4月15日妥当レンジ 28,008円~30,250円
戦況の深刻化と世界経済成長率の悪化

2022/04/19

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<インフレ指標は市場予測を目先下回っても安心できない>
■注目された3月の米消費者物価指数(CPI・12日)は、前年同月比+8.5%と1981年12月以来の上昇となった。食料・エネルギーを除くコア指数でも前年同期比+6.5%と2月(+6.4%)を上回った。しかしながら、前月比では2月の+0.505%から+0.324%へと低下したこと並びに市場予測(+0.5%)を下回ったことから、インフレがピークを迎えたとの見通しから一時的に米長期金利は2.6%台半ばまで低下した。ただし、米卸売物価指数(3月・13日発表)、米輸入物価指数(3月・14日)が2月を上回ったこと、週間の米新規失業保険申請件数(3-9日)が前週の改定値より上回ったものの依然として低水準にあること、ウクライナの戦況の悪化などから再び米長期金利は上昇基調を強めており、18日には一時2.88%台となった。
■米長期金利上昇を受けてドル円は128円台と円安が加速している。日銀が12日に発表した国内企業物価指数(3月)は、前年同月比+9.5%と1980年12月(+10.4%)以来の上昇となった。円ベースの輸入物価の上昇率は+33.4%となり、企業収益の悪化が懸念される。15日には鈴木財務相は「悪い円安と言える」と異例の発言を行った。
■18日発表の1-3月の中国GDP成長率は前年同期比+4.8%と地方のインフラ投資の下支えから10-12月(+4.0%)より拡大したものの、季節要因をならした前期比では1-3月は+1.3%と10-12月(+1.5%)より鈍化した。足もとは外出制限が広がるとともに、不動産価格の下落が続いている。中国政府は15日に預金準備率を0.25~0.5%引き下げる発表を行ったが、4-6月はさらに減速する可能性が強い。
■18日から再びロシアがウクライナ東部への攻撃を開始した。同日に世界銀行は世界経済の実質成長率を前回(1月)の4.1%から3.2%に引き下げた。19日にはIMFの経済見通しも発表予定である。20日にはG20 財務相・中央銀行総裁会議が開催されるがロシアの参加によって紛糾も考えられる。国内では3月の貿易統計(20日)、消費者物価指数(22日)の発表が注目される。いずれにしても、3月期企業の本決算(新年度会社予想)には期待を持ちづらい。本格反転はまだ遠い。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,008円~30,250 (前回28,047円~30,288円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月15日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月15日)

今期予想EPS 1600.30 (前週1645.03円)
来期予想EPS 1813.89 (前週1820.82円)
再来期予想EPS 1901.46 (前週1912.45円)
今期予想PER 16.93 (前週16.40倍)
来期予想PER 14.94 (前週14.82倍)
再来期予想PER 14.25 (前週14.11倍)
来期予想PBR 1.16 (前週1.15倍)
来期予想ROE 7.76% 前週 7.75%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.11 (前週 7.14%)

4月15日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

終結が見えない戦争と制裁強化から資源や食料価格の高止まりが続く。非資源国の食糧不足と国際収支の悪化が加速しており、米利上げの加速から破綻の連鎖が生じる可能性もあり予断を許さない。中国での外出制限の広がりなどサプライチェーンの混乱と中国経済の鈍化も不安材料だ。円安の歯止めも見えず、24日のフランス大統領選挙も大波乱の可能性も残っており、引き続き下押しの強い展開。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 47.348.844.046.251.0%→48.8
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.454.0%→51.3%→47.656.4%→49.5
来期・再来期ベースともに再び50%割れ。半導体・電子部品、自動車はマイナスが目立つ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。