9月16日妥当レンジ 27,817円~29,987円
FOMC通過で一旦底打ちでも上昇相場の賞味期限は限定的

2022/09/20

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<インフレ懸念と企業業績見通し悪化の両方が下げ要因>
■13日発表の米消費者物価指数(CPI・8月)の伸びが市場予想を上回ったことを切っ掛けに、FRBの金融引き締め姿勢に対する市場の見方が“タカ派”的に傾いたことによって米国株式市場は下落した。8月のCPIでは特にコアCPI(食品とエネルギーを除く)が7月の+5.9%から+6.3%(予想は+6.1%)へと上昇したことが嫌気された。
■15日発表の8月の米小売売上高が前月比+0.3%と増加したこと、週間(9/4-10週)の新規失業保険申請件数が下方修正された前週の改定値から5千件下回り、5週連続で減少したこともインフレ懸念を想起させる内容であった。懸念された鉄道会社労働組合の大規模なストライキはバイデン政権の介入によって15日に暫定合意に達したが、スト回避で賃金上昇によるインフレ圧力が一段と意識された。
■20-21日の米連邦公開市場委員会においては0.75%の利上げが確実視されているが(1.0%の可能性も残る)、同時に公表されるドットチャート(正式名称はSummary of Economic Projections)が注目される。6月時点の22年末3.4%、23年末3.8%が上方修正されることは確実であるが、19日の米債券市場では10年国債利回りが3.5%超に、2年債は3.97%に達したことから、22年末で4.0%前後を市場は想定していると推察される。最終金利の予想(23年末)は「3.75~4.0%」「4.0~4.25%」と分かれているようであるが(日経ウォール街ラウンドアップ)、これを上回るようであればネガティブ・サプライズが生じる可能性があるだろう。
■ただし、この2カ月くらいはFRBのガイダンスが不在の中で、市場は楽観と悲観の間で揺れ動いていただけに、FOMCを境に底入れ反転上昇に向かうと考えられる。ただし、16日にフェデックスの決算が不振であったことから米国株が下落したように企業業績の悪化には敏感に反応する可能性が高い。
■日本株は、米国株の底入れを受けて上昇トレンドに向かうと考えるが、世界経済減速を受けた企業業績悪化を織り込み始めるまでの期間限定となるだろう。早ければ2Q決算が発表される11月頃に織り込みが始まる可能性もある。年末の日経平均株価が3万円を大きく超えるような見通しもあるが、楽観的と考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

27,817円~29,987円 (前回28,108円~30,323円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月16日)

今期予想EPS 1877.98 (前週1864.53円)
来期予想EPS 1869.36 (前週1869.40円)
再来期予想EPS 2015.65 (前週2017.53円)
今期予想PER 14.68 (前週15.13倍)
来期予想PER 14.75 (前週15.09倍)
再来期予想PER 13.68 (前週13.98倍)
来期予想PBR 1.10 (前週1.12倍)
来期予想ROE 7.43% 前週 7.39%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.94% (前週 6.86%)

9月16日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

FOMCを迎えて上下動の激しい展開も予想されるが、仮にドットチャート(Summary of Economic Projections)において、23年末の政策金利に対して市場予想よりも高い水準が提示されたとしても(その場合は一時的に大きく下落)、この2カ月近く市場の揺らぎを齎していたガイダンスの不在が解消されることによって、一旦は底打ち上昇する展開を予想する。ただし、今後の企業業績の悪化を織り込み始めるまでの時間であることには留意したい。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 46.348.450.0%→60.149.752.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.9%→52.1%→54.3%→59.1%→50.0%→49.0
セクターによる明確な傾向はないものの、比較的素材関係はプラス

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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