オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
テロメライシン®の商用生産確立に向けて

2021/01/07

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

腫瘍溶解ウイルス薬の開発を巡る環境変化
細胞や遺伝子、ウイルスなどを使用した新しいタイプの医薬品を巡っては、商業生産の確立が事業化の障害となっているケースは少なくない。なぜなら、細胞医薬や遺伝子治療薬、腫瘍溶解性ウイルスは、化学合成で製造される低分子医薬品と異なって製造が難しく、研究室段階で製造できても、商業規模にスケールアップした時、高品質な製品を安定的に製造できるかが大きな課題となっているからである。 第一三共が開発してきた DS-1647(G47Δ)では、2019年上期に予定されていた承認申請が、製造面の検討事項を理由に2020年末にずれ込んだ。アステラス製薬が、2019年12月に米国オーデンテス社を買収したが、その理由の一つは遺伝子治療薬の商用生産の体制を入手することであった。

資金調達の主要な使途
2020年12月10日、オンコリスバイオファーマ社は、朝日インテック社との資本業務提携と新たな資金調達計画を公表した。資金調達計画の総額は47.47億円である。調達予定の資金使途は、テロメライシン®の製法の確立、次世代テロメライシンの開発、そして新型コロナ感染症治療薬の開発加速であるが、過半が、テロメライシン®の商用生産に向けた各工程のバリデーションに優先的に投入される予定である。中外製薬には、腫瘍溶解ウイルス製造の経験がないことから、ノウハウが豊富なオンコリスバイオファーマ社がバリデーションを担当することは妥当である。申請に必要なバリデーション費用は、商用製法確立により、中外製薬からのロイヤリティ収入を安定的に受領するために不可避なものである。

新型コロナ感染症治療薬の開発も加速
オンコリスバイオファーマ社は、テロメライシン®の導出成功に安住せず、さまざまな薬剤候補の開発を計画・推進している。がん抑制遺伝子p53を組み込んだ次世代テロメライシンOBP-702の開発は2022年臨床試験開始を目指して開発を推進中である。今回の調達で得られた資金のうち13.5億円を、非臨床試験、臨床試験のためのGMP製造、初期の臨床試験(POC確立)に充当する予定だ。
また、オンコリスバイオファーマ社は、2020年6月、鹿児島大学との共同研究から得られた化合物を用いて、新型コロナ感染症治療薬を開発することを発表していたが、今回の資金調達により、早期に臨床入りできるようスピード優先で開発推進を表明している。南九州はさまざまな感染症に悩まされてきた地域で、鹿児島大学ヒトレトロウイルス学共同研究センターでは、さまざまな感染症に対応する薬剤候補3000種ほどを有するライブラリーがある。鹿児島大学では、4種ほどSARS-CoV-2の増殖を阻害する薬剤候補化合物を発見しており、現在さらに効果を高めるための研究が行われて いるところである。

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