中国の対日輸出規制をどう考えるか

2026/01/08

中国の対日輸出規制をどう考えるか

  • 中国は日本向け軍民両用製品の輸出管理強化を発表、レアアース関連製品も対象との報道も。
  • 対日レアアース輸出は2010年に一度停滞、昨年は7種類のレアアースの対米輸出が規制された。
  • 今回は日本への政治圧力が主眼、具体的な規制強化の動きがなければ、市場の懸念は後退へ。

中国は日本向け軍民両用製品の輸出管理強化を発表、レアアース関連製品も対象との報道も

中国商務省は1月6日、輸出管理法などの規定に基づき、日本向けの軍民両用(デュアルユース)製品の輸出管理を強化すると発表しました(図表1)。レアアース(希土類)関連製品が対象に含まれた場合、日本の産業に影響が広がる恐れがあることから、翌7日の株式市場では警戒感が強まり、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は、ともに過去最高値を更新していた前日からそろって反落しました。

商務省の報道官は管理強化の背景について「日本の指導者が台湾に関して公然と誤った発言をし、台湾海峡への武力介入の可能性を暗示した」と説明し、日本で軍事に関連する企業への輸出や、日本の軍事力向上につながるすべての輸出を禁止すると明言しました。また、中国政府系の英字紙チャイナ・デイリーは6日夜、関係筋の話として、中国政府が特定のレアアース関連製品について対日輸出許可の審査の厳格化を検討していると報じました。

対日レアアース輸出は2010年に一度停滞、昨年は7種類のレアアースの対米輸出が規制された

過去、2010年9月に尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生し、その後、中国の対日レアアース輸出が停滞する事態に至りましたが、当時、中国政府から対日輸出規制に関する発表はありませんでした。輸出の停滞は数カ月で解消されましたが、日本政府と民間企業はこれを機に、レアアースの調達先を多様化し、レアアースを使用しない代替技術の開発やリサイクルの推進に取り組むようになりました。

最近では、2025年4月に米国による相互関税への報復措置の一環として、中国政府は高性能磁石に用いるジスプロシウムやテルビウムなど7種類のレアアース(図表2)について輸出管理を強化し、米国の自動車産業に影響が及びました。前述のチャイナ・デイリーの報道でも、この7種類のレアアースについての記述がみられ、これらが対日輸出規制の対象となる可能性が示唆されています。

今回は日本への政治圧力が主眼、具体的な規制強化の動きがなければ、市場の懸念は後退へ

今回の発表では、デュアルユースの定義が非常に曖昧であり、軍事に関連する顧客などに関する具体的な記述もなく、対象製品のリストも公表されていません。つまり、中国政府は今後の日本政府の対応によって、規制を強化または緩和する十分な余地を残していると考えられます。ただ、輸出規制は最終的に中国のレアアース企業自身に売上高の減少などの影響が生じるため、中国政府はより現実的な政策判断を行うと思われます。

また、レアアースの対日輸出規制は2025年7月以降、緩和傾向にあり、対日規制強化と引き換えに、韓国への規制緩和を図り、両国首脳会談がもたらした友好的な雰囲気を政策に反映したい考えもあると推測されます。以上より、今回の中国政府の対応は、日本に経済的損害を与えるのではなく、より強い政治的圧力をかけることが主眼にあると思われ、具体的な規制強化の動きがない限り、市場の懸念は徐々に後退していくとみています。

 

 

 

 

(2026年1月8日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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