エアークローゼット<9557> 認知拡大による「airCloset」の月額会員数の増加によって成長を目指す
女性向けのファッションレンタルサービス「airCloset」を主として展開
認知拡大による「airCloset」の月額会員数の増加によって成長を目指す
業種: サービス業
アナリスト: 阪東 広太郎
◆ 女性向けの洋服レンタルサービスを主として展開
エアークローゼット(以下、同社)は、国内在住の女性に対して、スタイリストが一人一人の顧客の好みに合わせた洋服を選定して、個宅に配送し、レンタルするサービスである「airCloset」を主としたパーソナルスタイリング事業を展開している。
同社は「airCloset」に加えて、パーソナルスタイリングECプラットフォーム「airCloset Fitting」やファッションレンタルショップ「airCloset × ABLE」、メーカー公認月額制レンタルモール「airCloset Mall」などのサービスを展開しているが、同社によると22/6期第3四半期累計期間における売上高構成比は、「airCloset」が95%以上を占めている。
◆ ファッションレンタルサービス「airCloset」
「airCloset」は国内に住む女性に対して、顧客の好みに合わせてスタイリストが選んだ洋服をレンタルするサービスである。
顧客は「airCloset」のサービスページ上で自分自身の体型や洋服の好みを入力すると、スタイリストがコーディネートした洋服が顧客の指定した住所に配達される。顧客は受け取った洋服を着用し、着用を終えた洋服は専用の返送方法にて同社委託先の倉庫に返却する。洋服の返却が確認された時点で、当該顧客に次の洋服を配送するというサイクルが繰り返される。
レンタルされた洋服は顧客の手元での着用時または返却後に在庫がある場合には、顧客は会員特別価格にて購入することができる。21/6期における「airCloset」の売上構成比は、レンタルの月額料金が約80%、レンタルのオ プション料金が約5%、販売が約15%である。
「airCloset」の料金プランには月額料金プランとオプションプランがある。
月額料金プランは、レギュラー、ライト、ライトプラスの3 プランで構成されている。レギュラーは1 回3 着のセットを何度でもレンタルが可能で月額料金は9,800 円である。ライトは月に1 回3 着の洋服が届くプランで月額料金は6,800 円である。ライトプラスは月に1 回5 着が届くプランで月額料金は12,800 円であるが、レギュラーとライトは洋服のサイズがXS~L であるのに対して、ライトプラスはXS~3L と大きめのサイズも選択できる。上記の料金に加えて、1 回につき300 円の返送料と、月額料金と返送料に係る消費税が必要となる。
オプションとしては、レギュラープランの2 倍の洋服レンタル機会を得られるダブルレンタルオプションが8,800 円/1 月、好きなブランドを選択できるブランドセレクトが2,000 円~/1 回、スタイリスト指名が500 円/1 回、アクセサリー1,000 円/1 回が挙げられる。
「airCloset」の月額会員の1 人当たり月次売上高注1 は、17/6 期から20/6 期にかけては10,000 円から10,800 円程度で推移していたが、21/6 期には約9,700 円に低下した。「airCloset」の月額会員の多くがレギュラープランを選択しているが、新型コロナウイルス感染症拡大を受けた外出頻度の低下により、ライトプランを選択する月額会員が増加したことが主たる要因である。
「ariCloset」の月額会員の年齢層は20 代から50 代と幅広く、特に30 代後半から40 代が中心である(21 年10 月時点)。中でも働く女性が93.5%(22 年3 月時点)、子供を持つ女性が55.8%(22 年4 月時点)を占める等、仕事や育児に時間が割かれており、自身の洋服選びの時間が取れないという女性が顧客の中心と推察される。また、22 年4 月に同社が実施した顧客アンケートでは、時間的制約等によって買い物に行きたくても行けない(71.6%)、洋服のコーディネートや着こなしに迷ったことがある(92.0%)という回答があり、「airCloset」は購入の手間を減らすことに加えて、洋服を選ぶ手間も減らせることが評価されていると考えられる。
22 年3 月末の「airCloset」の月額会員数は32,297 人である。18 年6 月末の月額会員数は1 万人未満であり、20 年5 月末にかけて約2 万人まで増加した。20 年5 月末以降は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による外出機会の減少の影響を受けて、月額会員数が前月比で低下する月もあるが、増加傾向にある。
21 年6 月末における「ariCloset」を半年以上利用しているロイヤリティの高い会員は月額会員の53%を占めている。同社によると、月額会員登録月がも っとも退会率が高く、月額会員登録から約3 カ月を境に退会率は減少し、そ の後の退会率は数%で推移している。
「airCloset」の顧客獲得経路は、Instagram やLINE などのSNS 上での広告宣伝や同社のオウンドメディア注2 から同社のサービスページへ流入する経路の割合が高いようである。同社のサービスページへ流入したユーザーはまず個人情報を入力して無料会員登録を行う。無料会員数は22 年3 月末時点で70 万人である。
無料会員登録後にユーザーは自身の好みなどを入力することやスタイリングのサンプル等が閲覧可能となり、サービス内容に納得したユーザーは月額会員登録を行う。無料会員に対しては、特に「airCloset」へのニーズが高まる春・秋を中心にメルマガを送付することなどによって、月額会員への切り替えを促している。
洋服のスタイリングは、同社が雇用しているスタイリスト及び業務委託契約を結んだスタイリストが担当している。スタイリストはユーザーの好み等の情報に基づき、利用可能な洋服からスタイリングを行う。スタイリスト数は22 年1 月末で300 人を超えている。スタイリストの経験を持つ人材に加えて、スタイリスト未経験者だが同社内で数カ月のトレーニングを受けた人材も担当している。
◆ パーソナルスタリングEC プラットフォーム「airCloset Fitting」
「airCloset Fitting」は顧客が洋服の購入を検討する際にスタイリストがその顧客の好みに即した洋服を選定し、直接的に購入を促すことを目的としたサービスである。取り扱う商品は新品の洋服である。
収益モデルとして、商品の購入の有無にかかわらず顧客から受領するスタイリング料金と商品の購入時に生じる販売売上の2 つから構成される。
◆ ファッションレンタルショップ「airCloset × ABLE」
同社は、不動産大手のエイブル(東京都港区)と共同で16 年10 月より、パーソナルスタイリングサービスとファッションレンタルサービスを同時に体験できる店舗型の施設「airCloset × ABLE」を東京都の表参道で運営している。
「airCloset × ABLE」では、来店した顧客に対して、スタイリストが対面で洋服に関する相談を受け、同店舗に保有している洋服の中からスタイリングを提案し、顧客が気に入った場合にはその洋服をその場で着用もしくはレンタルすることが出来る。
収益は主として来店顧客から受領するレンタル料金であり、レンタル期間に応じた価格設定を行っている。
◆ メーカー公認月額制レンタルモール「airCloset Mall」
同社は、20年4月に、生活家電等のライフスタイル商材を取り扱うメーカーにサブスクリプション型のレンタル型販売ビジネスの基板を提供するサービスとして「airCloset Mall」をリリースした。
「airCloset Mall」は同社と各メーカーがプラットフォーム利用契約を締結し、顧客へ契約に基づく商品をレンタルし、試用した上で購入を促す販売チャネルを提供している。メーカーは商品の納品から最短1週間でサブスクリプションのレンタル型販売ビジネスを始める事ができ、顧客は目当ての商品を自宅で試用してから購入を検討することができる。
収益は、メーカーから受け取る個別契約に基づくプラットフォーム利用料と顧客からのレンタル売上の一部、及び購入に結び付いた場合の販売売上の一部によって構成される。
◆ バリューチェーン・組織体制
同社は、洋服の仕入、スタイリングの一部、マーケティング、システム開発・運用、物流企画、カスタマーサポートを内製化し、スタイリングの大部分、物流のオペレーション業務は外部に委託している。
同社の22年5月末時点の従業員66名の機能別の内訳は、システム開発・運用が約20名、洋服の調達・スタイリスト管理が約10名、物流企画が約10名、マーケティングが約5名、カスタマーサポート・PRが約5名、コーポレートが約15名である。臨時雇用43名の大部分はカスタマーサポートである。