5月14日妥当レンジ 24,900円~26,900円
現株価水準は、米金利上昇を織り込みつつある!

2021/05/18

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<不透明感が続くが、株価はコロナ後を織り込み始めた>
■先週の日本株市場は11~13日の3日間で日経平均株価が計2,070円下落した。米経済回復に伴うインフレ懸念が強まる中で、米最大級のパイプラインに対するサイバー攻撃なども影響した。
■米失業者が980万人と高止まりするにもかかわらず、4月の米雇用統計(7日)で非農業部門雇用者数の増加が26.6万人増に留まったことに対して、失業給付の特別加算が影響しているとの見方が強まりつつある。3月の米雇用動態調査(11日)の非農業部門求人件数は812.3万件と前月から59.7万件増え、統計開始以来最高となった。4月の米消費者物価指数は前月比+4.2%と市場予測(+3.6%)を上回った。住宅ブームによる木材価格は高騰を続けており、トウモロコシや大豆など穀物価格も天候不順による供給減や中国の旺盛な買付により上昇している。人手や原材料の供給制約が物価上昇を押し上げており、足元のインフレ懸念は高まっている。
■これに対してFRBは物価上昇は一時的として、金融緩和を維持する構えを継続しているが、市場ではテーパリングの議論開始や23年内の利上げを予想し始めている。
■他方、日本は1-3月のGDP(18日)が前期比(実質年率)で▲5.1%、20年度は前年度比▲4.6%のマイナスとなり、リーマンショック(08年:▲3.6%)を超えて戦後最大の落ち込みとなった。14日から緊急事態宣言等の対象地域が広がり、内需回復が見通せない状況が続いている。
■ただし、欧米の経済回復から製造業を中心に業績の好転が見込まれており、海外株式市場次第ではあるが、不透明ながらも底堅い展開を予想する。

<今期、来期のコンセンサス予想は決算前を大きく上回る>
■5月14日時点の日経平均株価のコンセンサス予想EPSは、今期(21年度)1599.78円、来期(22年度)1714.72円、再来期(23年度)1763.83円。今期、来期に関しては、3月26日時点(その時点では来期・再来期)の1475.91円、1598.87円を大きく上回っている。その結果、インプライド・リスク・プレミアムが上昇しており、米長期金利上昇を織り込みつつあると考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

24,900円~26,900 (前回24,700円~26,700円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月14日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月14日)

今期予想EPS 1599.78 (前週1582.38円)
来期予想EPS 1714.72 (前週1596.91円)
再来期予想EPS 1763.83 (前週1671.56円)
今期予想PER 18.55 (前週18.55倍)
来期予想PER 18.38 (前週18.38倍)
再来期予想PER 17.56 (前週17.56倍)
来期予想PBR 1.23 (前週1.23倍)
来期予想ROE 6.70% 前週 6.70%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.22% (前週 6.22%)

5月14日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(5/14現在)は 31,350円(前週比▲100円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は31,300円(前週比+350円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.9%→60.668.859.5%→82.1
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.0%→61.757.9%→51.6%→65.7
移行期のイレギュラーもあるが、来期ベースの82.1%は過去最高水準。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]


現株価水準は、インプライド・リスク・プレミアム(IRP)6.5%で算出した理論値に接近しており、米長期金利上昇を織り込みつつある。

 


コンセンサス予想EPSは決算発表後、今期(決算発表前の来期)、来期(決算発表前の再来期)を上回り好調。ただし、再来期は(現状では)伸び悩んでいる。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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