3つのガバナンスのどれが望ましいか
・監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の3つのうち、上場会社にとってはどれが望ましいのか。
・3つの形態の会社の社外取締役、社外監査役を経験したが、一概にどちらがよいとはいいがたい。とすれば、本来のあるべき姿から形を1つに決めた方がよいのではないか。
・日本の良さでもあり、悪しきところでもあるのだが、各々の事情を勘案して、いくつかの選択肢を選べるようにする。各々の事業を考慮して判断せよという。その一方で、あるべき姿については、概ね方向性が定まっているので、たえずギャップが生じる。
・監査役は取締役ではないので、代表取締役の選解任には関与できない。指名委員会等設置会社(当初は委員会設置会社)は、強い執行と堅牢な監督を目指す。独立した委員会の決定を取締役会が覆せない制度設計とした。つまり独立した指名委員会が取締役を選解任する。
・指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3つの委員会があって、委員は取締役である。監査委員は取締役であるから、監査について強い権限と責任をもつ。取締役会においては取締役として、監督と助言を担う。
・かつての監査役設置会社では、取締役の選任と取締役の報酬は一定の枠において、代表取締役社長に一任していた。つまり、社長は役員を誰にするかは自分が決め、その報酬も自分で決めていた。一定の自己ルールや社内ルールを定めていることは多かったが、要するに社長の一存で采配することが可能であった。
・当然、強い権限を有するので、全員社長の言うことをきく。取締役会は執行サイドのトップである社長を取り締るのが本来の役割であるが、自らも執行の一員なので、いざという時まともに取り締まれない。
・社長は後任を自分で決めたい。指名委員会に案を出すことができるといっても、決めるのは指名委員会で、これが覆しにくいとなると、この仕組みは面白くない。よって、日本では指名委員会等設置会社はあまり普及していない。
・次に、監査等委員会設置会社が制度化された。指名、報酬委員会を除く形で、監査機能のみを過半数の社外取締役によって構成する委員会方式とした。これは大いに普及しているが、まだ十分とはいえない。
・ここからは体験もふまえて、事例的に考えてみたい。常勤監査役が社内からきて、社外監査役が入る場合、業務に精通している常勤監査役がいるのは心強いが、自らが速やかに業務の実態を把握するという点では不十分になりかねない。
・その意味で、監査等委員会の社外監査役が、常勤と同様に会社の会議に出席し、傍聴しながら質問、意見を述べ、その状況を監査等委員会に報告してもらう方が、臨場感ある実態把握ができる。
・指名委員会等設置会社の場合、企業規模が大きいので、業務の実態把握にかなりの時間を要する。監査委員の場合、それを補助するチームとともに、自らも分担して内外の拠点を回って、情報収集をする必要がある。こういう動作に慣れておく必要がある。
・執行サイドがお膳立てするだけでは、リスクの実態に迫ることはできない。自らの能動的な調査力が問われる。また、監査等委員は、指名委員会と報酬委員会にメンバーとして入って、その内容を把握しておく必要もある。
・規模の小さい会社では、社外取締役は全員監査等委員になった方が活動の実効が上がり易い。監査等委員会として、執行サイドのマネジメントのヒアリングや監査法人との対話、内部監査部門からの報告などの機会が多いので、ここに参加している方が業務の実態把握に役立つ。当然、監査等委員としての役割も高いレベルで果たすことができる。
・監査役設置会社の監査役は、取締役会において質問が少ないケースが多い。別途監査役会で、執行サイドの役員や担当者と会話ができるので、そこで情報収集している。やはり、取締役として1票を有している方が、取締役会が活発になるので、監査等委員会の方が望ましい。
・また中小型企業の監査等委員会の場合、トップの資質と姿勢にもよるが、次の役員をどうするか。自らの後継をどうするか。その報酬のレベルはどのくらいが妥当か。という点について、社外取締役とフランクに議論している。
・外部のデータを参考にしながら、独自の基準を設定している。一方で、オーナー型のワンマン社長の場合は、やはり制度によってルール化する方が客観性を保てると考える。
・この3つのガバナンスの機関の違いによって、経営パフォーマンスに差が出るのか。実証分析の結果が明らかになっているわけではない。経営者の経営力とガバナンスの実効性を識別して、パフォーマンスを図ることは容易ではない。
・しかし、サステナビリティの観点から、トップマネジメントの選解任について、グローバルに通用する仕組みにレベルアップする方が望ましいのは自明であろう。とすれば、その実践に入ったほうがよい。
・よって、東証プライム市場では、指名委員会等設置会社への移行を義務付ける。東証スタンダード市場では、監査等委員会設置会社(指名・報酬諮問委員会付)を義務付ける。東証グロース市場や他市場においても、監査委員等設置会社を義務付ける。
・というように、各々一本化するのが望ましいと考えるが、いかがであろうか。いくつかの方式が混在して利用可能であるという過渡期は、早く卒業したいものである。
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