「買い戻し相場」から「買い騰がり相場」への可能性はあるか

2022/10/28

今週の株式市場ですが、これまでのところ上方向を目指す動きが目立つ印象となっています。日経平均は節目の27,000円水準から200日移動平均線を上抜け、75日移動平均線を目指す場面も見られました。

米国株市場も同様に、NYダウが31,000ドルの節目や50日移動平均線を上抜け、その先に位置している32,000ドルや200日移動平均線をトライしようとするような値動きとなっています。NASDAQ総合指数も25日移動平均線超えを達成するなどの上昇を見せていますが、50日移動平均まで距離があるなど、まだ出遅れ感があります。

いずれにしても、足元の日米の株式市場の上昇は、米国の金融政策に対する修正観測の高まりが背景にあります。きっかけとなったのは、先週末に報じられたWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)の記事です。

記事の内容をざっくりまとめると、「11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.75%の利上げ見込み」、「12月のFOMCの利上げ幅については議論される見通し」、「複数の委員が過度の金融引き締めによるリスクを意識している」というものでした。

最近までの米国株市場は、米10年債利回りなどの金利上昇が重荷となって株価が下落していましたが、今回の報道によって、「ひとまず、FRB(連邦準備理事会)による利上げの最高到達点(ターミナルレート)が見えてきた」ことが好感されたと思われます。記事の内容に沿うのであれば、9月のFOMC終了時点の政策金利(3.25%)から、11月のFOMCで4.00%に引き上げられ、12月は4.25~4.75%といった見通しとなりました。

ひとまず、政策金利の目標について目星がついたことは株式市場にとっては好材料ですし、これに先ほどの企業決算の内容が、思ったよりも「好調」もしくは「悪くない」といった内容であれば株価上昇の勢いに弾みがつくことが想定されます。もちろん、さえない企業業績が増えてくれば再び株安シナリオが浮上することになります。

とはいえ、今回のWSJの記事から読み取れるのは、「FRBが利上げ幅の見直しを検討するのは、本来の利上げの目的であるインフレの収束が確認できたからではなく、急ピッチな引き締めによる景気への影響を、いったん引き締めのペースを落として見極めようとしている点にある」ということです。

ちなみに、FRBは「FEDウオッチャー」と呼ばれる記者に情報をリークして記事を報道させ、市場の温度感を探るということを行うのですが、現在注目されているのがWSJの記者(ニック・ティミラオス氏)です。ちなみに、この記者については、7月に「早すぎる金融政策の転換は、1970年代にインフレ抑制の利上げと景気対応の利下げを小刻みに導入する『ストップ&ゴー』政策を行ったことで、状況を悪化させてしまったことを繰り返しかねない」という記事を報じています。

そのため、株式市場が金融政策の転換を先取りするような強過ぎる動きとなった場合には、FRB要人からのタカ派発言が増え、株高を牽制する動きが出てくることも想定されるため、注意が必要かもしれません。

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