは、成⾧投資期における企業の戦略的な動きが読み取れる。売上高は第1四半期431百万円から第4四半期402百万円と比較的安定して推移する一方で、営業利益は第1四半期△19百万円から第4四半期△84百万円へと赤字幅が拡大し、当期純利益も第1四半期△19百万円から第4四半期に至っては△485百万円という大幅な損失を計上しているが、これらの表面的な数字の悪化の裏には、将来の成⾧に向けた積極的な戦略投資と一時的な会計上の調整がある。主力のマーケティングDX事業は第1四半期に41.2%という極めて高い利益率を記録し、人材投資による若干の低下はあるものの第4四半期でも30.3%と高水準の収益性を維持しながら、四半期ごとに119百万円から141百万円の安定的な利益を生み出し、年間で507百万円という堅実な利益を計上している。一方のテクノロジー事業は明確な先行投資フェーズにあり、四半期損失が55百万円から128百万円へと拡大しているが、生成AI活用の新サービス「Vertical AI」開発やスポーツデータセンター「DRAGON DATA CENTER」の立ち上げなど、将来の収益源となる分野への積極投資が継続されている。大幅な収益性悪化の主因としては、こうした戦略的投資に加え、workhouse社の事業譲受に伴う209百万円の減損損失計上、および繰延税金資産141百万円の取崩しという一時的要因が大きい。中⾧期的な視点では、現在の収益性悪化は将来の成⾧に向けた投資フェーズを示すものであり、マーケティングDX事業が収益基盤として機能している点は、投資を支える強固な土台となっている。テクノロジー事業の四半期損失は直近3四半期においては124-128百万円とほぼ横ばいで推移しており、投資フェーズの踊り場にさしかかっている可能性がある。今後の課題は主力事業の高収益性維持と投資成果の収益化プロセスにあり、業績回復時には繰延税金資産の再計上余地も残されている。

3.株価動向:底入れから反発相場への期待と将来性

グラッドキューブの株価チャートは特徴的な値動きを示している。当初1,200円前後から2022年半ばに500円近くまで下落した後、500~600円の範囲で底固めが続いた。この底固め期間は1年以上続き、技術的基盤を形成した。2023年後半には劇的なブレイクアウトが起き、株価は約2倍の1,200円近くまで急騰した。この水準は向こう5年程度の成⾧シナリオを織り込んでおり、その後の900~1,000円での調整も、市場が上昇分を概ね維持している状況だ。⾧期的なアップサイドは、シナリオが非常にうまくいった場合の可能性として捉えるべきだろう。同社がAI技術の商業化で成功し、テクノロジー部門の投資が成果を上げ、グローバル展開が加速すれば、2035年に向けて6,786円という理論価値も視野に入る。ただし、これは複数の好条件が重なった理想的なケースであり、実現には様々なリスクを乗り越える必要がある。

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