株式の配当利回りが債券の利回りを下回る「利回り革命」
東証プライム市場の予想配当利回りが10年物国債利回りを下回ったことが話題になっている。株式の配当利回りが債券の利回りを下回るのは2008年6月以来、約17年半ぶりだ。これをもってして「令和の利回り革命」などとも呼ばれている。

そもそもの「利回り革命」は1950年代に株式の配当利回りが債券の利回りを下回ったことを指す。リスクのある株式の利回りは、安全資産の債券の利回りより高くて(リスクプレミアムがついて)当然であるのに、それが逆転したため「革命」と呼ばれたのだ。それが長いこと定着していたが、日本が先陣を切って2008年のリーマン・ショック以降に再び配当利回りが長期金利を上回るようになり、その後他の先進国でも同様の関係に戻った。それが「逆利回り革命」だ。
「利回り革命」→「逆利回り革命」→「令和の利回り革命」と、なんともコンフュージングなこと極まりない。リスクのある株式の利回りは、安全資産の債券の利回りより高くて当然だと述べたが、その当然の状況に戻っただけなのだから、それを「逆利回り革命」と呼んだこと自体が間違いだったのではないか。
まあ、いまさらそんなことを言ってもどうなるものでもないが、重要なことはこれが株式のバリュエーションにどう影響するかだ。
過去のバリュエーションの検証
配当利回りと長期金利の逆転を報じた日経新聞の記事は、「配当利回りと長期金利の逆転は相場の長期的な転換点を示すとされる」と書いているが、ケースバイケースではないか。「逆利回り革命」はリーマン・ショック後のデフレが強まる中で債券利回りが極端に低下しマイナスにまで落ち込むという異常事態で生じたものだ。グラフから分かるように株の配当利回りは比較的安定していた。つまり配当と金利のスプレッドはほぼ金利の動きで説明できるので、あまり有効な指標にならないと思われる。
それでもスプレッドが急激に拡大する「スパイク」のようなタイミングは、株の割安感が意識され、良い買い場のシグナルになってきたのも事実。グラフ2は配当利回りと10年債利回りスプレッドに、TOPIXの1年後リターンを重ねたものである。これを2年後のリターンで見てみると、グラフ3のようになる。
スプレッドが急に跳ね上がったタイミングでTOPIXを買うと、その後1年リターンや2年リターンが高いということが示されている(相関係数は0.34、0.39なのでそこそこ高い正の相関がある)。


この指標を信じるなら、このタイミングで投資しても1-2年後のリターンは芳しいものにならないかもしれない。
しかし、この種のイールド・スプレッドの議論は「金利対比の株価の割安割高」を測るものだとすれば、異常な水準にあった日本の金利が正常化しただけで、株価の割高感が台頭したものではまったくないと言えるだろう。
その証拠にグラフの右端は青線で示したスプレッドが急速に下降しているが足元の株価は崩れていない。ただし1-2年後のリターンがどうなるかはわからないのでオレンジのラインは書き込まれていないのだが。
配当利回りが金利より低い時代の高配当株ストラテジーの有効性
市場全体の話はおいておくとして、先日示した「高配当ストラテジー」(2025年12月29日付けストラテジーレポート『新たな投資戦略ポートフォリオ 高配当株ストラテジー』)がこのような環境の変化でもワークするかという点について。
前回の検証期間は過去10年だった。つまり「逆利回り革命」の最中だった。環境が変わって配当利回りが金利より低い時代でも有効なのだろうか。こればかりは分からない。未来を予想するのに同じ環境を振り返ることができないからだ。しかし、まったく同じではなくても「同じような環境」なら過去を参考にできるだろう。
配当利回りが金利を下回っていた1995年7月からの366ヶ月間のデータを「逆利回り革命」の時期と比べたのがグラフ4である。これをみると高配当ストラテジーの相対リターンが高かったことがわかる。

結論:「令和の利回り革命」の時代こそ高配当株。

