11月11日妥当レンジ 27,800円~30,000円
利上げ着地点の不透明感が薄らぐ中、業績懸念が強まる

2022/11/15

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<米CPIは市場予想を下回る>
■注目された米中間選挙は、事前予想では共和党が圧勝する可能性も指摘されていたが、レッドウェーブは起こらず上院では民主党が多数派を維持する結果となった。米株式市場においては、7日、8日と共和党勝利を見込んで株価は上昇したが、9日には一転して大幅下落となった。
■しかし、10日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)が、前年同月比+7.7%と市場予想(約8.0%)を下回ったことを受け、債券利回りが低下、ドル安、株価大幅上昇となった。米CPIはコア指数も9月の6.6%から6.3%へと低下した他、コア指数から住居費を除いた指数でも0.1%の低下となった。14日にFRBのブレイナード副議長は、「米金融当局が利上げ幅を小さくする時期が近くやってくる」との見解を示した。12月のFOMC(13-14日)では0.5%の利上げが中心的な見方となり、ターミナルレート(最終利回り)の市場見通しも4.75~5.00%へと引き下げられた。今後も各種経済指標やFRB高官の発言等で金利と株価に揺らぎが生じる局面はあると考えられるが、その影響は小さくなりつつあると考えられる。
■一方、企業業績への懸念が増加している。QUICK・ファクトセットによる11日時点で集計では7-9月期の世界の企業業績(純利益)は前年同期比▲3%と2四半期連続の減益となった。また、アナリストコンセンサス集計では10-12月期には▲8%の減益が見込まれている。
■国内企業業績見通しも芳しくはない。日経平均株価のコンセンサス予想EPS(TIW算出)は特に来期・再来期において減少トレンドにある。コンセンサスDI(前週比で予想EPSが変化した企業の内のプラスになった比率)では来期ベースでは4週続けて中央値の50%を下回っている。株価は、米利上げ停止によるバリュエーション改善の恩恵を得る前に、来期業績への減益見通しが織り込まれる過程を経験する必要がありそうだ。筆者は日経平均株価の本格出直りは来年4月以降と想定し、その間には27,000円割れの可能性もあると考えている。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

27,800~30,000円 (前回27,519~29,691円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月11日)

今期予想EPS 1839.48 (前週1845.14円)
来期予想EPS 1822.47 (前週1828.31円)
再来期予想EPS 1979.15 (前週1991.23円)
今期予想PER 15.36 (前週14.74倍)
来期予想PER 15.51 (前週14.88倍)
再来期予想PER 14.28 (前週13.66倍)
来期予想PBR 1.11 (前週1.09倍)
来期予想ROE 7.19% 前週7.36%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.70% (前週6.89)

11月11日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

共和党勝利不発。米消費者物価上昇率の低下から利上げペースの減速は見込まれるものの、引き続きターミナルレートの市場の見解によって振れやすい地合いが続く。アナリストコンセンサスEPSはじりじりと減少しており、来年上半期は下押し圧力が高まりそうだ。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 53.9%→56.0%→43.543.547.346.9
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.554.0%→42.445.550.0%→45.1
来期ベースでは4週連続で50%割れ。年初からのダウントレンドが明瞭になりつつある。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。