トランプ関税、米企業への悪影響が顕在化
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◆大統領就任100日で演説
4月29日、トランプ米大統領は就任100日目の演説を米ミシガン州デトロイト近郊で行いました。ミシガン州は、かつて米国経済の象徴だったゼネラル・モーターズ(GM)など自動車産業の本拠地です。演説では「史上最高の100日間」、「関税政策のおかげで、ミシガンで再び車が作られる」と自身の政策を強調しました。演説の直前には、米国内で生産する完成車を対象に、使われる輸入部品に課される関税の負担軽減措置を発表するなど、米国内の自動車メーカーへの配慮も示しました。今回の措置は自動車関税がもともとかからない「米国産車」が対象で、海外から輸入される自動車と自動車部品に対する25%の追加関税は維持されます。
一方でGMは同日、1月に公表した2025年の通期業績予想を撤回しました。5月1日には、追加関税の影響で2025年に40億ドルから50億ドル(約5,800億円から7,200億円)の追加費用を見込むと発表し、通期の最終利益予想は従来予想から最大で3割程度下方修正しました。GMはカナダやメキシコなどからの輸入車が5割近くあることから、トランプ関税の影響が大きいとみられます。
◆米国内での自動車生産は本当に可能か
トランプ氏は自動車を米国内で生産すれば良いと述べていますが、自動車の製造には大規模な工場設備や巨大サプライチェーンが必要なため、新しく生産体制を構築するにはかなりの時間を要すると考えられます。それだけに、これから新たに米国内に設備を作るのは、様々なリスクもありそうです。仮に政権が再度変わった場合、元のルールに戻る可能性も否定できません。また、そもそも海外に生産拠点を移転した理由は、国内人件費などコストが高いことによる競争力の低下もあります。米国内で生産してコストが見合うのかも考えなくてはなりません。高級車であれば、値上げを行っても販売への影響は大きくないかもしれませんが、低価格帯の車は価格感度が高く、競争力の低下が懸念されます。自動車や部品メーカーの苦悩は続きそうです。
一方、トランプ氏の支持層が一定数いるとされる自動車製造の現場では、輸入車への関税を支持する向きもあるようです。自動車の輸入増加が米国製造業の雇用を奪ったとの見方です。しかし、米国で生産すると人件費などが高いことから、海外での製造に切り替えたわけです。これから米国内での製造に戻したとして、競争力のある製品が作れるのかは疑問が残るところです。
今回のGMの業績修正が示すように米国企業の業績が悪化した場合、その影響は米国で働く労働者、ひいてはトランプ支持者にも及ぶことになるとみられます。
トランプ関税を全て実行した場合、トランプ支持者にも大きな打撃になります。政権支持率の下落による方針転換も、逆のリスクとして考えておくと良いかもしれません。
(チーフストラテジスト 上野 裕之)

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