ナイル(5618)コンサルティング、メディア運営、デジタル広告に関するソリューションとDX化されたマイカーのサブスクリプションサービスを提供
コンサルティング、メディア運営、デジタル広告に関するソリューションとDX化されたマイカーのサブスクリプションサービスを提供
業種:情報・通信業
アナリスト:髙木伸行
◆ ホリゾンタルDX事業と自動車産業DX事業を運営
ナイル(以下、同社)は産業を横断して様々な企業のデジタル課題発見・解決策の提示と実行を行うホリゾンタルDX事業とマイカー購買の手間を省力化し、信用力の低い個人のマイカー所有を可能にするオンライン主体のマイカーサブスクリプション事業である自動車産業DX事業を運営している。
ホリゾンタルDX事業は22/12期の売上高の54.6%、自動車産業DX事業は45.4%を占めた(図表1)。ホリゾンタルDX事業は調整額を売上構成比で按分したベースで見ても黒字であるが、自動車産業DX事業は広告宣伝費などの負担が重くセグメント損失を計上している。
◆ ホリゾンタルDX事業
ホリゾンタルDX事業としては、インターネットを活用した事業ソリューションを展開している。SEO、コンテツ制作、データ解析、生成AIなどのノウハウを活かして幅広いソリューションを提供しており、業務効率化や売上の拡大を支援する(1)DX&マーケティング事業と複数のメディア開発・運営、及びデジタル広告に関するソリューションを提供する(2)メディア&ソリューション事業で構成されている(図表2)。
(1)DX&マーケティング事業
同事業の売上高の大半がコンサルティングサービスによるもので、顧客企業の課題特定とその解決策として、DXやマーケティングに関するコンサルティングや実行支援、Webサイト改善コンサルティング支援、生成AIによる業務自動化支援など、インターネットを応用した様々なソリューションを提供している。
22/12期では169社と取引実績があり、顧客継続率は92.4%となっている。
コンサルティングサービスには顧客の要求する仕様に沿った支援業務及びコンテンツを制作し顧客に成果物を提供する義務を負う請負契約と成果物を完成させる義務のない準委任契約に基づくものがあり、請負契約の比率が高い。紹介手数料はWebサイトの構築といったような同社の取り扱っていない業務などを他の事業者に紹介する際に対価として得ているものである。
(2)メディア&ソリューション事業
同事業は12年に開始した事業で、6万件を超えるスマートフォンアプリ情報を掲載するメディアであるAppliv、スマートフォンユーザー向けライフスタイル情報を掲載するAppliv TOPICS、アプリを運営する事業者向けのデジタル広告ソリューションNYLE TRIDEなどを通じて顧客企業の成長を支援し
ている。
Appliv及びAppliv TOPICSはアプリのインストール報酬もしくはクリック報酬や顧客の商品やサービスの販売支援を行うことで収益(図表2の情報メディア運営に該当)を計上している、同社が運営するメディア群の月間ユーザー数は約760万人(23年9月)に達している。
NYLE TRIDEは顧客企業のデジタル広告配信の際の工数削減とアドフラウド被害の最小化といったサービスを提供しており、手数料(図表2の広告運用サービスに該当)を得ている。
◆ 自動車産業DX事業
18年1月から開始した事業で、カーリースである「おトクにマイカー定額カルモくん(以下、「定額カルモくん」)」の事業運営を主軸としている。「定額カルモくん」は個人向けに日系メーカー全車種の新車、及び中古車を扱っている。リース期間は、自動車メーカー系ファイナンス会社が契約期間3年~5年の扱いを中心とするのに対して、同社は1年~11年と幅広い期間に対応している。
個人が自動車を購入する際には自動車販売店に行く必要があり、希望の車種を選択する際には複数の店舗へ出向く手間が避けられない。また、信用力が低いがゆえに与信審査を対面で申し込むのに躊躇する購入希望者も多い。同社は個人の自動車取得のプロセスをDX化すること自動車販売における新たな市場の創出に取り組んでいる(図表3)。
「定額カルモくん」の事業上の特徴は、利用者は実店舗に来店する必要がない仕組みであることから同社は店舗を構える必要がない。さらに、諸手続きもオンラインで完結でき、納車についても利用者の自宅まで配送される。利用者とのやり取りに加えて、オリックス(8591東証プライム)傘下のオリックス自動車、SBI新生銀行(東京都中央区)傘下のアプラス、昭和リースといった提携金融事業者、ディーラー、メンテナンス事業者、陸送事業者、損害保険事業者との業務プロセスもDX化されている。
リース車両については、提携金融事業者が保有するため、一部を除き同社は車両在庫を持たないビジネスモデルとなっている。また、与信リスクについても提携金融事業者が負担するかたちになっている。
同事業の収益としては、まずリース契約の仲介をすることで提携金融事業者から得る初期紹介手数料を納車時にスポット収益として計上している(図表4)。加えてストック収益として、毎月、整備費用などのメンテナンスサービスの対価をリース期間に亘って受け取るとともに、リース料金を顧客から受け取り、提携金融事業者に分配している。以上の他、中古車リースの一部のスキームは同社が中古車を仕入れて、提携金融事業者に売却している。
同事業のKPIとしては、23年9月末時点で延べ申込件数20.7万件、延べ契約件数14,018件、契約残高は54億円となっている。また、23/12期第3四半期累計期間における新規契約顧客との平均契約年数は8.7年となっている。