オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
2025年以降には、大きな飛躍が待っている
フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
産みの苦しみを乗り越えて
2021年7月、腫瘍溶解ウイルス薬テロメライシン®の承認申請予定時期が2024年に遅延することが発表された。2021年8月の会社説明会で、その背景についての説明があったが、新型コロナ感染症蔓延の影響で、治験活動が遅延しているのみならず、世界的なバイオ医薬品の資材不足で、商用GMP製造のバリデーション作業も遅延していることが明らかになった。また、テロメライシン®を用いた治験が様々ながん種で始導し始めたことにより、治験薬の製造も逼迫しているようだ。オンコリスバイオファーマ社では、テロメライシン®の商用GMP製造のセカンドサプライヤーとしてベルギーのHenogen社を採用した。2022年までに商用GMP製造のバリデーションを確立し、2024年初頭までの承認申請を確実なものとするよう努力している。
有望な新型コロナ感染症治療薬
オンコリスバイオファーマ社が開発中の新型コロナ感染症治療薬OBP-2011は、経口投与可能で、デルタ株など各変異種にも有効、しかも他の治療薬と作用メカニズムが異なるため併用が可能と考えられる。OBP-2011の化合物の詳細は公表されていないが、作用点が、RNA複製よりも後段階にあり、ウイルスの最終形成を阻害するものである。ウイルスのRNAの複製を阻害するRNAポリメラーゼ阻害剤(例:レムデシビル)のように感染時に服用しないと効果がないものとは異なり、感染後12時間経過後でも奏効するとされている。オンコリスバイオファーマ社では、治験薬製造や安全性試験・薬理試験を経て、2022年に治験申請を行い、2023年までにPOCの取得を目指している。最速で2025~2026年ごろの申請/上市も視野に入ってくると予想する。
浮かび上がる将来像
テロメライシン®は、さまざまながん種で、複数の併用療法の治験活動が検討・展開されてきたが、次第に、その本流が明らかになりつつある。当面の最前線は、食道がんであり、放射線併用療法から実用化され、最終的には、放射線化学療法(CRT)との併用療法が柱となっていくと考えられる。食道がんや胃がんなど消化器系がんのStageⅣでは、免疫チェックポイント阻害剤との併用が開発中だが、抗PD-1抗体を軸とした開発になろう。第2の本流は、食道がん同様にアジアに患者が多い肝細胞がんであり、テセントリク®とアバスチン®との併用療法である。現在、中国圏に関するライセンスアウトに注力しているが、総額として大きな導出額が期待できる。第3の本流として期待されるのは、頭頸部がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法と考えられる。2025年には、最初の承認(食道がんRT併用療法)を取得し、その後次々と適応拡大していく姿が想像できよう。
同じ時期(2025年~2026年)には、新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011の申請/上市も浮上してくると予想する。OBP-2011は、経口投与可能であり、各種変異株にも有効で、他の治療薬とも併用可能な特徴を持つ。そして、このころには、第2世代のテロメライシンであるOBP-702や、難病の多い神経変性症分野で根本的な治療に資すると期待されるOBP-601が後期臨床段階に入り、次々と提携導出が出現する時期になってくることが予見できる。オンコリスバイオファーマ社の中期的な将来像が、より鮮明になってきている。
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