クリーマ<4017> 20年2月期に損益分岐点を超えたマーケットプレイスは収益化フェーズへ
ハンドメイド作品のマーケットプレイス「Creema」を運営
20年2月期に損益分岐点を超えたマーケットプレイスは収益化フェーズへ
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ ハンドメイド作品の CtoC マーケットプレイス「Creema」を運営
クリーマ(以下、同社)は、オリジナルのハンドメイド作品をオンライン上で個 人同士が売買できる CtoC マーケットプレイス「Creema」を運営している。同 社は 10 年 5 月に国内で最初にサービスを開始したフロントランナーであり、 「Creema」は国内及びアジア最大級のハンドメイド作品の CtoC マーケットプ レイスへと成長した。ハンドメイド作品を出品、販売するクリエイターにとって、 「Creema」は創作活動を続けることを可能にする場であり、同社もクリエイタ ーの活動を支援する形で事業を展開してきた。
同社の事業は、クリエイターエンパワーメント事業の単一セグメントだが、(1) マーケットプレイスサービス、(2)プラットフォームサービス、(3)イベント・スト アサービス、(4)その他に分類されている。事業の中心はマーケットプレイス サービスであり、21/2 期第 2 四半期累計期間(以下、上期)の売上高の 8 割 近くを占めている。
◆ 「Creema」の特徴
「Creema」は、自分で制作したオリジナルのハンドメイド作品を発表し、販売 したいクリエイターと、作品を購入したい生活者(以下、ユーザー)が集うマ ーケットプレイスである。20 年 8 月末時点で約 19 万人のクリエイターが登録 し、1,019 万点の作品が登録されている(図表 2)。登録されている作品のジ ャンルは、アクセサリー・ジュエリー、インテリア雑貨・生活雑貨、ファッション 等多岐にわたり、中にはフード・お酒・ドリンクもある。
クリエイターの活動支援というコンセプトを前面に出して展開していることも あり、「Creema」に登録するクリエイターは、美術系学校で学んだプロ、セミ プロが中心である。そのため、高品質、高単価な作品が集まることが特徴の ひとつになっている。
ハンドメイド作品を見たい、または購入したいというユーザーの数は開示さ れていないが、累積のアプリダウンロードは 20 年 8 月末時点で 1,049 万回 にのぼり、ウェブ及びアプリ経由での訪問数は 20/2 期で 190 百万回、21/2 期上期で 145 百万回となっており、マーケットプレイスの賑わいが増している (図表 3)。なお、同社によると、作品の購入者は女性が多いが、年齢層は 20 代から 50 代以上まで幅広いとのことで、ハンドメイド作品についての総合 的なマーケットプレイスとしてユーザーに認識されているものと推察される。
また、ユーザーがクリエイターと直接コミュニケーションをとることができる仕 様になっており、ハンドメイドの作品を介したコミュニティとしての機能も有し ている。
◆ サービスごとの状況(1)~マーケットプレイスサービス
同社のサービスのひとつであるマーケットプレイスサービスは、「Creema」上 でのハンドメイド作品の売買の決済を仲介するものである。ユーザーが作品 を購入する際には、同社は、購入代金から一定の売買手数料を差し引き、 その残金をクリエイターの口座に入金する。この売買手数料が同社の売上 高となる。
従って、マーケットプレイスサービスの売上高は、「Creema」上での流通総額 と手数料率によって決定される。流通総額はクリエイターやユーザー、登録 作品数の増加に応じて拡大を続けてきた。手数料率は、過去、料率体系の 変更等もあったが、およそ 10%近辺での推移となっている(図表 4)。
◆ サービスごとの状況(2)~プラットフォームサービス
「Creema」の利用に関連したサービスをプラットフォームサービスとして提供 している。現在、以下の 3 つのサービスがある。
- 内部広告サービス(クリエイター向け広告サービス)
- 外部広告サービス(法人・自治体向け広告サービス)
- 会員サービス
内部広告サービスは、クリエイターが自身の作品の広告を「Creema」上の所 定の広告枠に表示させるもので、クリエイターが売上増を図るために使われ る。表示された広告がクリックされるごとに課金される。
外部広告サービスは、「Creema」のクリエイターやユーザーに閲覧されること を目的に外部の企業や自治体の広告を掲載するサービスである。
会員サービスには、作品の販売後の入金タイミングを早めるスピード振込サ ービスや、作品の創作活動全般に関するコンサルティングを行うプレミアム コンサルサービスがある。前者は入金金額に対する手数料、後者は通常の 売買手数料率にサービス分を上乗せした料率の手数料がかかり、それらが 同社の売上高となる。
プラットフォームサービスの中では、内部広告サービスと外部広告サービス の売上高が大半を占めているものと推察される。
◆ サービスごとの状況(3)~イベント・ストアサービス
同社は、クリエイター作品の販路として、オンラインだけではなく、クラフトイ ベントと、エディトリアルショップ(常設店舗)という 2 種類のリアルの販路も用 意している。
継続的に開催しているクラフトイベントは、13 年から東京ビッグサイトで開催 し、国内最大級のクラフトイベントとなった「HandMade In Japan Fes’」と、14 年から大阪と台湾の 2 カ所で開催している「Creema Craft Party」がある。19 年夏の「HandMade In Japan Fes’」では約 3,000 店の出店、約 50,000 人の来 場者数、18 年に大阪で開催した「Creema Craft Party」では約 3,000 店の出 店、約 18,000 人の来場者数を記録した。出展するクリエイターからのイベン ト出展料、来場者からのイベント入場料、企業からの広告出稿料がクラフトイ ベントの開催に関する同社の売上高となる。
エディトリアルショップは14年に最初の店舗をオープンし、現在はアクセサリ ーを主軸とした「Creema Store 新宿」と「Creema Store 札幌」、ライフスタイ ル特化の「暮らしとクリーマ」(二子玉川ライズ)の 3 店舗がある。作品出品料 は無料の販売受託という形式をとっており、販売された際に同社は所定の 受託販売料を得る。
◆ サービスごとの状況(4)~その他
その他にはテスト段階または開発中のサービスが含まれるが、20 年 6 月に サービスを開始した購入型クラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」も含まれている。まだアイデアの段階にあるプロジェクトを提示し、 共感するユーザーから資金を募るサービスである。資金を出した支援者は 対価として商品やサービスを受け取ることになるため、支援者にとっては拠 出した資金で商品を購入したのと同じである。同社は拠出された資金額に 対して一定の手数料を得て売上高とする。ただし、サービスを開始して間も ないため、収益貢献には至っていない。
◆ 収益構造
同社の売上は手数料収入が多く、原価が発生するサービスは少ない。原価 が発生するのは、外部広告サービスの一部案件と、イベント・ストアサービス のうちのイベントのみである。