トランプ政権の真実像
~「米国資本主義の隆盛」を目指しているのだろう~
【ストラテジーブレティン(378号)】
米国株式、関税ショック時の大暴落を取り戻した
4/2のトランプ政権の意表を突く大相互関税発表によるショックで急落した主要国株価は、5/12の米中関税暫定合意により完全に元に戻った。米国S&P500指数は、2月19日の史上最高値(6144)から4/8日の大底(4982)まで19%の大暴落となったものの、5/14には大底から18%上昇の5866となり、年初比でもプラスに浮上した。4/2の相互関税発表時点で巻き起こった、国際通商秩序が破壊され大不況に陥るという最悪シナリオはほぼ否定されたとみられる。
唐突の相互関税発表時点ではその目的として、1)製造業を取り戻すこと、2)貿易赤字を減らすこと、3)税収を増やすこと、4)相手国の譲歩を求める手段とすること、の4つの狙いが考えられた。投資家の頭によぎった悪夢は、国際分業体制を否定してしまうのか、ドル体制を壊してしまうのかと言う極論であった。製造業製品の8割以上を輸入に頼っており米国国内での供給力が全く存在していない状態で輸入を遮断すれば、米国民の生活が立ち行かなくなる。関税の価格転嫁と供給不足によるインフレも心配される。また米国の輸入代金(=赤字)は世界に対する基軸通貨ドルの供給であるため、米国赤字が無くなることとは、世界経済に対する成長通貨の供給停止を意味する。どちらも世界経済体制を根底から揺るがすことになる。
関税政策柔軟化、悪夢シナリオは回避された
この極論が米中関税暫定合意までの一連の展開により、否定されたのである。米国が確保したいものは先端ハイテクと軍事装備品、医薬品などライフラインに関わる製造業であり、すべてを戻すことは全く考えていないことが分かった。また通貨安により米国の赤字削減を狙うことは、直ちに米国への資金流入の減少と米国金利上昇を引き起こし、リセッションをもたらす縮小均衡の道である。ベッセント財務長官はトランプ政権がその路線を取らないことを、繰り返し表明し、市場の疑心を払拭した。
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