5月31日妥当レンジ 13,100円~15,100円
調整局面は最終段階に向かうものの、動き辛い展開

2013/06/04

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<コンセンサスEPSと日経の乖離は依然として100円>
■長期金利の上昇に端を発した日本株の混乱は、中国の景況感に対する不安や米FOMCの量的金融緩和の縮小観測、NY株式市場の下落を受けて、一段安の様相を呈している。日本の金融緩和の効果を期待した円売りポジションの解消による円高から、さらなる株価下落という循環が起こっている。こうした混乱は今暫く続く可能性も考えられるが、株価水準は既に割安なところに来ており、ここからの下落は限定されるものと考える。
■5月31日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、いずれの対象期間においても予想EPSが小幅に増加した。今回も(モデル上の)テクニカルな要因や長期金利上昇などから表記の通り、妥当レンジを引き下げる。
■前回のレポートでも指摘したように、日経新聞マーケット欄から算出される日経平均の今期予想EPSとアナリストコンセンサス予想(以下、アナリスト)とには依然として100円以上の開きが有る。5月31日時点では日経899.71円に対して、アナリストは797.59円であった。日経を基準として考えた場合は、日経平均株価16,000円には合理性があったものの、アナリストを基準とした場合は、表記の通り14,000円を挟んだレンジが妥当な水準と考えられる。

<円高への巻き戻しは一時的か?>
■6月4日午前0時時点(日本時間)において99.5円/ドルと急激に円高が進んでいる。これは同時刻に発表されたISM製造業指数が前月の50.7から49に低下したことによる(市場予想は51)。7日には米雇用統計が公表されるが、米国景気回復が遅れていれば、FRBの量的緩和の出口戦略が先送りになることからドル安方向に向かいやすくなる。世界的に景気回復が遅れ、緩和政策が継続される中では日本の円安が一段と進むというシナリオに黄信号が点る可能性もある。
■動き辛い状態にあるが、輸出関連株の株価調整も急速に進みつつある。ここは、好業績・高成長銘柄を丹念に仕込みたい。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,100円~15,100円 (前回 13,500円~15,600円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月31日)

今期予想EPS 797.59 (前週792.97円)
来期予想EPS 883.38 (前週876.01円)
再来期予想EPS 977.98 (前週967.07円)
今期予想PER 17.27 (前週 18.43倍)
来期予想PER 15.59 (前週 16.68倍)
再来期予想PER 14.08 (前週 15.11倍)
来期予想PBR 1.24 (前週1.31倍)
来期予想ROE 7.96% 前週7.84%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.63% (前週6.44%)

*5月31日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

今回も妥当レンジは下方にシフトしたが、ここからのダウンサイドはあまり意識しなくて良いと思う。

              

  
 株価下落により期待リターンが上昇。均衡的な水準にあると考えられる。

     

  

 

今期予想EPSは日経予想をアナリスト予想が大きく下回る状態。日経予想が過剰である可能性が指摘され、株価の反騰にはこの差が縮まることが望ましい。

          

  

JASDAQ市場のリスクプレミアムが、日経平均を下回っており、中小型株市場に割安感はなくなっている。銘柄選別がまだ暫くは続くと考えられる。 

        

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。